介護予防サービス(予防給付)は、要支援1・2の認定を受けた方が利用できる介護保険サービスの総称です。要介護状態への悪化を防ぎ、心身の機能を維持することを目的としており、訪問入浴・訪問看護・通所リハビリテーション・短期入所・福祉用具貸与など複数の種類があります。区分支給限度基準額は要支援1が月5,032単位、要支援2が月10,531単位で、自己負担は原則1割(所得に応じて2〜3割)です。本記事では厚生労働省・自治体の一次情報にもとづき、予防給付の種類、費用の目安、利用開始までの流れを解説します。
介護予防サービスとは何か
予防給付と介護給付の違い
介護保険の給付は大きく「介護給付」と「予防給付」の2つに分かれます。介護給付は要介護1〜5の認定を受けた方が対象で、日常生活動作の介助や生活支援に重点が置かれます。これに対し予防給付は、要支援1・2の認定を受けた方が対象で、状態がそれ以上悪化しないよう予防し、できるだけ自立した生活を続けられるよう機能の維持・向上を図ることに重点を置いた制度です。厚生労働省の資料でも、予防給付は「心身の状況の悪化の防止に配慮した給付」として介護給付とは目的の異なる給付体系として整理されています。
サービスの名称にも違いが表れており、予防給付のサービスには「介護予防訪問看護」「介護予防通所リハビリテーション」のように名称の頭に「介護予防」が付きます。提供される事業所は介護給付のサービスと共通していることが多いものの、ケアの計画・内容は状態維持や自立支援を軸に組み立てられます。
対象となるのは要支援1・2の認定を受けた人
予防給付を利用できるのは、市区町村の要介護認定審査を経て「要支援1」または「要支援2」と判定された方に限られます。要支援1は日常生活の基本的な動作はほぼ自立しているものの一部に見守りや支援が必要な状態、要支援2はそれよりもやや支援の必要度が高い状態とされています。要支援認定の申請方法や審査の流れの詳細は、要介護認定の仕組みを解説した記事で説明しています。
一方で、要支援・要介護のいずれの認定も受けていない方が利用できる「介護予防・日常生活支援総合事業」(総合事業)の一般介護予防事業とは対象者の範囲が異なる点に注意が必要です。予防給付はあくまで要支援認定を受けた方のための制度です。
予防給付で利用できるサービスの種類一覧
訪問系・通所系・短期入所系
厚生労働省の介護サービス情報公表システムに掲載されている予防給付サービスは、以下のとおりです。
- 訪問系:介護予防訪問入浴介護・介護予防訪問看護・介護予防訪問リハビリテーション・介護予防居宅療養管理指導
- 通所系:介護予防通所リハビリテーション
- 短期入所系:介護予防短期入所生活介護・介護予防短期入所療養介護
ただし、要介護者向けの「訪問介護」「通所介護」に相当するサービスは、2015年の制度改正により予防給付から市区町村の総合事業に移行しています。この経緯は本記事の後半で改めて触れます。
特定施設・福祉用具・ケアマネジメント
このほか、居住系サービスとして介護予防特定施設入居者生活介護、福祉用具に関するサービスとして介護予防福祉用具貸与・特定介護予防福祉用具販売があります。さらに、これらのサービスを組み合わせてケアプランを作成する「介護予防支援」(介護予防ケアマネジメント)も予防給付の一つに位置づけられています。ここまでに挙げた訪問系4種・通所系1種・短期入所系2種・居住系1種・福祉用具関連2種・ケアマネジメント1種を合計すると、予防給付のサービスは11種類になります。これとは別枠で、地域密着型サービスとして3種類が予防給付に位置づけられており、次章で解説します。
訪問系サービスの内容
介護予防訪問入浴介護・介護予防訪問看護
介護予防訪問入浴介護は、看護職員や介護職員が家庭を訪問し、移動可能な浴槽を持ち込んで入浴の介助を行うサービスです。自宅の浴室の利用が難しい方や、身体状況から入浴に介助が必要な方が対象になります。介護予防訪問看護は、看護師等が自宅を訪問し、主治医の指示にもとづいて健康状態の観察、療養上の世話、医療的な処置などを行うサービスです。訪問看護は予防給付としても引き続き提供されており、総合事業には移行していません。
介護予防訪問リハビリテーション・介護予防居宅療養管理指導
介護予防訪問リハビリテーションは、理学療法士・作業療法士等が自宅を訪問し、心身機能の維持・向上を目的とした機能訓練を行います。介護予防居宅療養管理指導は、医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士等が自宅を訪問し、療養上の管理や指導を行うサービスです。通院が難しい要支援者の健康管理を支える役割を担っています。
通所・短期入所系サービスの内容
介護予防通所リハビリテーション
