介護保険の適用除外施設は、障害者支援施設や救護施設など、法令で決められた限られた施設です。特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・グループホームは対象外です。対象の施設に入所している間は、介護保険の被保険者になりません。この記事では、対象施設と要件、入所中の保険料と被保険者証、届出、住所地特例との違い、退所後の流れを整理します。なお、条文の原文までは確認しておらず、厚生労働省や自治体の公開資料の記述にもとづいて説明しています。
介護保険の適用除外施設とは(結論と定義)
3行でわかる適用除外施設
- 障害者支援施設、救護施設など、法令で定める施設に入所している間は、介護保険の被保険者から「当分の間」除外されます。
- 除外されている間は、介護保険料はかからず、被保険者証も発行されず、介護保険のサービスは使えません。退所すると、年齢などの要件を満たす限り、被保険者に戻ります。
- 入所・退所のときは、65歳以上は市区町村へ、40〜64歳は加入している医療保険者へ届け出ます。期限は入退所から14日以内としている自治体があり、様式は自治体で異なります。
定義と、制度が置かれている理由
介護保険は、市区町村に住む65歳以上の人(第1号被保険者)と、医療保険に加入している40〜64歳の人(第2号被保険者)が被保険者になるのが基本です。特定の施設に入所している人は、この基本の例外として被保険者から除かれます。これが「適用除外」で、その人が入所している施設を「適用除外施設」と呼びます。
理由について、富田林市の案内では、これらの施設では介護保険のサービスと同等以上の障害福祉サービスなどが提供されており、将来も介護保険の給付を受ける可能性が低いためと説明されています。
この記事の確認時点と、制度変更の可能性
この記事の内容は、令和8年10月時点で確認できた公的資料にもとづきます。対象施設の範囲や手続きは、法改正や通知の見直しで変わる可能性があります。厚生労働省の資料には平成27年時点の数字もあり、現在の状況と一致しない部分があります。ご自身やご家族の手続きは、必ず市区町村の窓口で最新の取扱いを確認してください。
法的根拠は施行法第11条第1項と施行規則第170条
ここまでが制度の概要です。以降は、根拠となる法令と対象施設を順に見ます。
介護保険法施行法による「当分の間」の除外
適用除外の根拠は、介護保険法施行法第11条第1項と、介護保険法施行規則第170条です。厚生労働省の資料や自治体の案内では、特定の施設に入所している人が介護保険法第9条の被保険者から「当分の間」除外されると説明されています。条文の原文は確認していないため、原典は厚生労働省の法令データベースなどでご確認ください。
施行規則第170条が対象施設を定める
対象施設は施行規則第170条に列挙されています。三重県の「適用除外に関する経過措置対象一覧」では11項目、厚生労働省の審議会資料では9類型に整理されており、数え方が違うだけです。平成12年の通知など古い資料は制度発足時のものなので、現行の取扱いは最新の自治体資料で確認してください。
対象施設の一覧と要件
対象施設の一覧表
三重県の対象一覧に示された内容を、施設の種類ごとに整理します。施設の名前だけでなく、「入所の根拠」や「受けているサービス」が条件になっています。
| 施設の種類 | 要件の概要 |
|---|---|
| 指定障害者支援施設 | 障害福祉サービスの支給決定を受け、生活介護と施設入所支援を受けて入所している身体障害者 |
| 障害者支援施設(身体障害者福祉法) | 生活介護を行う施設で、身体障害者福祉法第18条第2項にもとづき入所している人 |
| 障害者支援施設(知的障害者福祉法) | 知的障害者福祉法第16条第1項第2号にもとづき入所している知的障害者 |
| 指定障害者支援施設(知的・精神) | 支給決定を受け、生活介護と施設入所支援を受けて入所している知的障害者・精神障害者 |
| 医療型障害児入所施設 | 児童福祉法第42条第2号の施設 |
| 厚生労働大臣が指定する医療機関 | 児童福祉法第6条の2第3項の指定を受けた医療機関で、指定に係る治療等を行う病床 |
