介護保険の被保険者になるかどうかは、国籍ではなく「市区町村に住所があるか」という住所要件で判定されます。在留外国人であっても、中長期在留者や特別永住者として住民票が作成されていれば、日本人と同じ条件で第1号・第2号被保険者になります。出入国在留管理庁によると2025年6月末時点の在留外国人数は395万6,619人と過去最高を更新しており、外国人と介護保険の関係を理解しておく必要性は今後さらに高まっていくと考えられます。この記事では、外国人が介護保険の被保険者となる条件、第1号・第2号の区分、適用除外となるケース、留学生・技能実習生・特定技能外国人・在留資格「介護」など在留資格ごとの扱い、転入出時の手続き、多言語での相談窓口までを、厚生労働省・出入国在留管理庁・自治体の一次情報にもとづき解説します。
介護保険の外国人被保険者とは
介護保険法上、被保険者の要件は「国籍」ではなく「住所要件」と「年齢」「医療保険加入」の組み合わせで定められています。つまり日本国籍を持たない人であっても、市区町村に住所を有し、年齢・医療保険加入の条件を満たせば、日本人と同じ枠組みで介護保険の被保険者となります。
国籍ではなく住所要件で判定する
介護保険は市区町村が運営する制度であり、被保険者かどうかはその市区町村の住民基本台帳に記録されているかどうかを基準に判定されます。日本国籍の有無そのものは要件になっていません。そのため、外国籍であっても住民基本台帳の適用対象になっていれば、年齢や医療保険の加入状況に応じて第1号被保険者・第2号被保険者のいずれかに該当します。
この点は、日本の社会保険制度の多くに共通する考え方でもあります。医療保険(健康保険・国民健康保険)や年金保険も、原則として国籍による区別を設けず、日本に住所を有し一定の要件を満たす人を対象にしています。介護保険も同じ発想に立ち、「日本に生活の本拠を置いている人」を保険集団の単位として保険料を徴収し、必要になったときに給付を行う仕組みになっています。したがって、在留外国人が増えるほど、介護保険の被保険者に占める外国人の割合も自然に増えていく構造になっています。
中長期在留者・特別永住者が対象になる
外国人が住民基本台帳の適用対象となるのは、入管法上の在留資格を持ち3か月を超えて中長期間在留する「中長期在留者」、および特別永住者などです。厚生労働省の通知(庁保険発第12号)にも、第2号被保険者となる外国人の要件として「適法に3か月を超えて在留する等の外国人であって、住所を有する者等」と明記されています。逆に言えば、観光などの短期滞在で住民票が作成されない人は、この時点で被保険者の対象になりません。
この仕組みは、介護保険が「住所地の市区町村が保険者となり、その住民に給付とサービスを提供する」という地域単位の相互扶助の制度であることに由来します。住民票のない人には市区町村側も保険料の賦課や給付の実施ができないため、住民基本台帳への記録の有無が事実上の入り口になっているのです。逆に言えば、いったん中長期在留者として住民票が作成されれば、その後の被保険者区分の判定・保険料の賦課・介護サービスの利用に関する手続きは、国籍に関係なく日本人と全く同じ流れで進みます。特別に外国人向けの別制度が用意されているわけではなく、住民基本台帳という共通の土台の上に、既存の介護保険制度がそのまま適用される形です。
2012年の住民基本台帳法改正と外国人住民
外国人が住民基本台帳制度の対象になった背景には、2012年(平成24年)の法改正があります。この改正以前と以後で、外国人住民の位置づけが大きく変わりました。
外国人登録法の廃止と住民票の作成
総務省の資料によると、2012年(平成24年)7月9日に外国人登録法が廃止され、住民基本台帳法の改正が施行されたことで、中長期在留者や特別永住者などが住民基本台帳の適用対象となり、住民票が作成されるようになりました。それ以前は外国人登録原票という別の制度で管理されていましたが、この改正により日本人と同様に住民票をもとにした行政サービス(介護保険を含む)の対象として扱われる基盤が整いました。
中長期在留者の定義
出入国在留管理庁の説明によれば、中長期在留者とは入管法上の在留資格を持ち、3か月を超える中長期間にわたり日本に在留する外国人を指し、在留カードの交付対象になります。短期滞在の在留資格や、在留期間が「3月」以下と決定された人は中長期在留者に含まれません。介護保険の被保険者要件を考える際は、まずこの中長期在留者に該当するかどうかが出発点になります。
第1号・第2号被保険者の区分
外国人であっても、被保険者としての区分の基本的な枠組みは日本人と変わりません。年齢と医療保険の加入状況によって、第1号被保険者と第2号被保険者に分かれます。
65歳以上は第1号被保険者