介護予防通所リハビリテーション(介護予防デイケア)は、介護老人保健施設や病院・診療所などに通い、理学療法士等による機能訓練やリハビリテーションを受けるサービスです。生活機能の維持・向上と社会的孤立の防止を目的として、日帰りで通所する形態が一般的です。なお、要介護者向けの「通所介護」(デイサービス)に相当する予防給付は、後述のとおり2015年以降は総合事業に移行しており、現在は市区町村ごとの事業として提供されています。
介護予防短期入所生活介護・介護予防短期入所療養介護
介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)は、特別養護老人ホーム等に短期間入所し、日常生活上の支援や機能訓練を受けるサービスです。家族の介護負担軽減(レスパイト)を目的として利用されるケースもあります。介護予防短期入所療養介護は、介護老人保健施設や医療機関に短期間入所し、医学的管理のもとで看護・機能訓練などを受けるサービスです。いずれも要支援者の在宅生活の継続を支える位置づけです。
地域密着型の予防給付サービス
介護予防認知症対応型通所介護
介護予防認知症対応型通所介護は、認知症の要支援者を対象に、デイサービスセンター等に通い食事・入浴・排泄の介助や機能訓練を受けるサービスです。厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、認知症の状態に配慮した専門的なケアを日帰りで提供するサービスとして紹介されています。
介護予防小規模多機能型居宅介護
介護予防小規模多機能型居宅介護は、「通い」を中心に、必要に応じて「訪問」や「泊まり」を組み合わせて利用できるサービスです。1つの事業所が同じ職員によって通い・訪問・泊まりを一体的に提供するため、環境の変化が少なく、なじみの関係の中でケアを受けられる点が特徴とされています。
介護予防認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
介護予防認知症対応型共同生活介護は、認知症の要支援者が5〜9人程度の少人数で共同生活を送りながら、食事や入浴などの支援を受けるサービスです。家庭的な環境の中で認知症の症状の進行緩和を図ることを目的としています。このサービスは要支援2の方のみが対象で、要支援1の方は原則利用できません(介護保険制度上、介護予防認知症対応型共同生活介護の予防給付は要支援2のみが対象とされています)。利用を検討する際は担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに個別に確認してください。
福祉用具に関する予防給付の制限
貸与の対象から外れる種目
介護予防福祉用具貸与では、要支援1・2(および要介護1)の方は、原則として車いす・特殊寝台(介護用ベッド)・床ずれ防止用具・体位変換器・認知症老人徘徊感知機器・移動用リフトなどが給付の対象外とされています。厚生労働省の福祉用具に関する資料によると、これらは状態像から見て利用の必要性が低いと想定される種目として、原則給付対象から除外されています。要支援者が原則として利用できる福祉用具貸与は、手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえに限られます(医師の医学的所見等にもとづき例外的に給付が認められる場合があります)。
要支援2の限度基準額は要支援1のおよそ2倍に設定されており、利用できるサービス量の上限に差があります。
特定介護予防福祉用具販売の対象6種目
入浴や排泄など貸与になじまない用具は「特定介護予防福祉用具販売」として、購入費の一部が給付されます。対象となるのは、腰掛便座、自動排泄処理装置の交換可能部品、排泄予測支援機器、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具部分の6種目です。福祉用具全般の制度や貸与の仕組みについては、福祉用具貸与とはを解説した記事で詳しく説明しています。
なぜ訪問介護・通所介護は予防給付に含まれないのか
2015年の制度改正で総合事業へ移行した経緯
2015年(平成27年)の介護保険制度改正により、それまで予防給付として提供されていた「介護予防訪問介護」と「介護予防通所介護」は、市町村が実施する「介護予防・日常生活支援総合事業」(総合事業)に移行しました。厚生労働省の資料によると、この見直しはNPO・民間企業・住民ボランティアなど多様な主体による柔軟なサービス提供を可能にし、地域の実情に応じた予防の取り組みを進めることを目的としています。
予防給付として残っているサービスとの違い
一方で、訪問看護・訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション・福祉用具貸与などは、専門職による医学的な関与や機能訓練の専門性が求められることから、引き続き予防給付として全国一律の基準で提供が続けられています。総合事業と予防給付は制度上の位置づけや実施主体(市区町村事業か全国一律の保険給付か)が異なるため、混同しないよう注意が必要です。総合事業の詳しい仕組みは介護予防・日常生活支援総合事業とはを解説した記事にまとめています。
