認知症サポーター養成講座とは、認知症について正しい知識と理解を持ち、地域や職場で認知症の人やその家族を見守る応援者(サポーター)になるための講座です。この記事では、講座の内容、受講できる人、申込方法、修了後の流れ、認知症介護基礎研修との違いを、厚生労働省と自治体の公開資料にもとづいて整理します。先に要点を挙げます。
- 所要時間:おおむね90分程度(自治体により60〜90分とする例もあります)
- 受講料:滋賀県・三重県の資料で無料と明記されています。実際の扱いは主催者ごとに確認してください
- 申込先:お住まいの市町村の高齢福祉担当課や地域包括支援センター
認知症サポーターとは
定義と役割
厚生労働省の「主な認知症施策」のページでは、認知症サポーターを、認知症への正しい理解を持ち、本人や家族を温かく見守る応援者と位置づけています。市町村や職場などで開かれる養成講座を受けると、サポーターになれます。
認知症施策推進大綱の資料では、「正しい知識と理解を持ち、地域や職域で認知症の人や家族に対してできる範囲での手助けをする人」と定義されています。宮城県の案内も、サポーターは日常生活の中でできる範囲の活動を行う支援者であり、「特別なことをする人ではない」と説明しています。
認知症基本法との関係
令和6年1月1日に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」(令和5年法律第65号)は、第8条で、国民は認知症に関する正しい知識と理解を深め、共生社会の実現に寄与するよう努めるものと定めています。
特別なことは求められていない
兵庫県は、サポーターの役割を見守りやさりげない声かけ、できる範囲の手助けと説明しています。宮城県も、日常生活の中でできる範囲の活動を行う支援者としています。三重県は、特別なことは不要で、正しい理解と偏見のない見守りが出発点だとしています。
養成講座の内容と所要時間
所要時間は90分程度が目安
国の「認知症サポーター等養成事業実施要綱(参考・案、2020年2月作成)」では、講座はおおむね90分程度で、「キャラバン・メイト」と呼ばれる講師役(養成研修を受けた人。詳しくは後述します)が実施するとされています。資料ごとの記載は次のとおりです。
| 資料 | 所要時間 |
|---|---|
| 国の要綱案(2020年2月作成) | 概ね90分程度 |
| 兵庫県 | 約90分 |
| 滋賀県 | 概ね90分 |
| 三重県 | 1回60〜90分 |
要綱案が示す構成例は、次のとおりです。
- 基礎知識(約60分):認知症とは何か、主な症状、早期診断・早期治療の重要性、権利擁護など
- 認知症の人への対応・家族支援・サポーターにできること(約30分)
あくまで「例」であり、実際の配分や進め方は主催者によって異なる場合があります。
事業者が従事者向けに行う研修は対象外
要綱案には、介護サービス事業者が自社の従事者向けに行う研修は、サポーター養成講座には位置づけられない、という趣旨の記載があります。職場で受ける研修が「サポーター養成講座」なのか、別の研修なのかは、主催者に確認してください。
認知症の人への接し方の基本
ここでは、自治体の資料にある接し方の一例を紹介します。養成講座の内容と同一とは限りません。講座で扱う内容は、主催者の案内で確認してください。
静岡県の「3つの『ない』」
静岡県の接遇心得(令和8年4月1日)では、認知症の人への対応の基本として、「驚かせない」「急がせない」「自尊心を傷つけない」の3つが挙げられています。
7つのポイント
同じ資料には、日本認知症官民協議会の手引きにもとづく7つのポイントも掲載されています。
- まず見守る
- 余裕を持って笑顔で
- 声をかけるときは1人で
- 後ろから声をかけない
- やさしい口調で
- おだやかに、はっきりした口調で
- 本人の言葉に耳を傾けてゆっくり対応する
症状や状況は人によって異なるため、迷ったときは地域包括支援センターなどの窓口に相談してください。
受講できる人と費用
受講できる人
要綱案では、対象を「地域・職域・学校等で認知症の人と家族を支える意欲を持つ者」としています。認知症の人の家族や、介護の仕事に関心のある人も、この範囲に当てはまれば対象になり得ます。個別の可否は主催者に確認してください。認知症施策推進大綱の資料では、想定される受講の場として次のものが挙げられています。
- 住民:自治会、老人クラブ、民生委員、家族会など
- 職域:企業、金融機関、消防、警察、スーパー、コンビニ、公共交通機関など
- 学校:小・中・高校、教職員、PTAなど
受講料の考え方
