第2号被保険者の介護保険料は、40歳以上65歳未満で医療保険に加入している人が負担する保険料です。給与明細では健康保険料とは別の項目で、会社員は給与や賞与から、国民健康保険(国保)の人は国保料の「介護分」として世帯主がまとめて納めます。協会けんぽの令和8年度の介護保険料率は全国一律で1.62%です。この記事では、自分の負担がどう決まるかを先に、そのあとで財源、協会けんぽと国保の違い、資格の取得と喪失の時期、サービスを受けられる条件までを公的資料にもとづいて整理します。
第2号被保険者の介護保険料とは
まず、誰が対象で、保険料がどこから請求されるのかを整理します。
定義と対象になる人
介護保険の被保険者は、年齢で2つに分かれます。65歳以上の人が第1号被保険者、40歳以上65歳未満で医療保険に加入している人が第2号被保険者です。介護保険法第10条は、市町村の区域内に住所を有する医療保険加入者が40歳に達したときに被保険者の資格を取得すると定めています。
第2号被保険者の保険料は、市町村が個別に請求するものではありません。加入している医療保険の保険者(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合、国保など)が、医療保険料と一体で徴収します。そのため、給与明細や国保の納入通知書には「介護保険料」または「介護分」という項目で現れます。
第1号被保険者との違い
第1号被保険者の保険料は、市町村が所得段階に応じて決め、年金からの天引き(特別徴収)や納付書・口座振替(普通徴収)で納めます。一方、第2号被保険者は医療保険ごとのルールで算定され、納め方も医療保険と同じです。受けられるサービスの条件にも差があり、第2号は加齢に起因する特定疾病が原因の場合に限られます(後述)。第1号と第2号の区分そのものについては、介護保険の被保険者区分の違いを解説した記事でも説明しています。
よくある誤解
- 「市に自分で払う」と思われがちですが、実際は医療保険料と一体で徴収されます。
- 「65歳になると保険料がなくなる」と思われがちですが、実際は第2号の徴収が止まって第1号の保険料に切り替わります。会社員の健康保険料そのものも65歳以降は続きます。
- 「1.62%はどの健康保険でも同じ」と思われがちですが、実際は協会けんぽの料率で、健康保険組合は組合ごとに異なります。
保険料の財源と集まり方の仕組み
ここまでで、保険料は医療保険を通じて納めると分かりました。この節では、まず「ニュースで見る金額」と自分の負担の関係を整理し、そのあと財源の仕組みを見ます。
納付金の水準と「個人の負担額」ではない点
ニュースなどで見かける「月6千円台」という金額は、制度全体の平均的な水準を示す値で、給与明細の天引き額とは別のものです。個人の自己負担額ではありません。実際に自分が納める額は、加入している医療保険と、標準報酬月額や所得によって決まります。
社会保障審議会介護保険部会の資料(令和8年3月)に載っている数字は、次のとおりです。
| 年度 | 納付金(一人当たり) | 第2号保険料の月額(平均) |
|---|---|---|
| 令和6年度 | 74,535円(確定額) | 6,211円 |
| 令和7年度 | —(記載なし) | 6,202円(見込) |
| 令和8年度 | 76,317円(見込額の平均) | 6,360円(見込) |
第2号保険料の月額は、事業主負担・公費分を含む値です。同じ資料では、第1号保険料の全国加重平均は第9期で月6,225円とされています。
給付費の負担割合
厚生労働省の資料によると、介護給付費の50%は保険料、残り50%は公費で賄われます。保険料50%は、人口比にもとづいて3年ごとに第1号と第2号に配分されます。令和6〜8年度(第9期)は、給付費全体に対して第1号が23%、第2号が27%です(23%+27%=保険料50%)。厚労省のリーフレットには22%・28%という旧版の表記が残っていることがあるため、年度を確認して読む必要があります。
令和7年度予算では介護給付費が13.2兆円で、給付費全体の27%にあたる、およそ3.6兆円が第2号被保険者の保険料です。第2号被保険者は令和4年度の月平均で約4,188万人、要介護(要支援)認定を受けている人は約13万人(0.3%)です。
この割合は3年ごとに見直され、次は令和9年度からの第10期に入ります。第10期の負担割合は変わる可能性があります。
徴収から市町村への交付までの流れ
第2号保険料は、次の順に流れます。
- 各医療保険者が、医療保険料と一体で第2号保険料を被保険者から徴収する