市区町村に住所を有する65歳以上の人は、国籍を問わず第1号被保険者となります。要介護・要支援状態になった原因を問わず、認定を受ければ介護サービスを利用できる点も日本人と同じです。
40〜64歳は医療保険加入者が第2号被保険者
40歳以上65歳未満で医療保険に加入している人は第2号被保険者となります。外国人の場合、介護保険法上、住民基本台帳の適用対象(中長期在留者・特別永住者等)であること・在留期間が3か月を超えることが必須条件になります。横浜市や神戸市の案内でも、この住所要件・在留期間要件を満たさない場合は被保険者にならない旨が説明されています。
第2号被保険者の場合、日本人・外国人を問わず、介護保険料は加入している医療保険の保険料と合わせて徴収される仕組みです。会社の健康保険に加入していれば給与・賞与から、国民健康保険に加入していれば世帯の国民健康保険料の一部として、それぞれ介護保険料分が含まれて徴収されます。外国人労働者であっても、勤務先の健康保険に加入していれば給与明細の控除項目に「介護保険料」の欄が現れることになり、これは特別な追加負担ではなく、40歳以上の被保険者に共通する仕組みです。第1号被保険者になった場合は、老齢年金からの天引き(特別徴収。年金からあらかじめ差し引かれる方式)または個別の納付書・口座振替(普通徴収。納付書や口座振替で自分で納める方式)で保険料を納める点も、日本人と同じ扱いになります。
適用除外となる外国人
中長期在留者に該当していても、一部の外国人は介護保険の適用除外とされ、被保険者になりません。代表的なケースを見ていきます。
「外交」の在留資格・米軍関係者
横浜市・神戸市・富田林市の案内によると、次に当てはまる人は介護保険の適用除外とされ、住所要件を満たしていても被保険者になりません。
- 在留資格「外交」の人
- 日米地位協定にもとづく米軍構成員・軍属・その家族
- 在留資格「公用」で、在留期間が3か月以下と決定されている人
「外交」と米軍関係者は国際約束や特別な地位にもとづく取り扱いです。
在留期間3か月以下の「公用」
「公用」については在留期間が3か月以下かどうかで判定が分かれます。富田林市が公開している介護保険適用除外制度の案内でも、同様の枠組みが説明されています。これらの適用除外の判定は在留資格・在留期間の組み合わせで決まるため、自分がどの区分に当てはまるかを確認したい場合は、住所地の市区町村の介護保険担当窓口に確認するのが確実です。
適用除外に該当する人は、介護保険の被保険者にならない代わりに、勤務先や所属機関が加入する医療保険の枠組みの中で別途の取り扱いがなされることが一般的です。適用除外の対象かどうかは、在留資格・在留期間証明書・住民票の有無といった書類で客観的に判定されるため、本人の希望や申告だけで区分が変わるものではありません。転勤や在留資格の変更によって適用除外の要件に該当しなくなった場合は、その時点から改めて介護保険の被保険者としての手続きが必要になることもあるため、在留資格や在留期間に変更があったときは市区町村の窓口へ相談しておくと安心です。
留学生の介護保険加入
留学生についても、在留資格そのものではなく住所要件・在留期間要件・年齢要件で判定されます。
住所要件を満たせば対象になりうる
留学の在留資格で3か月を超えて在留し、市区町村に住所を有していれば、住民基本台帳の適用対象にはなります。したがって年齢と医療保険加入の条件を満たせば、留学生であっても第1号または第2号被保険者になり得ます。
40歳未満が多く第2号に該当しないケースが多い
実際には留学生の多くは40歳未満であるため、第2号被保険者の年齢要件(40〜64歳)を満たさず、介護保険の被保険者にならないケースが大半です。留学生本人が介護保険料を意識する場面は限られますが、40歳以上で留学の在留資格を持つ人であれば対象になり得る点は押さえておく必要があります。
留学生自身が加入する医療保険としては、多くの場合、国民健康保険が想定されます。仮に40歳以上の留学生で中長期在留者に該当し、国民健康保険に加入している場合は、第2号被保険者として国民健康保険料と合わせて介護保険料も賦課されることになります。年齢層としては社会人大学院への留学や、研究員としての受け入れなど、40歳以上で留学の在留資格を得るケースは一般的な学部・語学学校の留学生に比べれば限られますが、制度上除外されているわけではない点は誤解しやすいポイントです。
技能実習生・特定技能外国人と保険料天引き
介護分野を含む技能実習生・特定技能外国人は、就労のために中長期間在留する人が多く、住民基本台帳の適用対象になるケースがほとんどです。
中長期在留者として住民票が作成される