滋賀県と三重県は、養成講座は無料と明記しています。三重県の案内では、講師はボランティアで謝礼が不要であり、会場は主催者が用意するとされています。実際の受講料は主催者ごとに確認してください。
グループで開催を依頼する場合
個人で参加する場合とは別に、グループで開催を依頼する方法もあります。三重県は、企業・自治会・学校・グループ向けの開催企画を募集しており、その場合は20人程度から相談できるとしています。この人数は、開催を依頼するときの目安です。申込先は、県の長寿介護課、または市町の高齢福祉担当課や地域包括支援センターです。
キャラバン・メイトの役割
この章は、受講者には直接関係しません。講師役を志す人向けの内容です。
講師役を務める人
キャラバン・メイトは、養成講座の講師役を務める人です。全国キャラバン・メイト連絡協議会の案内では、メイトを養成する実施主体(研修を主催する団体)は自治体や全国的な職域組織・企業等で、介護サービス事業者とその団体は対象外とされています。受講料は無料で、交通費・宿泊費は本人負担です。登録後は年間最低3回の講座実施が条件で、年10回程度が目安とされています。
メイト研修の内容
国の要綱案では、メイト研修はおおむね6時間程度で、次の構成例が示されています。対象者の例には、認知症介護指導者養成研修修了者、認知症介護実践リーダー研修修了者、介護相談員、認知症の人と家族の会の会員などがあります。
| 項目 | 時間(要綱案の構成例) |
|---|---|
| 役割と施策上の位置づけ | 0.5時間 |
| 基礎知識等 | 2.5時間 |
| 講座運営(グループワークを含む) | 3.0時間 |
全国キャラバン・メイト連絡協議会は、自治体向けの研修を合計360分としています。区分の分け方が資料により異なるため、時間数をそのまま比べないでください。
申込方法と開催主体
誰が開催するのか
要綱案では、講座を主催する「実施主体」を次のように整理しています。
- 都道府県・指定都市・市区町村
- 全国的な組織を持つ職域団体・企業
- 適切に運営できる団体への委託(介護サービス事業者を除く)
お住まいの市町村へ問い合わせる
申込窓口は自治体ごとに異なります。個人で参加したい場合は、お住まいの市町村に直近の開催日を問い合わせます。兵庫県は、開催日を住んでいる市町の事務局へ問い合わせるよう案内しており、県内41市町すべてに窓口があるとしています。滋賀県も、申込は各市町と案内しています。
- お住まいの市町村の高齢福祉担当課、または地域包括支援センターに問い合わせる
- 開催日・会場・申込方法・定員を確認する
- 申し込み、当日参加する
地域包括支援センターについては地域包括支援センターとは何かを解説した記事で整理しています。
職場や学校で受ける場合
三重県は、企業・自治会・学校・グループからの開催企画を募集しています。職場や学校で受講したい場合は、まず総務担当や学校の担当者に確認し、必要に応じて自治体の窓口に開催を相談してください。
修了後の流れ
オレンジリングやカード
要綱案には、サポーターの証として「オレンジリング」を交付すると記載があります。一方、兵庫県は令和3年4月以降、原則として実施主体ごとの「認知症サポーターカード」を渡すとしており、オレンジリングを配る実施主体もあるという説明です。滋賀県は「オレンジリングやカード」と表記しています。何が渡されるかは実施主体によって異なります。
ステップアップ講座
ステップアップ講座は、養成講座を修了した人が次の段階として受ける講座です。要綱案では、チームオレンジなどの実際の支援活動に参画することを目的としています。内容例は、チームオレンジの意義、接し方のロールプレイ、本人の話を聴く実習、個人情報への配慮、意思決定支援などです。時間数は地域の実情に応じて設定されます。
チームオレンジ
厚生労働省と福岡県の資料によると、チームオレンジとは、市町村がコーディネーターを配置し、認知症の本人や家族の困りごと、生活支援のニーズを、サポーターを中心とした支援者につなぐ仕組みです。基本の養成講座に加え、ステップアップ研修を受けた人が中心となります。活動例は、見守り・声かけ、話し相手、外出支援、認知症カフェの運営への参加などです。
参考として、福岡県は令和6年度末時点で県内26市町が設置していると公表しています。身近な地域での設置状況は、お住まいの市町村に確認してください。
認知症の高齢者を地域で見守る他の仕組みとして、認知症高齢者等SOSネットワークもあります。
認知症介護基礎研修との違い
対象者と位置づけ
