介護予防認知症対応型共同生活介護とは、要支援2の認定を受けた認知症の人が、5〜9人程度の少人数の共同生活住居(ユニット)で、食事や入浴などの介護と機能訓練を受けながら暮らす介護保険サービスです。介護保険法第8条の2第15項に位置づけられ、要支援1の人や要介護1以上の人は対象になりません。原則として事業所と同じ市区町村に住民票がある人だけが利用できる地域密着型サービスでもあります。この記事では、対象条件、サービス内容、令和6年度の介護報酬にもとづく費用の仕組み、通常の認知症対応型共同生活介護(要介護1〜5対象)との違いまで、公的資料にもとづいて解説します。
介護予防認知症対応型共同生活介護とは
介護予防認知症対応型共同生活介護は、介護保険の要支援2の認定を受けた認知症の人を対象に、少人数の共同生活の場で日常生活上の支援と機能訓練を提供する介護予防サービスです。一般には「介護予防グループホーム」と呼ばれることもありますが、正式名称はあくまで介護保険法上の給付名である「介護予防認知症対応型共同生活介護」です。要支援2の人が対象になる点が最大の特徴で、要介護状態になる前の段階から、認知症の症状の進行を緩やかにし、できる限り自立した生活を続けられるよう支援することを目的にしています。
法的根拠と通常のグループホームとの違い
このサービスの法的根拠は介護保険法第8条の2第15項です。同じ「認知症対応型共同生活介護」という名称を含むサービスとして、要介護1〜5の人を対象にした通常の認知症対応型共同生活介護が介護保険法第8条第20項に定められています。この2つは根拠条文が異なる別の給付として整理されており、対象となる要介護度によって適用される条文と介護報酬の単位数が変わります。和歌山県が公開している資料でも、(介護予防)認知症対応型共同生活介護として、この2つのサービスが並べて整理されています。要支援2の人が要介護状態になった場合には、区分変更の手続きを経て通常の認知症対応型共同生活介護(グループホーム)へ切り替わる仕組みになっています(区分変更後の扱いについては後述します)。
対象となる要支援2の認知症の人
介護予防認知症対応型共同生活介護の対象者は、要支援2の認定を受けており、かつ認知症の診断を受けている人です。要支援2は、要介護認定のうち要介護状態に至る前の「要支援」区分の中でも、日常生活の一部に見守りや支援が必要な段階に相当します。認知症の症状があることに加えて、共同生活を営むうえで著しい支障がない状態であることが前提になります。認知症の種類や重症度についての細かな基準は、要介護認定の結果と主治医の意見書などをもとに、市区町村や事業所側で個別に確認されます。要支援と要介護の認定区分の違い全体については、要支援と要介護の違いを解説した記事で詳しく整理しています。
対象者の条件
介護予防認知症対応型共同生活介護を利用するためには、要介護度・認知症の有無・住所地という3つの条件をすべて満たす必要があります。それぞれの条件を具体的に見ていきます。
要支援2の認定が必須(要支援1は対象外)
このサービスを利用できるのは要支援2の認定を受けた人に限られ、要支援1の認定を受けている人は利用できません。名古屋市が公開している介護・障害情報提供システムでも、要支援1の人はこのサービスを利用できない旨が明記されています。これは、共同生活住居という少人数の環境で認知症のケアを行うという性質上、一定程度のケアの必要度が前提とされているためと考えられます。要支援1と判定された認知症の人が将来的にこのサービスの利用を検討する場合には、認定の更新や区分変更の申請を通じて要支援2以上に区分が変わることが条件になります。
認知症の診断が前提になる
サービス名に「認知症対応型」とある通り、対象となるのは認知症の診断を受けている要支援2の人です。要支援2の認定を受けていても、認知症の診断がない場合は、このサービスではなく、小規模多機能型居宅介護など他の地域密着型サービスや、通所・訪問系の介護予防サービスが選択肢になります。認知症の診断や症状の程度については、要介護認定の際の主治医意見書や認定調査の結果が判断材料の一つになります。
