介護保険施設とは|特養・老健・介護医療院の違いと費用を厚労省データで解説

目次

「介護保険施設」とは、介護保険法にもとづく介護老人福祉施設(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院の3施設を指す総称です。同じ「施設に入所する」介護サービスでも、この3つは目的も入所要件も費用も異なります。この記事では、それぞれの違いと費用の目安を、厚生労働省の公表資料にもとづいて整理します。介護保険制度は3年ごとに見直しが行われるため、要件や金額は今後変更される可能性がある点にご留意ください。

介護保険施設とは何か

介護保険施設という言葉は法律の条文上の用語で、日常会話で使われる「介護施設」全般(有料老人ホームやサ高住なども含む広い意味)とは範囲が異なります。まずこの言葉が指す範囲を確認します。

介護保険法上の位置づけ

介護保険法において、介護保険施設とは指定介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院の3つを指します。これらの施設が提供するサービスは「介護福祉施設サービス」「介護保健施設サービス」「介護医療院サービス」と呼ばれ、この3つをまとめて「施設サービス」といいます。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、この法律上の「介護保険施設」には含まれません。

出典: 介護保険法(e-Gov法令検索)

老人福祉法との関係

3施設のうち介護老人福祉施設(特養)だけは、少し特殊な位置づけを持っています。特養の設置根拠は介護保険法ではなく老人福祉法第20条の5であり、老人福祉法上は「特別養護老人ホーム」という名称で規定されています。介護保険制度が始まる前から存在していたこの施設に対し、介護保険から給付を行うために介護保険法上「介護老人福祉施設」という指定を与える、という二重の位置づけになっているのです。一方、老健と介護医療院は介護保険法によって創設された施設であり、老人福祉法上の根拠は持ちません。特養そのものの詳しい入所条件や費用については別記事で解説しています。

出典: 老人福祉法(厚生労働省)

介護保険施設の3種類と特徴の違い

3つの施設は、いずれも「日常生活の支援」と「医療的なケア」を組み合わせて提供する点は共通していますが、どちらの比重が大きいか、入所期間をどう想定しているかで役割が分かれています。

介護老人福祉施設(特養)

特養は、常時介護が必要で自宅での生活が困難な高齢者に対し、入浴・排せつ・食事等の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理・療養上の世話を行う施設です。運営主体は社会福祉法人や地方公共団体が中心で、終身での利用(看取りまで)を前提とした「生活の場」としての性格が強い施設です。

出典: 介護老人福祉施設|介護サービス情報公表システム

介護老人保健施設(老健)

老健は、心身機能の維持回復を図り、自宅など居宅生活への復帰を支援することを目的とした「中間施設」です。看護や医学的管理のもとでの介護・機能訓練を提供し、入所期間は概ね3〜6か月程度を想定した一時的な利用が基本になります。人員配置基準では、看護・介護職員は入所者3人に1人以上(うち7分の2以上は看護職員)、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は入所者数÷100以上(常勤換算)の配置が求められており、リハビリ専門職の配置が手厚いのが特徴です。

出典: 介護老人保健施設|介護サービス情報公表システム

介護医療院

介護医療院は、長期にわたる療養が必要な要介護者に対し、療養上の管理・看護・医学的管理下の介護および機能訓練、その他必要な医療、さらに日常生活上の世話をあわせて行う施設です。「長期療養」と「生活施設」の両方の機能を持つ点が特徴で、比較的容体が安定していない利用者を主な対象とするⅠ型と、容体が比較的安定した利用者向けのⅡ型に分かれます。詳しい制度の内容は介護医療院とはを解説した記事で取り上げています。

出典: 介護医療院|介護サービス情報公表システム介護医療院について(厚生労働省)

3施設の入所要件・対象となる要介護度の違い

3施設の役割の違いは、入所に必要な要介護度の基準にも表れています。

特養は原則要介護3以上

特養は2015年(平成27年)4月1日以降、原則として要介護3以上の認定を受けていることが入所の条件になりました。要介護1・2の方は、認知症による症状、家族からの深刻な虐待のおそれ、家族の支援が期待できない単身世帯であることなどの「やむを得ない事由」がある場合に限り、特例入所として認められることがあります。これは在宅生活の継続が難しい中重度の要介護者を優先的に受け入れる施設として位置づけを明確にするための改正でした。

出典: 指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針(厚生労働省)