名前が似ていますが、両者は別の制度です。サポーター養成講座は、一般の住民や職域・学校などを対象とした約90分の講座です。一方、認知症介護基礎研修は、介護サービス事業者が、介護に直接携わる職員のうち医療・福祉関係の資格を持たない者に受講させる研修です。
三重県の資料によると、令和3年度の介護報酬改定でこの受講が義務化され、3年間の経過措置(令和6年3月31日まで努力義務)が設けられました。看護師・介護福祉士・社会福祉士・医師などの有資格者は対象外とされています。
受講方法とねらい
厚生労働省老健局の通知(令和6年3月14日 老認発0314第1号)では、基礎研修は原則としてeラーニングで行うとされ、受講環境が整わない間は集合型またはオンライン(双方向)も認められています。ねらいは、本人主体の介護の基礎的な知識・技術と考え方を身につけ、チームの一員として基礎的なサービスを提供できるようにすることです。
サポーター養成講座は、地域で認知症の人を見守る人を増やすための講座です。介護の仕事で必要になる研修の詳細は、認知症介護基礎研修の解説記事をご覧ください。これから介護の仕事を目指す人向けの入門的な研修については、介護に関する入門的研修の解説記事で整理しています。
違いの整理
| 項目 | サポーター養成講座 | 認知症介護基礎研修 |
|---|---|---|
| 対象 | 住民・職域・学校など | 無資格で介護に直接携わる職員など |
| 目的 | 正しい理解と見守り | 介護の基礎的な知識・技術の習得 |
| 位置づけ | 事業者が従事者向けに行う研修は含まない | 事業者が職員に受講させる措置 |
サポーター数の推移
全国キャラバン・メイト連絡協議会の公表値
サポーター数は、全国キャラバン・メイト連絡協議会の事務局が公表している数値で、官公庁の統計ではありません。次の表は、公表資料の表記どおりに載せたものです。時点によって表記が異なるため、参考としての比較にとどめてください。
| 時点 | 公表資料の表記 |
|---|---|
| 令和7年6月30日 | 累計16,352,626人(サポーター16,164,637人+キャラバン・メイト187,989人)。平成17年度からの累計で、講座開催512,033回、メイト研修3,216回 |
| 令和8年6月30日 | サポーター17,217,383人(うちキャラバン・メイト193,065人) |
自治体の公表例と国の目標
自治体が引用している全国の人数としては、宮城県が令和5年6月末時点で約1,465万人、滋賀県が令和8年3月末時点で約1,708万人と記載しています。時点が違う数字なので、最新の人数は事務局の公表ページで確認してください。
認知症施策推進大綱の資料では、令和2年度末に1,200万人、令和7年度末に企業・職域型で400万人という目標が示されていました。
注意点と制度変更の可能性
自治体や主催者による違い
この記事で紹介した国の要綱は「参考・案」と明記されたものです。時間、配布物、申込方法、定員などは、自治体や主催者ごとに違います。必ず、お住まいの市町村や職場の主催者の案内を確認してください。
制度・テキストの変更
令和6年12月に策定された認知症施策推進基本計画では、「認知症サポーター養成講座のテキストの更なる見直しを行う」と記されています(p.7)。講座の内容や運用は今後変わる可能性があります。法令や運用は改正されることがあるため、最新の情報は、お住まいの市町村、都道府県、厚生労働省の公式ページで確認してください。
この記事の位置づけ
この記事は一般的な情報を整理したもので、個別の状況に応じた助言ではありません。今回確認できた資料の範囲では、受講料や受講条件(年齢・資格など)の全国一律の規定、全国のチームオレンジ設置数、令和7年度末の企業・職域型サポーターの実績内訳は把握できていません。これらについては、お住まいの地域の主催者や公表資料で確認してください。介護や認知症について具体的に困っている場合は、地域包括支援センターなどへご相談ください。当サイトの編集方針はこのサイトの立ち位置に記載しています。
まとめ
- 認知症サポーターは、認知症について正しく理解し、できる範囲で本人や家族を見守る応援者で、市町村や職場の養成講座の受講でなれる
- 講座はおおむね90分程度で、キャラバン・メイトが講師を務める。滋賀県・三重県は無料と明記している
- 実施主体によりオレンジリングやカードが渡され、希望すればステップアップ講座を経てチームオレンジの活動につながる場合がある
- 認知症介護基礎研修は、介護職員向けの別の研修。制度やテキストは見直される可能性があるため、最新情報は自治体や厚生労働省で確認する
- まず、お住まいの市町村の高齢福祉課か地域包括支援センターに、直近の開催を問い合わせる