- 医療保険者が、徴収した分を納付金として社会保険診療報酬支払基金に納付する
- 支払基金が、各市町村の給付費等の27%分を市町村に交付する
納付金は概算で納め、2年後に精算します。医療保険者への配分には総報酬割が使われ、協会けんぽ、健康保険組合、共済組合、国保の間で調整されます。根拠は介護保険法第150条(納付金の徴収・納付義務)です。
資格の取得と喪失の時期
財源の仕組みを見たので、次は、いつから保険料がかかり、いつ止まるのかを確認します。
40歳になるとき
40歳に達すると、医療保険に加入していれば自動的に第2号被保険者の資格を取得し、届出は不要です(日本年金機構の案内)。徴収が始まる月は、協会けんぽ茨城支部では40歳の誕生日の前日が属する月から、国保では練馬区の例で40歳の誕生月分から(1日生まれの人は前月分から)です。保険者によって異なるため、具体的な開始月は加入先で確認してください。
65歳になるとき
65歳になると、第2号から第1号被保険者へ自動的に切り替わります。協会けんぽ茨城支部では、誕生日の前日が属する月から第2号の徴収が止まります。国保の練馬区の例では、誕生月の前月分までが第2号の介護分です。健康保険料そのものは、会社員であれば65歳以降も続きます。
65歳以降の第1号の保険料は市町村ごとに決まり、第9期の全国加重平均は月6,225円です。納め方は原則として年金からの天引きです。
医療保険をやめたとき
介護保険法第11条第2項では、第2号被保険者は医療保険加入者でなくなった日から資格を失うとされています。医療保険に加入していない40〜64歳の人は、お住まいの市町村の窓口に相談してください。
協会けんぽの介護保険料の計算方法
資格の時期が分かったところで、会社員の多くが加入する協会けんぽの計算方法を見ます。
令和8年度の料率
協会けんぽの令和8年度の介護保険料率は1.62%で、全国一律です。令和7年度の1.59%から0.03ポイント上がりました。令和8年3月分(4月納付分)の保険料から適用されます。任意継続被保険者と日雇特例被保険者は、4月分からです。健康保険料率は都道府県ごとに異なりますが、介護保険料率は全国一律である点が特徴です。
計算式と具体例
標準報酬月額とは、毎月の給与を区切りの良い額に当てはめたもので、給与明細や協会けんぽの保険料額表で確認できます。健康保険法第156条では、介護保険料額は標準報酬月額・標準賞与額に介護保険料率を掛けて求めるとされています。月々の計算式は次のとおりです。
介護保険料(月額)= 標準報酬月額 × 1.62%
賞与にかかる保険料は、標準賞与額(1,000円未満は切り捨て)× 1.62%です。計算例は次のとおりです。
- 標準報酬月額30万円:300,000円 × 1.62% = 4,860円。本人負担は折半の2,430円
- 標準賞与額100万円:1,000,000円 × 1.62% = 16,200円。本人負担は折半の8,100円
標準報酬月額別の早見は次のとおりです。端数が出る場合は「約」の金額になります。
| 標準報酬月額 | 介護分の月額 | 本人負担(折半) |
|---|---|---|
| 20万円 | 3,240円 | 1,620円 |
| 30万円 | 4,860円 | 2,430円 |
| 40万円 | 6,480円 | 3,240円 |
これは介護分のみの金額です。実際の天引き額には、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などが別に加わります。
労使折半と賞与の上限
被用者保険の保険料は、原則として事業主と被保険者が折半します。協会けんぽの案内でも、同様に説明されています。賞与については、健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金の保険料の計算対象となる標準賞与額に、年度の累計で573万円という上限があります。
被扶養者の扱い
札幌市の説明では、40〜64歳の被扶養者は個別に保険料を納めず、第2号被保険者全体で負担するとされています(協会けんぽ側の明文は未確認です)。扶養されている家族がいる場合は、加入先の協会けんぽ支部に取り扱いを問い合わせると確実です。
健康保険組合・共済組合に加入している場合
協会けんぽの1.62%は、会社の健康保険組合や共済組合にそのまま当てはまるわけではありません。
組合ごとに異なる料率