老健・介護医療院は要介護1から

一方、老健と介護医療院は要介護1から入所の対象になります。両施設とも要支援1・2の方は対象外です。老健は在宅復帰を目指すリハビリの必要性、介護医療院は長期療養の必要性が入所の判断基準となり、特養のような全国一律の要介護度による線引き(原則要介護3以上)は設けられていません。特養と老健の違いをより詳しく比較した記事、老健と介護医療院の違いを比較した記事もあわせてご覧ください。

施設サービス・居宅サービス・地域密着型サービスとの違い

介護保険施設への入所は、介護保険サービス全体の中の一部分にすぎません。全体像を把握しておくと、施設入所以外の選択肢も見えてきます。

サービス区分の全体像

介護保険サービスは大きく3つに区分されます。第一に「施設サービス」で、介護保険施設(特養・老健・介護医療院)への入所によって受けるサービスです。第二に「居宅サービス」で、自宅や有料老人ホーム等で受ける訪問介護・通所介護(デイサービス)・福祉用具貸与・短期入所(ショートステイ)などが含まれます。第三に「地域密着型サービス」で、定期巡回・随時対応型訪問介護看護や小規模多機能型居宅介護などが該当し、原則として事業所のある市区町村の住民のみが利用できる点が特徴です。

出典: サービス編|介護保険の解説|介護サービス情報公表システム

施設サービスの特徴

施設サービスは、24時間体制での介護・看護を前提としており、居宅サービスを複数組み合わせて在宅生活を支える方式に比べ、家族の介護負担が軽くなる点が大きな特徴です。一方で、居住費・食費が別途かかるため、月額の総費用は在宅で居宅サービスを利用する場合より高くなる傾向があります。生命保険文化センターの調査では、施設介護の月額費用は平均13.8万円、在宅介護は平均5.3万円という結果が示されており、介護期間の平均は55.0か月(4年7か月)となっています。

出典: 介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?|生命保険文化センター

3施設の費用の目安を比較

3施設の費用は、いずれも「施設サービス費(1割〜3割の自己負担)+居住費+食費+日常生活費」で構成されますが、施設サービス費の水準や居住費の設定はそれぞれ異なります。ここでは自己負担割合1割の場合の1日あたりの目安を比較します。

施設サービス費の目安(1日あたり・1割負担) 特養(多床室〜ユニット型) 約570〜930円程度 老健 居住費320〜1,640円(施設サービス費は別途) 介護医療院 約720〜1,390円程度 ※老健の施設サービス費は要介護度・地域等により幅があり、公表資料に一律の金額が示されていないため、老健のみ参考として居住費を掲載しています。 ※居住費・食費は別途。要介護度・居室タイプにより変動。出典: 介護サービス情報公表システム

図: 特養・介護医療院は施設サービス費、老健は施設サービス費の公表資料が無いため参考として居住費を掲載(自己負担1割の目安)。居住費・食費は別枠で加算される。

特養の費用目安

特養の施設サービス費は、30人以上規模の従来型で1日あたり約570〜850円程度、ユニット型で約650〜930円程度が目安です(1割負担の場合、資料により数値の記載に幅があります)。これに食費(1日1,380円程度)、居住費(個室で1,150〜1,970円程度)が加わります。所得や資産が一定基準以下の方は「介護保険負担限度額認定証」により食費・居住費が軽減される制度があるため、詳しくは市区町村の窓口に確認するとよいでしょう。より詳しい費用の内訳は特養とはを解説した記事で解説しています。

出典: 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)|WAM NET

老健の費用目安

老健の自己負担目安(1割負担、1日あたり)は、食費が約1,550〜1,650円、居住費が個室・多床室の別で320〜1,640円、日常生活費が0〜180円程度です。なお老健の施設サービス費は要介護度や地域等により幅があり、公表資料に一律の金額が示されていないため、本記事では参考として居住費を掲載しています。老健は在宅復帰を目的とした一時的な利用が前提であるため、特養のように長期の入所を想定した費用構造とは性格が異なります。老健とはを解説した記事で入所要件や在宅復帰支援の仕組みも取り上げています。

出典: 介護老人保健施設|介護サービス情報公表システム

介護医療院の費用目安

介護医療院の施設サービス費は、1日あたり約720〜1,390円程度(1割負担、要介護度・居室タイプにより変動)で、これに居住費・食費が加算されます。医療的なケアを必要とする長期療養が中心となるため、他の2施設に比べて医療体制に対応した費用構成になっている点が特徴です。

