居宅介護支援事業所とは|人員基準とケアプラン作成費用0円の仕組み

目次

居宅介護支援事業所とは何か

「親が要介護認定を受けたものの、次に何をすればよいのか分からない」という状況で、最初に関わることになるのが居宅介護支援事業所です。居宅介護支援事業所とは、要介護認定を受けた高齢者が自宅で介護保険サービスを利用するために必要な「居宅サービス計画(ケアプラン)」を作成し、サービス事業者との調整を担う事業者のことです。介護保険法にもとづき市町村長(都道府県から権限が移り、平成30年度以降は市町村長)の指定を受けて運営されており、利用者本人や家族が直接サービス事業者と契約・調整をする負担を軽減する役割を持っています。

事業所に所属し実際にケアプランを作成する専門職が「介護支援専門員(ケアマネジャー)」です。要介護1〜5と認定された人(要介護者)が対象で、要支援1・2の人(要支援者)のケアプラン作成は原則として別の枠組みで行われます(後述)。

定義と対象範囲

居宅介護支援事業所が対象とするのは、在宅で生活しながら訪問介護・通所介護(デイサービス)・福祉用具貸与などの居宅サービスを利用する要介護者です。施設に入所している場合は、施設の介護支援専門員がケアプランを作成するため、居宅介護支援事業所の対象にはなりません。

よくある誤解

「居宅介護支援事業所」という名称から、訪問介護やデイサービスを直接提供する事業所と混同されることがありますが、これは誤りです。居宅介護支援事業所が行うのは、あくまでケアプランの作成と、複数のサービス事業者との連絡調整・給付管理であり、身体介護や生活援助そのものを提供するわけではありません(厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」)。

事業所の指定基準(人員基準)

居宅介護支援事業所の指定を受けるには、厚生労働省令で定められた人員基準を満たす必要があります。基準の中心となるのが、利用者数に応じた介護支援専門員の配置数です。

介護支援専門員の配置数

「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成11年3月31日厚生省令第38号)第2条により、介護支援専門員の配置数は次のように定められています。

  • 原則基準:利用者44人(またはその端数)ごとに常勤換算で1人以上を配置
  • 緩和基準:ICT(情報通信技術)の活用や、業務を補助する事務職員の配置などの要件を満たす場合は、利用者49人ごとに1人でよい

この緩和は、介護支援専門員の業務負担を軽減し、より多くの利用者に安定してケアマネジメントを提供できるようにする趣旨で設けられています(同条)。

介護支援専門員1人あたりの担当利用者数 原則の基準 44人ごとに1人 ICT活用等の要件充足時 49人ごとに1人 出典:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準 第2条

上図は、青色が原則の基準(44人ごとに1人)、オレンジ色がICT活用や事務職員配置などの要件を満たした場合の緩和基準(49人ごとに1人)を示しています。数字が大きいほど1人あたりの担当人数が多くなることを表しています。

管理者は主任介護支援専門員が原則

事業所の管理者についても基準が定められています。同基準第3条により、管理者は原則として「主任介護支援専門員」(介護支援専門員としての一定の実務経験を積んだ上で研修を修了した上位資格者)でなければなりません。ただし、地域によって主任介護支援専門員の確保が難しいなどのやむを得ない事情がある場合には、経過措置が設けられています。主任介護支援専門員については主任介護支援専門員とはという記事で役割を詳しく解説しています。

事業所が行う具体的な業務内容

居宅介護支援事業所の業務は、大きく「居宅サービス計画(ケアプラン)の作成」「サービス事業者との連絡調整・給付管理」「モニタリング」の3つに整理できます。

居宅サービス計画の作成とモニタリング

介護支援専門員は、利用者本人や家族との面談を通じて生活状況や希望を把握し、どのサービスをどの頻度で利用するかを定めた居宅サービス計画(ケアプラン)を作成します。ケアプランの基本的な考え方や作成プロセスについてはケアプラン(居宅サービス計画)とはという記事で詳しく解説しています。ケアプランは作成して終わりではなく、月に一度程度の頻度で利用者宅を訪問し、サービスが計画どおりに機能しているか、状態に変化がないかを確認する「モニタリング」を継続的に行うことが基準上求められています。

サービス事業者との連絡調整・給付管理

ケアプランに位置づけたサービスを実際に提供する訪問介護事業所やデイサービス事業所などとの連絡調整も、居宅介護支援事業所の重要な業務です。加えて、各サービス事業者から提出される実績にもとづき、介護保険の給付限度額の範囲内でサービスが提供されているかを管理する「給付管理業務」も担います。この給付管理業務は、国民健康保険団体連合会(国保連)への請求事務と直結しており、事業所運営の中核をなす業務のひとつです。

利用にかかる費用(自己負担0円の仕組み)