健康保険組合連合会(健保連)の早期集計によると、令和8年度の健保組合の介護保険料率の平均は1.70%です。ただし、これは平均値であり、組合ごとに料率が異なります。組合に加入している人は、自分の組合の保険料率表を確認してください。
計算の基本は同じ
組合に加入している場合でも、標準報酬月額と標準賞与額に料率を掛け、原則として事業主と折半するという基本の考え方は、協会けんぽと共通です。具体的な本人負担額は給与明細や組合の案内で確認してください。
国民健康保険の介護分の仕組み
会社員とは別に、自営業者や退職後の人などが加入する国保では、計算の仕組みが変わります。
国保料の構成
令和8年度の国保料は、次の4区分で構成されます。
- 医療分
- 後期高齢者支援金分
- 介護分(40〜64歳の加入者だけが対象)
- 子ども・子育て支援金分
世帯主が世帯の分をまとめて納め、事業主負担がないため折半はありません。札幌市は、国保では保険料のおよそ半分が公費で負担されていると説明しています。
算定方法は市町村ごとに異なる
国保の介護分は、所得割と均等割(自治体によっては平等割も)を組み合わせて計算しますが、料率や金額は市町村ごとに決まります。所得割の基礎となる額は、目黒区の説明では、前年の所得から基礎控除(最大43万円)を引いた額です。地域差の例として、3自治体の令和8年度の介護分を挙げます。
| 自治体 | 所得割 | 均等割 | 平等割 |
|---|---|---|---|
| 仙台市 | 2.44% | 9,440円(1人) | 7,070円(1世帯) |
| 目黒区 | 2.35% | 17,800円(40〜64歳の加入者数分) | —(記載なし) |
| 千葉市 | 2.57% | 16,560円 | —(記載なし) |
同じ所得でも自治体によって金額が変わります。国保の人は、お住まいの市区町村の公式ページで最新の料率や試算を確認してください。
賦課限度額
国保には、保険料の年額に上限(賦課限度額)があります。横浜市の説明にもとづく令和8年度の年額は次のとおりです。
| 区分 | 限度額 | 前年度からの変更 |
|---|---|---|
| 医療分 | 67万円 | 66万円から1万円引き上げ |
| 後期高齢者支援金分 | 26万円 | 変更なし |
| 介護分 | 17万円 | 変更なし |
| 子ども・子育て支援金分 | 3万円 | 新設 |
「国保の介護分の限度額が上がった」という説明を目にすることがありますが、引き上げられたのは医療分で、介護分は17万円で据え置かれています。千葉市の令和8年度の介護分の限度額も17万円です。
協会けんぽと国保の違いを整理する
ここまでの協会けんぽと国保の説明を、計算・負担者・上限の3点で並べて比べます。
計算の考え方の違い
協会けんぽは、給与の水準(標準報酬月額)に全国一律の1.62%を掛けて計算します。国保は、前年の所得に応じた所得割と、人数や世帯にかかる均等割・平等割を組み合わせ、料率は市町村が決めます。
| 項目 | 協会けんぽ | 国保 |
|---|---|---|
| 計算の基礎 | 標準報酬月額(給与) | 前年の所得と人数・世帯 |
| 料率 | 全国一律1.62% | 市町村ごと |
| 負担者 | 事業主と本人で折半 | 事業主負担なし、世帯主が納付 |
| 上限 | 賞与は年度累計573万円 | 介護分は年額17万円 |
負担者と納め方の違い
協会けんぽでは、事業主と本人が折半し、本人分は給与から天引きされます。国保では事業主負担がなく、世帯主が世帯分を納付します。40〜64歳の被扶養者については、札幌市の説明では個別に保険料を納めないとされています(協会けんぽ側の明文は未確認)。国保は、加入者である40〜64歳の人数分の均等割がかかる自治体があります(目黒区の例)。
上限の考え方の違い
協会けんぽ側の上限は、賞与の年度累計573万円です。国保は介護分の年額17万円という賦課限度額が上限です。仕組みが違うため、金額だけを単純に比べても、自分の場合の比較にはなりません。転職や退職で加入先が変わる場合は、新しい加入先の算定方法で試算してもらうと確実です。
子ども・子育て支援金との違い
給与明細や国保の通知書では、介護保険料の近くに別の新しい項目が並ぶことがあるため、混同しやすい子ども・子育て支援金との違いを整理します。
結論として、支援金は給与明細では介護保険料とは別項目です。介護保険料は40〜64歳だけが対象で、支援金は年齢を問わず全員がかかります。
介護保険料とは別建ての負担