技能実習・特定技能の在留資格で就労する外国人は、入管法上の中長期在留者に該当し、住所地の市区町村で住民票が作成されます。これにより、年齢・医療保険加入の条件を満たせば日本人の労働者と同じ枠組みで介護保険の被保険者になります。
40歳以上は給与から介護保険料が天引きされる
厚生労働省の「外国人介護人材の受入れについて」の資料でも説明されているとおり、技能実習生や特定技能外国人のうち40歳以上65歳未満で医療保険(多くは職場の健康保険)に加入している人は、第2号被保険者として日本人と同様に給与から介護保険料が天引きされます。年齢が若い技能実習生・特定技能外国人が多いため実際に天引きの対象となる人は限られますが、制度上は年齢に達すれば例外なく対象になります。
受け入れ側の介護事業所にとっても、この点は労務管理上のポイントになります。技能実習生・特定技能外国人が40歳の誕生日を迎えるタイミングで健康保険料と合わせて介護保険料の徴収が始まるため、給与明細の控除項目や手取り額に変化が生じます。制度の趣旨や仕組みを本人にあらかじめ説明しておくことは、労使間の無用なトラブルを避けるうえでも役立ちます。なお、技能実習・特定技能の在留資格そのものに介護保険加入の可否を左右する特別な規定があるわけではなく、あくまで中長期在留者としての住民票の有無と、年齢・医療保険加入の状況で判定される点は、これまで見てきた一般原則と変わりません。
在留資格「介護」の在留期間と適用除外の関係
介護福祉士の資格を持つ外国人が取得できる在留資格「介護」は、他の就労系在留資格と少し異なる在留期間の設定になっています。
在留期間は5年・3年・1年・3月のいずれか
出入国在留管理庁の説明によると、在留資格「介護」の在留期間は5年・3年・1年・3月のいずれかで決定されます。5年・3年・1年であれば中長期在留者として住民票が作成され、年齢等の条件を満たせば介護保険の被保険者となります。
在留期間3月の場合の注意点
在留期間が3月と決定された場合は、中長期在留者の定義(3か月を超える在留)に当てはまらないため、原則として住民票が作成されず、介護保険の適用除外要件に該当し得ます。在留資格「介護」を持つ人自身が勤務先や自治体の窓口で、自分の在留期間区分がどちらに当たるかを確認しておくと安心です。
在留資格「介護」は、在留期間の更新のタイミングで区分が変わることもあります。例えば当初は在留期間1年で許可されていた人が、更新の際に3年や5年に延長されることも、逆に何らかの事情で短い期間に決定されることもあり得ます。在留期間が変わればそれに伴って住民基本台帳上の扱いや介護保険の適用状況も変わりうるため、在留カードの更新時には在留期間の欄を確認し、必要に応じて勤務先の労務担当者や市区町村の窓口に相談することが望まれます。
転入・転出と資格の得喪
外国人であっても、介護保険の資格取得・喪失は住民票の異動と連動します。この点も日本人と共通です。
転入時は住所地の市区町村で資格取得
就労や進学で新たに日本へ入国し、中長期在留者として住民票が作成されると、その住所地の市区町村で年齢・医療保険加入の条件を満たした時点から介護保険の被保険者になります。転居で別の市区町村に住所を移した場合も、転入先の市区町村で改めて資格を取得する扱いになります。手続きの詳細は介護保険の転入・転出手続きを解説した記事で説明しています。
外国人の場合、転入の際に住民票の異動手続きと合わせて、在留カードの記載事項変更(住居地の届出)も必要になります。出入国在留管理庁の案内にあるとおり、新規上陸後や転居後は住居地の届出が求められており、この届出と市区町村での転入手続きが連動する形で住民票が更新されます。介護保険の第1号・第2号被保険者としての資格も、この住民票の情報にもとづいて管理されるため、住居地の届出を怠ると、本来受けられるはずの行政サービスの案内が届かないなどの支障が生じる可能性があります。
出国・転出時は資格を喪失する
在留期間の満了や帰国などで日本から出国し、転出届を提出して住民票が消除されると、その時点で介護保険の被保険者資格を喪失します。再び中長期在留者として日本に住所を持てば、その時点から資格を再取得する扱いになります。資格の取得・喪失の基本的な仕組みは介護保険の資格取得・喪失を解説した記事で確認できます。
技能実習・特定技能の在留資格で来日していた人が実習期間や在留期間の満了にともなって帰国する場合、出国前に転出届を提出することで、その時点までの介護保険の被保険者資格が整理されます。第2号被保険者として保険料を納めていた期間と、出国後の資格喪失のタイミングにずれが生じないよう、勤務先や自治体の窓口で転出の手続きについて確認しておくことが望ましいといえます。年度の途中で資格を喪失した場合、保険料の再計算や還付・追加徴収の要否・具体的な手続きは自治体や加入していた医療保険者によって異なります。出国前に、住所地の市区町村や勤務先の担当窓口へ保険料の精算方法を確認しておくことが望ましいといえます。