居宅介護支援事業所を利用してケアプランを作成してもらう際の費用(居宅介護支援費)は、要介護度や事業所ごとに設定された基本額に、利用者数に応じた報酬調整の仕組みなどが反映されて決まりますが、利用者本人の自己負担は0円です。

なぜ全額が保険給付になるのか

介護保険サービスは通常、費用の1〜3割を利用者が自己負担しますが、居宅介護支援費に限っては全額が介護保険から給付され、利用者の自己負担が生じません。これは、ケアマネジメントというサービスの利用自体をためらう人が出ないようにし、必要な介護保険サービスへ確実につなげる目的で設けられている仕組みです。なお、事業所が受け取る報酬額は、利用者数に応じて段階的に調整される仕組みがありますが、その具体的な区分は制度改定のたびに見直される可能性があるため、最新の内容は厚生労働省の資料で確認することが大切です。

今後の自己負担導入議論の動向

ケアプラン作成費用への自己負担導入については、社会保障審議会介護保険部会で継続的に議論されているテーマです。2024年度の介護報酬改定では自己負担の導入は見送られましたが、介護保険財政の持続可能性をめぐる議論の中で、今後の制度改正で方針が変わる可能性があります。介護保険制度は3年ごとに見直しが行われるため、本記事で解説している「自己負担0円」という内容も、将来変更されうる点にご留意ください。最新の議論は厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会の資料で確認できます。

要支援者の場合との違い(介護予防支援)

居宅介護支援事業所が担当するのは要介護1〜5の認定を受けた人です。要支援1・2と認定された人については、異なる名称・枠組みでケアプランが作成されます。

地域包括支援センターが担う介護予防支援

要支援者向けのケアプラン作成は「介護予防支援」と呼ばれ、これまでは地域包括支援センターが中心となって実施してきました。地域包括支援センターは介護保険法第115条の46にもとづき市町村が設置する総合相談窓口で、その役割については地域包括支援センターとはという記事で詳しく解説しています。

2024年度からの指定拡大

2024年度の制度見直しにより、市町村の指定を受けた居宅介護支援事業所も、介護予防支援を直接実施できるようになりました。これは、地域包括支援センターの業務負担を軽減するとともに、要支援から要介護へ状態が変化した際に、利用者がケアプランの作成主体を変更する(契約をし直す)手間を解消することを目的とした見直しです。そのため、今後は同じ居宅介護支援事業所が、要支援・要介護のどちらの段階でも継続してケアプランを担当できるケースが増えていくと考えられます。なお、詳細な要件は市町村により異なる場合があるため、正確な内容は担当の地域包括支援センター等に確認してください。

事業所の探し方

実際に居宅介護支援事業所を探す際には、公的な情報源を活用することが安心につながります。

介護サービス情報公表システムでの検索方法

厚生労働省が運営し、都道府県が情報を公表する「介護サービス情報公表システム」では、全国の指定居宅介護支援事業所を地域や条件で検索できます。事業所の所在地、対応時間、従業者数といった基本情報を公的な立場から確認できる点が特長です。利用にあたっては、システムの「最初にお読みください」ページで検索方法や情報の見方を確認しておくとよいでしょう。

地域包括支援センターへの相談

どの事業所を選べばよいか分からない場合は、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターに相談する方法もあります。地域の事業所の状況に詳しい相談員が、複数の選択肢について中立的な立場から情報提供を行ってくれます。なお、本サイトは特定の事業所を推奨したりあっせんしたりする立場にはなく、あくまで制度や仕組みについての情報提供を目的としています。

事業所選びで確認したいポイント

数ある居宅介護支援事業所の中から選ぶ際には、次のような観点を確認しておくと安心です。

  • 医療連携の体制:持病があり医療機関との連携が重要な場合は、事業所が医療機関や訪問看護ステーションとどの程度連携できる体制を持っているかを確認する
  • 夜間・休日の対応:夜間や休日の急な相談に対応できる体制があるかどうかは、在宅生活を継続するうえで重要な確認事項
  • 対応エリア:事業所によって対応可能な地域が限られていることがあるため、自宅が対応エリアに含まれているかを確認する
  • 担当者との相性:実際に担当となる介護支援専門員との面談を通じて、説明の分かりやすさやコミュニケーションの取りやすさを見ておく

ケアマネジャー・事業所を変更したいとき

担当のケアマネジャーや事業所との相性が合わない、対応に不安があるといった場合、変更を希望する利用者もいます。

変更の可否

居宅介護支援事業所との関係は契約にもとづくものであるため、利用者はいつでも契約を解除し、別の事業所と新たに契約を結ぶことで、担当ケアマネジャーや事業所を変更できるのが一般的です。変更を理由に不利益な扱いを受けることはありません。