令和8年度から、医療保険料に上乗せして子ども・子育て支援金が徴収されています。こども家庭庁の説明にもとづくと、これは介護保険料の一部ではなく、別建ての負担です。協会けんぽの令和8年度は、健康保険料率に加えて、支援金率0.23%と、40〜64歳の人は介護保険料率1.62%がかかります。
対象者と開始時期
介護保険料は40〜64歳が対象ですが、支援金は介護保険の対象かどうかにかかわらず、被保険者全員にかかります。開始月も異なり、協会けんぽでは介護の1.62%は3月分から、支援金は令和8年4月分(5月納付)からです。被用者保険は折半で、国保は支援金分の賦課限度額が3万円です。目黒区の例では、所得割0.27%、均等割1,800円です。
保険料とサービスの関係と滞納の扱い
保険料を納めることと、実際に介護サービスを使えることの関係を確認します。
特定疾病16種が条件
65歳以上は、要介護・要支援状態になった原因を問いません。40〜64歳の第2号被保険者は、その状態が加齢に起因する特定疾病16種によって生じた場合に限られ、交通事故などの外傷が原因の場合は対象外です。16種は次のとおりです。
- がん(末期)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
がんは「末期」のものが対象です。個々の症状が特定疾病に該当するかどうかは、要介護認定の審査で判断されますので、診断名だけで自己判断せず、市町村の窓口で相談してください。
滞納した場合の給付の差し止め
介護保険法第68条では、第2号被保険者が医療保険料等を滞納している場合、市町村は保険給付の全部または一部を一時差し止められると定めています。札幌市は、滞納があると、いったんサービス費用の全額を自分で負担し、あとから9割分を申請して払い戻しを受ける償還払いになると説明しています。完納した場合や特別の事情がある場合は、差し止めが消除されることがあります(同条第2項)。保険料の納付が難しいときは、早めに加入先に相談してください。介護保険料の滞納全般については介護保険料の滞納を扱った記事もあります。
適用除外と注意したい場面
最後に、保険料の対象から外れる場合と、混同しやすい点を短く整理します。
海外に転居する場合
介護保険法第9条は、市町村の区域内に住所を有することを被保険者の要件としています。国内に住所を有しない人は適用を受けないため、会社員が海外へ転居する場合は、「介護保険適用除外等該当・非該当届」を事業主経由で日本年金機構へ提出します(被保険者と被扶養者それぞれに1枚、国外居住者は住民票の除票を添付)。
適用除外施設に入所した場合
障害者支援施設(生活介護)、救護施設、ハンセン病療養所など11種類の適用除外施設の入所者は、当分の間、被保険者から除外されます。国保の場合は、入所から14日以内の届出で介護分が免除されると千葉市が説明しています。
特別徴収・所得段階との混同に注意
年金からの天引きや所得段階に応じた保険料は、第1号被保険者の仕組みです。第2号の保険料にはこれらは適用されません。第1号の仕組みを知りたい場合は介護保険料の特別徴収を解説した記事が参考になります。
まとめと制度改定への留意
ここまでの内容を要点と次の行動にまとめます。
この記事の要点
- 第2号被保険者は40歳以上65歳未満の医療保険加入者で、介護保険料は医療保険料と一体で徴収される
- 協会けんぽの令和8年度の介護保険料率は1.62%(全国一律)で、標準報酬月額に掛けて原則労使折半。健保組合は組合ごとに異なり、平均は1.70%
- 国保の介護分は市町村ごとに算定され、年額の賦課限度額は17万円で据え置き。事業主負担はない
- 40歳で自動的に資格取得し、65歳で第1号に切り替わる。届出は不要
- サービスを受けられるのは特定疾病16種が原因の場合に限られ、滞納すると給付が一時差し止められることがある
- 子ども・子育て支援金は介護保険料とは別建てで、40〜64歳に限らず被保険者全員にかかる
次にやること
- 会社員の人は、給与明細や協会けんぽ・組合の保険料額表で、自分の介護分の金額を確認する
- 国保の人は、お住まいの自治体サイトで試算や料率を確認する
- 開始月・終了月や被扶養者の扱いが気になる人は、加入先の保険者に問い合わせる
制度改定がありうること
保険料率、負担割合、限度額は年度や制度改正で変わる可能性があります。この記事の数値は令和8年度時点の公的資料にもとづいており、最新の内容は厚生労働省、協会けんぽ、お住まいの市区町村の公式ページで確認してください。個別の保険料額は加入先の保険者が決定します。
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