施設サービス計画(施設ケアプラン)とは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)・介護老人保健施設・介護医療院に入所する要介護1〜5の方について、施設に配置された計画担当の介護支援専門員(施設ケアマネ)が作成する計画です。在宅で使う居宅サービス計画(居宅ケアプラン)とは作成者・対象となるサービス形態が異なります。この記事では、対象施設・作成手順・居宅サービス計画との違い・費用負担の考え方を、厚生労働省令にもとづき整理します。
施設サービス計画(施設ケアプラン)とは何か
施設サービス計画は、介護保険の施設サービスを利用する入所者ひとりひとりについて、生活全般の解決すべき課題・目標・提供するサービスの内容を定めた計画書です。入所した施設の中で完結するサービスを対象としており、在宅の複数事業所を組み合わせる居宅サービス計画とは性格が異なります。
定義と法令上の位置づけ
施設サービス計画の作成義務は、施設の種類ごとに定められた運営基準の中に規定されています。特別養護老人ホームについては「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第39号)第12条に、施設サービス計画の作成手順が具体的に定められています。同様の規定は介護老人保健施設・介護医療院の運営基準にもそれぞれ置かれています。
対象となる3種類の施設
施設サービス計画の作成対象となるのは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)・介護老人保健施設・介護医療院の3種類です。それぞれ「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」「介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」という別々の省令に運営基準が定められていますが、施設サービス計画の作成手順の骨格(アセスメント・原案作成・サービス担当者会議・説明同意・交付・モニタリング)はいずれも共通しています。
対象となる利用者(要介護1〜5)
施設サービス計画の対象となるのは、これらの施設に入所している要介護1〜5の認定を受けた方です。要支援の方はそもそも介護保険施設への入所対象ではないため、施設サービス計画の対象にはなりません。要介護度が高いほど生活全般での支援の必要性が高く、計画に盛り込む内容も多くなる傾向があります。
居宅サービス計画(居宅ケアプラン)との違い
「ケアプラン」という言葉は施設・在宅どちらでも使われますが、施設サービス計画と居宅サービス計画は作成者もサービスの対象範囲も別物です。混同すると、退所・入所の切り替え時にどちらのケアマネに相談すればよいか分からなくなるため、ここで整理します。居宅サービス計画についてはケアプラン(居宅サービス計画)とはを解説した記事で詳しく説明しています。
作成者が異なる
居宅サービス計画は、市区町村の指定を受けた居宅介護支援事業所に所属する介護支援専門員が作成します。一方、施設サービス計画は入所先の施設に配置された計画担当の介護支援専門員(施設ケアマネ)が作成します。在宅で担当してもらっていたケアマネジャーが、そのまま施設入所後も担当を続けるわけではありません。
対象となるサービス形態が異なる
居宅サービス計画は、訪問介護・通所介護・福祉用具貸与など、複数の在宅サービス事業所を組み合わせて利用するために作成されます。これに対し施設サービス計画は、入所している施設内で完結する介護・看護・機能訓練・食事などのサービスを対象とし、施設という一つの事業者の中でサービス内容を調整する計画です。
図解で見る両者の対比
図:施設サービス計画と居宅サービス計画は、作成者・対象サービスともに別のしくみです。
対象施設と入所要件の関係
施設サービス計画が作成される前提として、そもそもどの施設にどのような要件で入所するのかを押さえておく必要があります。
介護老人福祉施設(特養)の入所要件
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は、常時介護を必要とする要介護者が対象で、入所条件の詳細は特別養護老人ホームとはを解説した記事で扱っています。入所後は、施設の計画担当介護支援専門員が施設サービス計画を作成します。入所の申込みから実際の入所までの間は、居宅で暮らしながら居宅サービス計画にもとづくサービスを利用していることが多く、入所が決まった時点で担当がいったん施設側に切り替わる、という流れをたどるケースが一般的です。
介護老人保健施設の位置づけ
介護老人保健施設は、在宅復帰を目指すリハビリテーションを中心とした施設です。運営基準は「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」(平成11年厚生省令第40号)に定められており、こちらでも入所者ごとに施設サービス計画の作成が求められます。在宅復帰を前提としているため、施設サービス計画の中にも、機能訓練の目標や在宅復帰に向けた課題が記載される点が、長期入所を前提とする特養との実務上の違いとして挙げられます。
介護医療院の位置づけ
介護医療院は、長期療養が必要な要介護者に対し、医療と生活支援をあわせて提供する施設です。運営基準は「介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」(平成30年厚生労働省令第5号)に定められており、こちらも施設サービス計画の作成対象です。介護医療院は2018年度の制度改正で創設された比較的新しい施設類型で、医療的なケアの必要性が高い方の受け皿としての性格を持っています。