| 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 | 施設に入所している人 |
| 国立ハンセン病療養所等 | 療養を行う部分に入所している人 |
| 救護施設 | 生活保護法にもとづく救護施設に入所している人 |
| 被災労働者介護援護施設 | 労働者災害補償保険法にもとづく施設で、年金の受給者であり、居宅での介護が困難な人 |
| 療養介護を行う病院 | 指定障害福祉サービス事業者である病院で、療養介護を行うもの |
厚生労働省の資料の欄外には、医療型障害児入所施設などには40歳以上の入所者はいないという趣旨の記載があります。個別の判断は市区町村にご確認ください。
障害者支援施設は「生活介護」と「施設入所支援」の両方が要件(支給決定を受けた入所の場合)
障害者支援施設で支給決定を受けて入所する場合、対象になるのは、生活介護と施設入所支援の両方を受けているときです。生活介護は日中の介護や活動の支援、施設入所支援は夜間の入所支援のことです。どちらか一方だけの場合は対象外です。
身体障害者福祉法や知的障害者福祉法にもとづいて入所する場合は、表のとおり根拠となる条文が要件になります。該当するか迷ったら、入所先に「介護保険の適用除外にあたりますか」と聞いてみてください。
施設数の目安(平成27年7月時点の厚労省資料)
厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会(第59回)の参考資料に、平成27年7月時点の施設数が示されています。障害者支援施設の2,621は、生活介護を実施していない施設を含む数です。現在の数とは異なる可能性があります。
対象になる人・ならない人
対象になるのは「対象施設に入所している間」
適用除外は、人に固定的に決まるものではなく、「対象施設に入所している間」だけ続く状態です。入所すると被保険者から外れ、退所すれば元の状態に戻ります。
在宅の人や、一覧にない施設の入居者は対象外
自宅で暮らしている人は、一覧の施設に入所していないため対象外です。一覧に載っていない施設の入居者も対象外で、特別養護老人ホームなどの介護保険施設、有料老人ホーム、グループホームは一覧に含まれていません(詳しくは後述の「よくある誤解と注意点」を参照)。入所先が対象かどうか迷ったら、施設か市区町村に「介護保険の適用除外にあたりますか」と聞いてください。
第1号と第2号は年齢で決まる
被保険者の区分は、65歳以上が第1号、40歳以上65歳未満で医療保険に加入している人が第2号です。届出先や保険料の扱いが、この年齢の区分で変わります。区分の違いそのものは、介護保険の被保険者の区分(第1号・第2号)の違いを解説した記事で整理しています。
入所中の保険料・被保険者証・サービス
対象施設に入所した後の、お金と書類とサービスの扱いを順に見ます。
介護保険料はかからない(40〜64歳は医療保険料に注意)
入所している間は被保険者ではないため、介護保険料はかかりません。65歳以上の人は、市区町村に納める介護保険料が対象外になります。
40〜64歳の人は、介護保険料が医療保険料と一緒に徴収される仕組みです。富田林市の案内では、医療保険料のうち介護納付金にあたる部分がなくなると説明されています。具体的な金額は、加入先の医療保険者(健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険など)にご確認ください。
被保険者証は発行されない
入所している間は被保険者ではないため、介護保険の被保険者証は発行されません。すでに交付されている被保険者証を返却するかどうかは、資料に記載がありません。市区町村にご確認ください。被保険者証そのものの仕組みは、介護保険被保険者証とはで整理しています。
介護保険サービスは使えない。代わりの支援は何か
被保険者ではないため、入所中は介護保険のサービスを使えません。要介護認定の申請ができるかどうかは自治体の運用に関わるため、ここでは断定しません。