地域密着型サービスとしての住所地の要件
介護予防認知症対応型共同生活介護は、市区町村が事業所を指定する「地域密着型サービス」の一つです。名古屋市の案内では、グループホームは市町村が指定する地域密着型サービスであり、当該市町村に住んでいる人のみが利用できるとされています。つまり原則として、利用したい事業所が所在する市区町村に住民票があることが条件になります(自治体間の協議により例外的な広域利用が認められる場合もあるため、個別の事情がある場合はお住まいの市区町村に確認してください)。引っ越しを伴う施設探しをする場合は、まず住民票を移す市区町村を決め、その市区町村内の事業所から検討する必要がある点に注意が必要です。転居を伴う場合の具体的な手続きについては、お住まいの市区町村の窓口や、次に説明する地域包括支援センターに確認するとよいでしょう。
地域密着型サービスという枠組みは、認知症対応型共同生活介護に限らず、小規模多機能型居宅介護や地域密着型通所介護など、比較的小規模な事業所が住み慣れた地域の中で暮らしを支えるという考え方にもとづいています。市区町村が指定・監督を行うため、都道府県が指定する施設サービスなどと比べて、地域の実情に応じた運営がしやすいという特徴もあります。反面、利用できる事業所の選択肢が住所地のある市区町村内に限られるため、隣接する市区町村に希望する事業所があっても、住民票を移さない限り利用できない点は事前に理解しておく必要があります。
サービス内容と生活の場
介護予防認知症対応型共同生活介護では、利用者は「共同生活住居」と呼ばれる少人数のユニットで暮らしながら、日常生活上の支援と機能訓練を受けます。ここでは、生活の場の仕組みと具体的な支援内容を見ていきます。
共同生活住居(ユニット)の仕組み
共同生活住居は、居間や食堂などの共用スペースを中心に、少人数の入居者が一つの家庭のような雰囲気の中で共同生活を送る住まいの単位です。1つの事業所が複数の共同生活住居(ユニット)を運営していることもあり、江東区の案内でも「2ユニット以上の場合」の利用料が別途示されており、複数ユニットを持つ事業所が実際に存在することがうかがえます。1事業所あたり何ユニットまで運営できるかは指定基準にもとづきますが、令和6年度の介護報酬サービスコード表には3ユニットで夜勤職員を2人以上配置する場合の加算区分が設けられており、少なくとも3ユニットまでの運営が制度上想定されていることがうかがえます。
1ユニット5〜9人という定員の範囲
厚生労働省の介護サービス情報公表システムの解説によると、認知症対応型共同生活介護における1つの共同生活住居(ユニット)の入居定員は5人以上9人以下とされています。この範囲は、家庭的な雰囲気を保ちながら、認知症の症状に応じたきめ細かなケアを行うために設定されているものです。少人数であることによって、利用者一人ひとりの生活リズムや症状の変化を職員が把握しやすくなるという特徴があります。
受けられる支援の範囲
共同生活住居で提供される支援は、食事・入浴・排せつなどの日常生活上の介護に加え、機能訓練やレクリエーションなどの活動を含みます。厚生労働省の介護サービス情報公表システムの解説では、認知症対応型共同生活介護の内容として、共同生活を営む住居において、家庭的な環境のもとで入浴・排せつ・食事等の介護その他の日常生活上の世話および機能訓練を行うサービスと説明されています。介護予防認知症対応型共同生活介護でも基本的な支援内容の枠組みは共通しており、要支援2の段階に応じて、できる限り自立した生活を続けられるよう支援する点に重点が置かれます。
費用の仕組みと介護報酬
介護予防認知症対応型共同生活介護を利用する際の費用は、介護保険から給付される部分(介護報酬)と、利用者が全額自己負担する部分(家賃・食費・光熱費などの実費)に分かれます。ここでは令和6年度の介護報酬にもとづいて、単位数の仕組みを確認します。
介護予防認知症対応型共同生活介護費とは