変更時の注意点

ただし、事業所を変更するとケアプランの引き継ぎに一定の時間がかかることや、これまで利用してきたサービス事業者との連携が一時的に途切れる可能性がある点には注意が必要です。変更を検討する際は、まず現在の事業所や地域包括支援センターに率直に相談したうえで進めるとよいでしょう。

まとめ

  • 居宅介護支援事業所は、要介護者のケアプラン作成やサービス事業者との連絡調整を担う、市町村長の指定を受けた事業者である
  • 介護支援専門員は利用者44人ごとに1人の配置が原則で、ICT活用等の要件を満たせば49人ごとに1人でよい
  • ケアプラン作成にかかる費用(居宅介護支援費)は全額が保険給付され、利用者の自己負担は0円だが、将来の制度改正で見直される可能性がある
  • 2024年度からは居宅介護支援事業所も要支援者向けの介護予防支援を直接実施できるようになった
  • 事業所探しには介護サービス情報公表システムや地域包括支援センターへの相談が活用できる
  • 事業所を選ぶ際は、医療連携の体制や担当者との相性なども合わせて確認しておく

よくある質問

Q. 居宅介護支援事業所とケアマネジャーは同じ意味ですか

A. 異なります。居宅介護支援事業所は事業者そのものを指し、ケアマネジャー(介護支援専門員)はその事業所に所属してケアプランを作成する専門職です。1つの事業所に複数のケアマネジャーが在籍していることも多くあります。

Q. ケアプラン作成の費用は本当に無料ですか

A. はい。居宅介護支援費は全額が介護保険から給付されるため、利用者の自己負担は0円です。ただし、この仕組みは社会保障審議会介護保険部会で見直しが議論されており、今後の制度改正で変更される可能性があります。

Q. 要支援と認定された場合はどこに相談すればよいですか

A. 従来は地域包括支援センターが介護予防支援を担当してきました。2024年度からは市町村の指定を受けた居宅介護支援事業所でも介護予防支援を直接受けられるようになったため、どちらにも相談が可能です。

Q. 事業所や担当ケアマネジャーは途中で変更できますか

A. 契約にもとづく関係のため、契約を解除し別の事業所と新たに契約を結べば変更できるのが一般的です。まずは現在の事業所や地域包括支援センターに相談することをおすすめします。

Q. 事業所の管理者には誰でもなれますか

A. いいえ。基準上、管理者は原則として主任介護支援専門員でなければなりません。ただし地域で人材確保が難しい場合など、やむを得ない事情があるときには経過措置が設けられています。

どこに相談すればよいか迷う場合は、まずはお住まいの地域包括支援センターまたは市区町村の窓口に相談することから始めましょう。

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本記事は、居宅介護支援事業所に関する制度の仕組みを厚生労働省等の公的情報にもとづき解説したものであり、特定の事業所を推奨・紹介・あっせんするものではありません。介護保険制度は3年ごとに見直しが行われ、本記事の内容も将来変更される可能性があります。本サイトの編集方針についてはこちらのページをご覧ください。

よくある質問

居宅介護支援事業所とケアマネジャーは同じ意味ですか

異なります。居宅介護支援事業所は事業者そのものを指し、ケアマネジャー(介護支援専門員)はその事業所に所属してケアプランを作成する専門職です。1つの事業所に複数のケアマネジャーが在籍していることも多くあります。

ケアプラン作成の費用は本当に無料ですか

はい。居宅介護支援費は全額が介護保険から給付されるため、利用者の自己負担は0円です。ただし、この仕組みは社会保障審議会介護保険部会で見直しが議論されており、今後の制度改正で変更される可能性があります。

要支援と認定された場合はどこに相談すればよいですか

従来は地域包括支援センターが介護予防支援を担当してきました。2024年4月からは市町村の指定を受けた居宅介護支援事業所でも介護予防支援を直接受けられるようになったため、どちらにも相談が可能です。

事業所や担当ケアマネジャーは途中で変更できますか

契約にもとづく関係のため、契約を解除し別の事業所と新たに契約を結べば変更できるのが一般的です。まずは現在の事業所や地域包括支援センターに相談することをおすすめします。

事業所の管理者には誰でもなれますか

いいえ。基準上、管理者は原則として主任介護支援専門員でなければなりません。ただし地域で人材確保が難しい場合など、やむを得ない事情があるときには経過措置が設けられています。

参考・出典

  1. 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準 (厚生労働省)
  2. 介護サービス情報公表システム トップ (厚生労働省)
  3. 介護サービス情報公表システム 最初にお読みください (厚生労働省)
  4. 地域包括ケアシステム (厚生労働省)
  5. 令和6年度介護報酬改定 関連通知一覧 (厚生労働省)
  6. 社会保障審議会介護保険部会 資料一覧 (厚生労働省)