費用の目安
自己負担割合1〜3割の所得基準
予防給付サービスの利用者負担は原則1割です。ただし、一定以上の所得がある方は2割または3割の負担となります。厚生労働省の資料によると、負担割合の基準は以下のとおりです。
| 負担割合 | 合計所得金額 | 年金収入等(単身) | 年金収入等(2人以上世帯) |
|---|---|---|---|
| 2割 | 160万円以上 | 280万円以上 | 346万円以上 |
| 3割 | 220万円以上 | 340万円以上 | 463万円以上 |
区分支給限度基準額の要支援1・2比較
予防給付サービスは、要支援区分ごとに1か月あたり利用できる上限(区分支給限度基準額)が定められています。自治体の公表資料によると、要支援1は月5,032単位、要支援2は月10,531単位です。1単位の単価はサービスの種類や事業所の所在地(地域区分)によって異なりますが、おおむね10〜10.7円程度とされています。単位数に単価を掛けた金額のうち、1〜3割が自己負担となる仕組みです。
誰がケアプランを作るのか
地域包括支援センターが中心の実施体制
予防給付を利用する際は、要介護者向けの居宅介護支援と同様に、サービスの利用計画(介護予防ケアプラン)を作成する必要があります。この計画作成にあたる「介護予防支援」は、従来は地域包括支援センターが一元的に実施してきました。ケアプラン全般の仕組みについてはケアプランとはを解説した記事もあわせてご覧ください。
2024年4月からの居宅介護支援事業所への委託拡大
自治体の案内によると、2024年(令和6年)4月1日からは、市町村の指定を受けた居宅介護支援事業所も、地域包括支援センターの委託を受けることなく利用者と直接契約して介護予防ケアプランを作成できるようになりました。これにより、地域包括支援センターの業務負担軽減と、利用者がケアプラン作成を依頼できる窓口の選択肢の拡大が図られています。
利用を始めるまでの流れ
要支援認定の申請から結果通知まで
予防給付を利用するには、まず市区町村の窓口に要介護認定(要支援認定を含む)の申請を行う必要があります。認定調査や主治医意見書等をもとに審査が行われ、結果が通知されるまでの標準的な流れや必要書類については、要介護認定の仕組みを解説した記事で詳しく解説しています。
介護予防ケアプランの作成とサービス利用開始
要支援1・2の認定結果が出たら、地域包括支援センターまたは委託を受けた居宅介護支援事業所に相談し、介護予防ケアプランを作成します。ケアプランにもとづいて事業所と契約し、サービスの利用を開始する流れが一般的です。認定には有効期間があるため、継続して利用する場合は更新申請の時期にも注意が必要です。
予防給付を使う上での注意点
区分支給限度基準額を超えた分は全額自己負担
区分支給限度基準額を超えてサービスを利用した場合、超えた部分は保険給付の対象外となり、全額が自己負担になります。複数のサービスを組み合わせて利用する際は、ケアマネジャーと相談しながら、月々の利用状況が限度額の範囲に収まっているかを確認することが重要です。
要支援区分による対象サービスの違い
要支援1と要支援2では、区分支給限度基準額に約2倍の差があるほか、地域密着型サービスの一部で対象となる要支援区分が異なります。代表例が介護予防認知症対応型共同生活介護(グループホーム)で、要支援2の方のみが対象となり、要支援1の方は原則利用できません。利用したいサービスが自分の要支援区分で対象になるかどうかは、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに個別に確認するようにしてください。また、介護保険制度は3年ごとに見直しが行われるため、本記事の内容も将来の制度改正により変更される可能性がある点にご留意ください。
まとめ
- 介護予防サービス(予防給付)は要支援1・2の認定を受けた方が対象で、状態悪化の防止と機能維持を目的とする
- 訪問系・通所系・短期入所系・地域密着型・福祉用具など複数の種類があり、訪問介護・通所介護は2015年の制度改正で市区町村の総合事業に移行している
- 区分支給限度基準額は要支援1が月5,032単位、要支援2が月10,531単位で、超過分は全額自己負担になる
- 自己負担割合は原則1割だが、所得に応じて2割・3割になる場合がある
- ケアプラン作成は地域包括支援センターが中心だが、2024年4月以降は居宅介護支援事業所への委託も拡大している
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