介護保険から給付される費用は「介護予防認知症対応型共同生活介護費」という名称の介護報酬として定められています。介護報酬は「単位数」という形で定められ、1単位あたりの単価(地域区分によって異なり、おおむね10〜11.4円程度)を掛け合わせて金額が計算される仕組みです。利用者は、この介護報酬の1〜3割(所得に応じて割合が変わります)を自己負担します。
1ユニットと2ユニット以上での単位数の違い
独立行政法人福祉医療機構(WAM NET)が公開している令和6年度の介護給付費単位数等サービスコード表によると、要支援2の人を対象にした介護予防認知症対応型共同生活介護費は、1つの事業所が1ユニットのみを運営している場合の「介護予防認知症対応型共同生活介護費(Ⅰ)」で1日あたり761単位、2ユニット以上を運営している場合の「介護予防認知症対応型共同生活介護費(Ⅱ)」で1日あたり749単位と定められています。ユニット数によって単位数が異なるのは、複数ユニットを運営する事業所では夜勤職員の配置などで一定のスケールメリットが生じることを踏まえた設定と考えられます。
夜勤の勤務体制で変わる単位数
同じサービスコード表では、夜勤の勤務条件に関する基準を満たさない事業所については、単位数が97%に減算されることも示されています。具体的には、介護予防認知症対応型共同生活介護費(Ⅰ)は738単位、介護予防認知症対応型共同生活介護費(Ⅱ)は727単位に下がります。この減算の仕組みは、夜間の職員配置体制がケアの質に直結する認知症グループホームの特性を踏まえたものといえます。利用を検討する際に事業所ごとの単位数の違いを確認したい場合は、契約前の重要事項説明書などで確認することができます。
自己負担割合と実費部分
介護報酬にもとづく自己負担は、他の介護保険サービスと同様に原則1割で、一定以上の所得がある人は2割または3割になります。これに加えて、家賃・食費・光熱水費・日用品費などの実費部分は介護保険の給付対象外のため、利用者が全額を負担します。実費部分の金額は事業所ごとに設定が異なるため、具体的な月額の目安を一律に示すことはできません。参考として、介護報酬部分だけで単純計算すると、1ユニットの場合(761単位、自己負担1割、地域区分による1単位10〜11.4円程度で試算)は1日あたりおよそ760〜870円、30日でおよそ2万3,000〜2万6,000円程度になります。ここに家賃・食費等の実費が別途加わるため、実際の月額の総額はこれより大きくなります。利用を検討する際は、候補となる事業所から直接、家賃や食費を含めた見積もりの説明を受けることが必要です。
通常の認知症対応型共同生活介護との違い
介護予防認知症対応型共同生活介護と、通常の認知症対応型共同生活介護は、名称が似ているため混同されやすいサービスです。ここでは両者の主な違いを整理します。
対象となる要介護度の違い
最も大きな違いは対象となる要介護度です。介護予防認知症対応型共同生活介護は要支援2の人のみを対象とし、根拠条文は介護保険法第8条の2第15項です。一方、通常の認知症対応型共同生活介護は要介護1〜5の人を対象とし、根拠条文は介護保険法第8条第20項です。要支援1の人はどちらのサービスも利用できません。この2つは提供される支援の基本的な枠組みは共通していますが、対象となる要介護度に応じて別々の給付として制度上区分されています。
加算の有無という違い
介護報酬上の加算にも違いがあります。厚生労働省が公表した令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1225)では、協力医療機関連携加算について、介護予防認知症対応型共同生活介護費(要支援2)には設けられておらず、算定できないことが示されています。この加算は、事業所があらかじめ協力医療機関を定め、入居者の急変時などに連携する体制を評価するもので、通常の認知症対応型共同生活介護(要介護1〜5対象)には設けられています。要支援2の段階では要介護度が比較的軽く、医療的な連携体制を評価する加算の対象になっていないと理解できますが、これは「医療連携そのものが行われない」という意味ではありません。急変時の対応や医療機関との連絡体制は、加算の有無にかかわらず事業所ごとに整えられているのが通常のため、心配な場合は契約前に事業所へ直接確認することをおすすめします。