作成を担う専門職と配置基準
施設サービス計画は誰が作るのか、施設内でどれだけの人員が配置されているのかを見ていきます。
施設の計画担当介護支援専門員
指定介護老人福祉施設の運営基準第12条第1項では、施設の管理者が介護支援専門員に施設サービス計画の作成に関する業務を担当させると定められています。施設に入所した後は、この施設の計画担当介護支援専門員が入所者を担当します。介護支援専門員という資格そのものの仕事内容はケアマネジャー(介護支援専門員)とはを解説した記事で詳しく説明しています。
入所者100人に1人が標準の配置基準
同基準第2条では、介護支援専門員の配置基準として、入所者の数が100人又はその端数を増すごとに1人を標準として置くこととされています。この配置基準は特養の運営基準に定められたものですが、老健・介護医療院についても、それぞれの運営基準の中で計画担当の介護支援専門員の配置が求められています。
管理者の責務
施設の管理者は、介護支援専門員に施設サービス計画の作成業務を担当させる責務を負っています。つまり施設サービス計画の作成は、担当の介護支援専門員個人の判断だけで進めるものではなく、施設全体の運営体制の中に位置づけられた業務です。
作成から交付までの6つのステップ
指定介護老人福祉施設の運営基準第12条には、施設サービス計画の作成から交付までの一連の流れが具体的に定められています。ここでは6つのステップに整理して確認します。
全体の流れを図解で確認
図:施設サービス計画は、アセスメントから始まりモニタリングまで一連の手続きとして進められます(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準第12条にもとづく)。
施設側が進める工程本人・家族の同意や書面のやり取りが必要な工程
各ステップの内容
①アセスメントでは、施設の計画担当介護支援専門員が入所者及びその家族に面接し、心身の状況や生活歴などから解決すべき課題を把握します。②原案作成では、把握した課題をもとに目標やサービス内容などを記載した計画の原案を作成します。③サービス担当者会議では、原案の内容について介護・看護・機能訓練などの担当者を招集し、専門的な見地からの意見を求めます。④説明・同意では、原案の内容を入所者又はその家族に説明し、文書により入所者の同意を得ます。⑤交付では、作成した計画を入所者に交付します。⑥モニタリングでは、計画の実施状況を定期的に把握し記録します。
この6段階は入所時の一度きりの手続きではなく、入所している間は繰り返されるサイクルです。モニタリングの結果、心身の状態や生活上の課題に変化が見られた場合は、再びアセスメントに立ち返り、原案の見直し・サービス担当者会議・説明同意・交付という手順を経て、計画が更新されます。この一連の手続きを経ずに施設側の判断だけでサービス内容を変更することは、運営基準が定める手順に沿わないものになります。
アセスメントとサービス担当者会議の中身
作成手順の中でも特に重要な、アセスメントとサービス担当者会議について詳しく見ていきます。
アセスメント(課題分析)で確認すること
運営基準第12条第3項・第4項では、施設の計画担当介護支援専門員が入所者及びその家族に面接して、その者が入所生活において自立した日常生活を営むことができるように支援する上での課題を把握することとされています。何を確認すべきかの標準的な項目は、老企第29号「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」(WAM NETに掲載)に示されています。
サービス担当者会議に集まる職種
サービス担当者会議には、施設内で入所者に関わる介護職員・看護職員・機能訓練指導員・生活相談員・管理栄養士など多職種が招集され、それぞれの専門的な立場から原案について意見が求められます。この会議を経ることで、一つの職種の視点だけに偏らない計画にすることが意図されています。たとえば栄養状態に課題がある入所者であれば管理栄養士の意見が、嚥下機能に不安がある入所者であれば看護職員や機能訓練指導員の意見が、それぞれ原案に反映される場になります。
原案に記載される項目
施設サービス計画書の標準様式・記載要領は、老企第29号の通知の中で示されており、生活全般の解決すべき課題・長期目標・短期目標・サービス内容などを記載する欄が設けられています。居宅サービス計画の標準様式(厚生労働省公表資料)と共通する構成の部分もありますが、対象が施設内サービスである点が異なります。
モニタリングの頻度と実施内容
計画は作って終わりではなく、実施状況を定期的に確認する仕組みが組み込まれています。ここで居宅サービス計画との表記の違いに注意が必要です。
定期的な面接と記録
運営基準第12条第9項〜第11項では、施設の計画担当介護支援専門員が、施設サービス計画の作成後、計画の実施状況を把握するため、定期的に入所者に面接し、その結果を記録することとされています。
居宅サービス計画との頻度表記の違い
ここで注意したいのが、条文上の表現の違いです。特養の運営基準では、モニタリングについて「定期的に」とのみ規定されており、居宅サービス計画のモニタリングで一般によく言われる「少なくとも1月に1回」のような具体的な月次頻度の明記は、施設サービス計画の運営基準条文上には見当たりません。施設サービス計画のモニタリング頻度を居宅サービス計画と同じ頻度だと決めつけて説明することは避けるべきです。