出典: 介護医療院|介護サービス情報公表システム

介護療養型医療施設の廃止と介護医療院への移行

介護保険施設の歴史をたどるうえで欠かせないのが、かつて存在した「介護療養型医療施設」の廃止と、介護医療院への移行という経緯です。

廃止の経緯

介護医療院は2018年(平成30年)4月、介護保険法の改正により新たに創設された施設類型です。これに先立ち存在していた介護療養型医療施設は、医療と介護の役割分担を明確にする観点から見直しの対象となり、経過措置を経て2024年(令和6年)3月末で廃止されたとされています。介護療養型医療施設に入所していた方は、介護医療院など後継の施設・サービスへの転換が進められています。廃止に至る詳しい経緯や、転換の具体的な内容については介護療養型医療施設とはを解説した記事で詳しく取り上げています。

出典: 介護医療院について(厚生労働省)

介護医療院との違い

介護医療院は、介護療養型医療施設が持っていた医療機能を引き継ぎつつ、「生活の場」としての機能を強化した施設として設計されています。医療的な管理のもとで長期療養を行うという点は共通していますが、日常生活上の世話や生活環境への配慮がより明確に制度上位置づけられている点が、介護医療院創設の趣旨といえます。

施設数の推移(最新統計)

3施設の施設数の動きを見ると、それぞれの需要や政策の方向性の違いが見えてきます。

3施設それぞれの施設数

厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査」(10月1日時点)によると、全国の施設数は介護老人福祉施設(特養)が8,621施設(前年比+73、+0.9%)、介護老人保健施設(老健)が4,214施設(前年比▲36、▲0.8%)、介護医療院が917施設(前年比+126、+15.9%)となっています。

施設数(2024年10月時点)と前年比 8,621施設 特養 前年比+0.9% 4,214施設 老健 前年比▲0.8% 917施設 介護医療院 前年比+15.9%

図: 特養・老健は横ばい傾向、介護医療院は移行の受け皿として増加が続いている(厚生労働省「令和6年介護サービス施設・事業所調査」)。

出典: 令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況(厚生労働省)

増減の傾向

特養・老健の施設数はここ数年ほぼ横ばいで推移していますが、介護医療院は前年比+15.9%と大きく増加しています。これは前述の介護療養型医療施設の廃止に伴い、既存の医療施設が介護医療院へ転換するケースが続いていることが背景にあると考えられます。老健がわずかに減少している点についても、在宅復帰支援の役割を果たした施設の一部が他の施設類型へ転換している可能性がありますが、個別の要因についての公式な分析は本記事のリサーチ範囲では確認できていません。

特養の入所申込みと点数制の仕組み

3施設の中で、入所の仕組みが特に独特なのが特養です。ここでは申込みの流れと優先順位の決まり方を確認します。

申込み方法

特養は先着順ではなく、必要性の高い方から優先的に入所する仕組みが取られています。入所を希望する施設に直接申し込み、複数の施設に同時に申し込むことも可能です。老健や介護医療院には特養のような全国一律の点数制の指針は無く、退院支援や医療機関との連携を通じて申し込むケースが一般的です。詳しい申込み手順は特別養護老人ホームの入所申込み方法を解説した記事で取り上げています。

優先順位の決まり方

優先順位は、要介護度の高さや在宅介護の困難さ(介護者の有無、住環境等)などを点数化する「点数制」で決まるのが一般的です。例えば船橋市の例では、介護に係る労力の程度・認知症の状況・在宅介護の困難性等を点数化し、点数の高い順に待機名簿へ登録、年2回(4月・10月)の見直しを行い、名簿の有効期間は6か月としています(これらの運用の詳細は自治体・施設ごとに異なります)。具体的な運用方法は都道府県ごとに指針が策定されているため、地域によって細部が異なる場合があります。

出典: 特別養護老人ホームへの入所申込方法及び入所者選定基準(船橋市)特別養護老人ホーム入所に関する指針(千葉県)指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針(厚生労働省)

有料老人ホーム・サ高住との違い

「介護保険施設」と混同されやすいのが、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)です。名称は似ていても、法律上の位置づけは大きく異なります。

運営主体の違い

介護保険施設(特養・老健・介護医療院)はいずれも、運営主体が地方公共団体・社会福祉法人・医療法人等の公的性格が強い法人に限定されています。一方、有料老人ホームやサ高住は株式会社等の民間事業者も運営できます。この運営主体の違いが、月額費用の水準や施設の選択肢の幅の違いにもつながっています。有料老人ホームとはを解説した記事、サ高住とはを解説した記事もあわせてご確認ください。

出典: 高齢者向け住まいの制度概要(厚生労働省)