多言語対応と相談窓口
出入国在留管理庁によると、2025年(令和7年)6月末現在の在留外国人数は395万6,619人と過去最高を更新しています。国籍別では中国90万738人、ベトナム66万483人、韓国40万9,584人、フィリピン34万9,714人、ネパール27万3,229人の順に多くなっています。こうした在留外国人の増加を背景に、自治体や関係機関では多言語での介護保険の案内・相談体制が整えられつつあります。
自治体の多言語パンフレット
在留外国人が住む地域では、介護保険の案内を多言語で用意する自治体も増えています。豊川市(東三河広域連合)と京都市の対応状況は次のとおりです。
| 自治体 | 対応言語 |
|---|---|
| 豊川市(東三河広域連合) | 日本語、やさしい日本語、英語、ポルトガル語、タガログ語、中国語簡体字 |
| 京都市 | 日本語、英語、中国語、韓国語 |
このように、外国人住民が自分の言語で制度の概要を確認できる環境が広がっています。
外国人技能実習機構の母国語相談
外国人技能実習機構(OTIT)は、技能実習生向けに日本語を含む9言語(英語・中国語・ベトナム語・タガログ語・インドネシア語・タイ語・クメール語・ミャンマー語)で母国語相談やSOSホットラインを実施しており、社会保険に関する相談も受け付けています。介護分野で働く技能実習生が保険料の天引きなどについて疑問を持った場合、勤務先や自治体の窓口に加えて、こうした相談窓口を利用できます。
介護保険は市区町村ごとに運営される制度であり、パンフレットの多言語対応状況や窓口での通訳体制は自治体によって差があります。在留外国人が高齢期を迎えて要介護状態になった場合、要介護認定の申請やケアプランの作成、サービス利用時のやり取りで日本語での意思疎通が難しいことが実務上の課題になり得ます。こうした課題への対応は、各自治体や介護事業所が個別に取り組みを進めている段階であり、統一的な仕組みが確立しているわけではない点も理解しておく必要があります。外国人本人や受け入れ先の介護事業所としては、まず住所地の市区町村の介護保険担当課に、多言語資料や通訳サービスの有無を確認することが実務的な第一歩になります。技能実習生・特定技能外国人を受け入れている介護事業所では、こうした制度の説明を採用時のオリエンテーションに組み込み、給与から控除される保険料の内訳をあらかじめ説明しておく取り組みも広がっています。
注意点とよくある誤解
外国人と介護保険の関係については、誤解されやすい点がいくつかあります。
「外国人は対象外」という誤解
「介護保険は日本人だけの制度」という誤解が見られますが、これは正しくありません。前述のとおり判定基準は国籍ではなく住所要件であり、中長期在留者・特別永住者として住民票が作成されていれば、年齢・医療保険加入の条件を満たす限り日本人と同じく被保険者になります。第1号・第2号被保険者の区分そのものについては第1号被保険者と第2号被保険者の違いを解説した記事で詳しく説明しています。
短期滞在は対象外という区別
一方で、観光などの短期滞在で住民票が作成されない人や、在留期間3か月以下の「公用」、「外交」の在留資格、米軍構成員・軍属・家族は適用除外とされ、被保険者になりません。「在留資格があれば誰でも対象」という単純化も誤りで、在留資格の種類・在留期間・住民票の有無を合わせて確認する必要があります。介護保険は3年ごとに制度改定が行われるため、外国人の適用要件についても今後見直しが行われる可能性があります。最新の取り扱いは、住所地の市区町村の介護保険担当窓口で確認してください。
なお、在留外国人が高齢期を迎えて要介護状態になった場合、要介護認定の申請やケアプランの作成、サービス利用時のやり取りにおいて日本語での意思疎通が難しいことが実務上の課題になり得ます。この点への自治体・関係機関の対応は「多言語対応と相談窓口」で説明したとおりです。
まとめ
- 介護保険の被保険者要件は国籍ではなく住所要件が基準。中長期在留者・特別永住者として住民票があれば対象になり得る
- 2012年の住民基本台帳法改正で、外国人登録法が廃止され外国人にも住民票が作成されるようになった
- 65歳以上は第1号被保険者、40〜64歳で医療保険加入者は第2号被保険者という区分は日本人と同じ
- 「外交」「公用」(在留期間3か月以下)、米軍構成員・軍属・家族は適用除外となり被保険者にならない
- 技能実習生・特定技能外国人は中長期在留者として住民票が作成され、40歳以上は給与から介護保険料が天引きされる
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