支援がなくなるわけではありません。障害者支援施設なら障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービス、救護施設なら生活保護法にもとづく支援というように、入所の根拠となる制度が日常の支援を担います。
入退所時の届出(誰が・どこへ・いつまでに)
届出先は年齢で分かれる
入所や退所のときには届出が必要です。65歳以上(第1号被保険者)は住んでいる市区町村の介護保険担当課へ、40〜64歳(第2号被保険者)は加入している医療保険者へ届け出ます。
期限は入退所から14日以内としている自治体がある
海津市の案内では、65歳以上の人は入所または退所から14日以内に届け出るよう示されています。二本松市は退所後14日以内としています。ただし、期限は自治体によって取扱いが異なる可能性があります。お住まいの市区町村の案内で必ず確認してください。
様式は自治体で違う(神戸市・岐阜市の例)
届出の様式や名称は自治体によって違います。
- 神戸市:入所時は「介護保険関係届」を提出します。退所時は、事前に「適用除外施設入所者退所予定日確認票」を、退所後に「介護保険関係届」を提出する流れです。
- 岐阜市:「介護保険適用除外該当・非該当届」という名称の様式があります。
他の市区町村の例をそのまま当てはめず、住民票のある市区町村の案内を確認してください。
届出が遅れたときの不利益
大垣市の案内では、介護保険法第200条に関連して、届出をしなかった場合などに不利益となる場合があると案内されています。具体的な扱いは自治体で異なるため、遅れたときは早めに窓口へ相談してください。
障害者総合支援法との関係
ここからは、障害福祉サービスと介護保険の関係を見ます。
介護保険優先の原則と、個別判断の運用
障害者総合支援法第7条は、介護保険の給付で相当するものを受けられるときは、自立支援給付を行わないという趣旨の規定を置いています。いわゆる「介護保険優先」の原則です。ただし運用は個別の状況を見て判断されます。北海道や大阪市の案内でも、サービスの内容や本人の状況に応じて、障害福祉サービスの利用を認める場合があると示されています。
相当するサービスがない場合や、限度額が足りない場合
北海道や大阪市の資料では、次のような例が挙げられています。
- 介護保険に相当するサービスがない場合は、障害福祉サービスを継続する
- 介護保険の支給限度額が不足する場合は、障害福祉サービスで上乗せする
こうした運用が認められるかどうかは、障害福祉担当課が個別に判断します。
利用者負担軽減(平成30年4月〜)と適用除外施設入所者
平成30年4月から、長年障害福祉サービスを使ってきた人が65歳以降に介護保険へ移ったときの利用者負担を軽減する仕組みが始まりました。これは在宅で65歳を迎えた人の話で、適用除外施設の入所者には当てはまらない可能性があります。個別の取扱いは市区町村にご確認ください。
大阪市の案内では、主な要件として、65歳になる前の5年以上の障害福祉サービスの支給決定、本人と配偶者の住民税非課税(または生活保護)、障害支援区分2以上などが示されています。対象のサービスは、居宅介護、重度訪問介護、短期入所、生活介護です。
住所地特例との違いと平成30年4月の見直し
比較で見る違い
適用除外とよく混同されるのが住所地特例です。住所地特例は、介護保険法第13条にもとづき、施設に入所して住所を移しても元の市町村が引き続き保険者(介護保険を運営する市区町村)となる仕組みです。神戸市の案内では、被保険者のままで、届出は原則不要とされています。仕組みの詳細は住所地特例を解説した記事で説明しています。違いは次の図のとおりです。
平成30年4月の見直し:退所後の保険者はどこか
平成30年4月に、適用除外施設の入所者に関する見直しがありました。適用除外施設を退所して他の市町村にある介護保険施設に移る場合、適用除外施設に入所する際に支給決定や措置をした市町村が保険者になります。
参考資料に示された入所者の出身市町村別の人数
厚生労働省の介護保険部会(第59回)の参考資料には、障害者支援施設の入所者について、施設がある市町村以外の出身者が19,064人、施設がある市町村の出身者が11,279人と示されています。資料の調査時点は古く、現在の数とは異なる可能性があります。