サービス提供方法の違い

サ高住は国土交通省・厚生労働省の共管制度で、そもそも「施設」ではなく「住宅」という位置づけです。事業者に義務付けられているのは「安否確認」「生活相談」の2サービスのみで、介護サービスが必要な場合は入居者が外部の事業所を自由に選択・変更する仕組みになっています。有料老人ホームは類型ごとに提供するサービス内容を施設側が設定できます。これに対し、介護保険施設は施設自体が介護保険の指定を受けたサービス提供主体であり、施設の中で介護・看護・機能訓練等が一体的に提供される点が根本的に異なります。

施設選びで確認すべきポイント・注意点

ここまで見てきた違いを踏まえ、実際に施設を検討する際に確認しておきたい点を整理します。

目的に応じた選び方

在宅復帰を目指したリハビリが目的であれば老健、長期療養と医療的な管理が中心であれば介護医療院、生活の場として長期的に暮らすことを重視するなら特養、というように、まず「何を目的として入所するか」を明確にすることが検討の出発点になります。要介護度や医療的ケアの必要性によって選べる施設が絞られる場合もあるため、まずは担当のケアマネジャーに相談し、本人の状態に合った施設類型を確認するのが現実的です。

見学・相談窓口

施設ごとに設備や体制、空き状況は異なるため、可能であれば複数の施設を見学し、居室の様子や職員の配置、医療連携の体制などを確認することが望まれます。相談窓口としては、地域包括支援センター、担当のケアマネジャー、市区町村の介護保険担当課などが挙げられます。特養は前述のとおり点数制のため、複数施設への同時申込みも検討しておくとよいでしょう。

まとめ

  • 介護保険施設とは、介護保険法上の介護老人福祉施設(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院の3施設の総称
  • 特養は生活の場(原則要介護3以上)、老健は在宅復帰支援(要介護1から、入所は概ね3〜6か月)、介護医療院は長期療養(要介護1から)と、それぞれ役割が異なる
  • 2024年時点の施設数は特養8,621・老健4,214・介護医療院917で、介護医療院は介護療養型医療施設廃止に伴い増加傾向
  • 費用は1日あたりの施設サービス費に居住費・食費が加わる構造で、施設種別・要介護度・居室タイプにより変動する
  • 有料老人ホーム・サ高住は民間運営も可能な点で、公的性格の強い介護保険施設と根本的に異なる

制度の詳細や金額は法改正により変更されることがあります。最新の内容は必ず厚生労働省や自治体の公式情報でご確認ください。当サイトの情報の扱い方についてはこのサイトの立ち位置もあわせてご覧ください。

よくある質問

介護保険施設とは具体的にどの施設を指しますか?

介護保険法上の介護老人福祉施設(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院の3施設を指します。有料老人ホームやサ高住はこれに含まれません。

特養・老健・介護医療院の目的の違いは何ですか?

特養は長期的な生活の場、老健は在宅復帰を目指すリハビリ中心の中間施設、介護医療院は医療的管理を伴う長期療養を目的とした施設です。

介護保険施設に入所できる要介護度の目安は?

特養は原則要介護3以上、老健と介護医療院は要介護1から入所の対象になります。いずれも要支援1・2は対象外です。

介護療養型医療施設は今も利用できますか?

介護療養型医療施設は経過措置を経て2024年3月末で廃止されたとされており、介護医療院などへの移行が進められています。

介護保険施設と有料老人ホームは何が違いますか?

介護保険施設は地方公共団体・社会福祉法人・医療法人等が運営する公的性格の強い施設です。有料老人ホームは株式会社等の民間事業者も運営でき、費用や提供サービスの幅が異なります。

3施設の施設数は増えていますか?

厚生労働省の令和6年調査によると、特養は8,621施設(前年比+0.9%)、老健は4,214施設(前年比▲0.8%)、介護医療院は917施設(前年比+15.9%)で、介護医療院の増加が目立ちます。

参考・出典

  1. 介護保険法 (e-Gov法令検索)
  2. 老人福祉法 (厚生労働省)
  3. 指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について (厚生労働省)
  4. 介護老人保健施設 (介護サービス情報公表システム)
  5. 介護老人福祉施設 (介護サービス情報公表システム)
  6. 介護医療院 (介護サービス情報公表システム)
  7. サービス編|介護保険の解説 (介護サービス情報公表システム)
  8. 介護医療院について (厚生労働省)
  9. 令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況 (厚生労働省)
  10. 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) (独立行政法人福祉医療機構(WAM NET))
  11. 特別養護老人ホームへの入所申込方法及び入所者選定基準 (船橋市)
  12. 特別養護老人ホーム入所に関する指針 (千葉県)
  13. 介護にはどれくらいの費用・期間がかかる? (生命保険文化センター)
  14. 高齢者向け住まいの制度概要 (厚生労働省)