計画の見直しが行われる場面
入所者の心身の状態や生活状況に変化があった場合、施設の計画担当介護支援専門員は、必要に応じて施設サービス計画の変更を検討します。モニタリングの面接はこうした変化を早期に把握するための機会でもあります。
家族の関わり方と同意・交付の仕組み
施設サービス計画は施設内で完結するサービスとはいえ、入所者本人や家族の意向を反映する手続きが組み込まれています。
原案の説明と文書による同意
運営基準第12条第7項では、施設サービス計画の原案の内容について、入所者又はその家族に対して説明し、文書により入所者の同意を得ることが定められています。原案を一方的に確定させるのではなく、説明と同意の手続きを経ることが求められています。
作成後の交付義務
同条第8項では、施設サービス計画を作成した際には、当該計画を入所者に交付しなければならないと定められています。計画の内容は、施設側だけが把握しているものではなく、入所者自身の手元にも渡される仕組みになっています。
家族が関与できる場面
説明・同意の場面や、面会・相談の機会を通じて、家族が計画の内容について意見を伝えることができます。施設によって面談や相談の頻度・方法には違いがありますが、原案の説明という手続きが制度上求められている点は共通しています。入所者本人が認知症などにより説明の内容を十分に理解することが難しい場合は、家族への説明が実質的な意思確認の場として重視されることになります。いずれの場合も、同意は口頭だけでなく文書によって得ることが運営基準上の要件です。
施設サービス計画の費用負担
計画作成そのものにかかる費用は、入所を検討する家族にとって気になるポイントの一つです。
現時点での費用負担の考え方
施設サービス計画の作成にかかる費用(居宅サービス計画についても同様)は、介護保険の給付に含まれており、原則として利用者本人の別負担は生じないという考え方がこれまでの制度の基本です。施設に入所した場合の自己負担は、居住費・食費・介護サービス費の自己負担分(所得や施設の種類によって異なる)が中心で、計画作成費を単独で追加負担するという仕組みには(2026年時点では)なっていません。この点は、日常生活費など施設ごとに定められる実費負担とは別の話であり、施設サービス計画の作成に関して個別に見積書や請求書が発行されるものではありません。
審議会で検討されている見直し
なお、介護保険制度は3年ごとに見直しが行われる制度です。ケアプラン(居宅サービス計画・施設サービス計画を含む)作成費用の利用者負担導入については、社会保障審議会など国の会議で継続的に議論の対象となっており、今後の審議の結果次第で取り扱いが変わる可能性があります。現時点で負担が生じないという説明は、あくまで現行制度についてのものであり、将来にわたって同じ扱いが続くと断定することはできません。
注意点とよくある誤解
施設サービス計画について、断定的に説明することが難しい点をここで整理しておきます。
居宅ケアマネからの引き継ぎタイミング
在宅で居宅サービス計画を担当していた介護支援専門員から、施設入所後の施設ケアマネへの引き継ぎがいつ・どのように行われるかについては、施設や地域ごとの運用実務によるところが大きく、統一的な公的規定として明確に定められた一次資料は確認できていません。引き継ぎの具体的なタイミングについては、入所を検討している施設や担当の居宅ケアマネに個別に確認してください。
複数施設を利用する場合の整合性
短期入所(ショートステイ)など複数のサービス・施設を併用する場合の計画間の整合性の取り方についても、施設サービス計画に関する運営基準の条文だけからは詳細な調整ルールは読み取れません。個別のケースについては、担当の介護支援専門員や施設に確認するのが確実です。
モニタリング頻度は施設ごとに実務差がある
前述の通り、モニタリングの頻度は運営基準上「定期的に」としか定められていません。そのため、実際の面接頻度は施設ごとの人員体制や入所者の状態によって差が生じ得ます。「月1回は必ず面接がある」といった一律の説明は、施設サービス計画については正確ではない可能性がある点に注意してください。
まとめ
- 施設サービス計画は、特養・老健・介護医療院に入所する要介護1〜5の方について、施設の計画担当介護支援専門員が作成する計画で、在宅の居宅サービス計画とは作成者・対象サービスが異なる
- 作成は、アセスメント→原案作成→サービス担当者会議→説明・文書同意→交付→モニタリングという流れで進められる(指定介護老人福祉施設の運営基準第12条にもとづく)
- 介護支援専門員の配置基準は、入所者100人又はその端数ごとに1人を標準とすることが定められている
- 施設サービス計画のモニタリング頻度は条文上「定期的に」とのみ規定されており、居宅サービス計画の月次頻度の表現と混同しないよう注意する
- 計画作成費用は現行制度では利用者の別負担がないのが原則だが、社会保障審議会など国の会議で継続的に議論されており、将来にわたって同じ扱いが続くとは断定できない
本記事は制度の一般的な仕組みを厚生労働省令等の一次情報にもとづき整理したものです。介護保険制度は3年ごとに見直しが行われるため、実際の適用にあたっては最新の情報を入所先の施設や自治体窓口に確認してください。当サイトの記事の扱い方についてはこのサイトについてのページもあわせてご覧ください。