退所後の流れ
入所中の扱いのあとは、退所したときの流れです。
退所すると被保険者に戻る
適用除外は入所している間だけの状態なので、対象施設を退所すれば、再び介護保険の被保険者になります(年齢などの要件を満たす場合)。大垣市の案内でも、退所後は被保険者として扱われると示されています。第1号被保険者になる時期や資格の取得・喪失のタイミングは、介護保険の資格取得・喪失を解説した記事でも整理しています。
退所前後に必要な手続き
退所時の手続きは自治体によって違います。神戸市の例では、退所の前に「適用除外施設入所者退所予定日確認票」を提出し、退所後に「介護保険関係届」を提出します。確認の手順は次のとおりです。
- 退所の予定が決まったら、住民票のある市区町村(40〜64歳は医療保険者)に、必要な書類と期限を確認する
- 自治体が定める事前の書類があれば提出する
- 退所後、自治体が定める期限(14日以内としている自治体があります)までに届出をする
手順は自治体で異なるため、上の流れは一般的な目安としてお読みください。
退所者の要介護度と、介護保険施設等への移行割合
厚生労働省の介護保険部会(第59回)の参考資料に、退所者の状況に関する数字が示されています。同資料では、退所者の要介護3以上の割合は、救護施設で79%、障害者支援施設で80.6%と示されています(調査時点は古い可能性があります)。全国の認定者全体では35.6%と示されています。
平成26年の退所者のうち、介護保険施設等に移った人の割合は、救護施設が26.4%、障害者支援施設が14.4%、労災の施設が8.3%でした。いずれも当時の数字で、現在の状況とは異なる可能性があります。
よくある誤解と注意点
「適用除外=介護が受けられない」ではない
適用除外と聞くと「介護を受けられなくなる」と受け取る人がいます。実際には介護保険のサービスが使えないだけで、入所している施設で、障害者総合支援法や生活保護法などの制度にもとづく支援を受けます。
特養・有料老人ホーム・グループホームは適用除外ではない
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、認知症グループホームなどは、適用除外施設の一覧に含まれていません。これらに入所・入居している人は被保険者のままです。住所を施設に移した場合に元の市町村が保険者になる仕組みは、前述の住所地特例の領域です。
住所地特例と取り違えない
住所地特例は原則として届出が不要とされるのに対し(神戸市の案内)、適用除外は入退所のたびに届出が必要です。入所する施設がどちらにあたるのか、施設か市区町村に確認しておきましょう。
よくある質問
ここまでの内容を、Q&Aで整理します。
まとめと相談窓口
この記事のまとめ
- 適用除外施設は、介護保険法施行法第11条第1項と施行規則第170条にもとづき、対象施設の入所者が「当分の間」被保険者から除外される仕組みです。
- 障害者支援施設は、支給決定を受けた入所の場合、生活介護と施設入所支援の両方を受けていることが要件です。特養、有料老人ホーム、グループホームは対象外です。
- 入所中は介護保険料がかからず、被保険者証は発行されず、介護保険サービスも使えません。代わりに障害者総合支援法などの支援を受けます。
- 入退所のときは、65歳以上は市区町村へ、40〜64歳は医療保険者へ届け出ます。14日以内としている自治体があり、様式は自治体で異なります。
- 制度は法改正で変わる可能性があります(令和8年10月時点の確認)。該当するか迷ったら入所先か市区町村に確認してください。
相談窓口
電話番号や受付時間は自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村のホームページなどでご確認ください。
- 届出や保険料のこと(65歳以上):市区町村の介護保険担当課
- 届出や医療保険料のこと(40〜64歳):加入している医療保険者
- 障害福祉サービスや、介護保険との関係:市区町村の障害福祉担当課
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