利用開始までの流れ
介護予防認知症対応型共同生活介護を利用するまでには、要支援認定の申請から事業所への相談まで、いくつかの段階を踏む必要があります。
要支援認定の申請
まず、お住まいの市区町村に要介護認定・要支援認定の申請を行い、要支援2の認定を受ける必要があります。すでに要支援1や別の要介護度の認定を受けている場合は、状態の変化に応じて区分変更の申請を行うことになります。認定調査や主治医意見書をもとに審査が行われ、結果が通知されるまでには一定の期間がかかります。
地域包括支援センターへの相談
要支援2の認定を受けた人が介護予防サービスを利用する場合、地域包括支援センターが介護予防ケアマネジメントの窓口になります。地域包括支援センターでは、本人の状態や希望をふまえて、介護予防認知症対応型共同生活介護を含む各種サービスの利用について相談することができます。地域包括支援センターの役割や利用方法については、地域包括支援センターとはを解説した記事で詳しく説明しています。
事業所への入居相談と空き状況の確認
利用したい事業所の候補が決まったら、事業所へ直接、入居相談を行います。介護予防認知症対応型共同生活介護は地域密着型サービスであり、事業所ごとに指定を受けた市区町村の住民しか利用できないため、住所地に基づいて選べる事業所が絞られる点に注意が必要です。また、事業所によって空き状況は大きく異なるため、利用を検討する市区町村の地域包括支援センターやケアマネジャーに、直近の空き状況を確認しながら進めることが実務上重要です。事業所への相談時には、本人の認知症の症状や生活状況を伝えたうえで、共同生活を送るうえで必要な支援の内容や、他の入居者との関係性の中で暮らしていけるかどうかについても事業所側の説明を受けることになります。入居が決まった後は、契約書や重要事項説明書の内容を確認し、費用や退去時の条件などを理解したうえで契約を結ぶ流れになります。
要介護度が変わったときの対応
要支援2の認定を受けて介護予防認知症対応型共同生活介護を利用している間に、状態の変化によって要介護度が変わることがあります。ここではその際の考え方を整理します。
要支援2から要介護1以上への区分変更
認知症の症状が進行するなどして日常生活上の支援がより多く必要になった場合は、市区町村に区分変更の申請を行い、要介護1以上の認定を受けることができます。区分変更が認められると、介護保険法上の適用条文が第8条の2第15項(介護予防認知症対応型共同生活介護)から第8条第20項(認知症対応型共同生活介護)へ切り替わります。
通常のグループホームへの移行の可能性
要介護1以上に区分変更された場合、制度上は通常の認知症対応型共同生活介護へ移行することが可能です。ただし、それまで入居していた同じ事業所に必ずそのまま住み続けられるとは限りません。事業所側の受け入れ体制や契約内容によって対応が異なるため、区分変更を行う際は、現在利用している事業所や担当のケアマネジャーに、引き続きの入居が可能かどうかを個別に確認する必要があります。
利用にあたっての注意点
介護予防認知症対応型共同生活介護の利用を検討する際に、あらかじめ知っておきたい注意点を整理します。
事業所は原則同一市区町村内に限られる
すでに述べた通り、このサービスは地域密着型サービスであり、原則として事業所が指定を受けている市区町村に住民票がある人のみが利用できます。遠方の市区町村にある事業所を単純に選ぶことはできないため、住み慣れた地域での生活を続けたい場合にも、逆に離れた地域への転居を検討する場合にも、住所地の要件を早い段階で確認しておくことが大切です。
家賃・食費などの実費は施設ごとに異なる
介護報酬にもとづく自己負担額とは別に、家賃・食費・光熱水費・日用品費などの実費が発生します。これらは介護保険の給付対象外であり、金額は事業所の立地や設備によって差があります。同じ市区町村内であっても事業所ごとに実費の設定は異なるため、複数の事業所から見積もりの説明を受けたうえで比較検討することが実務上重要です。契約前には、月額でかかる費用の総額(介護報酬の自己負担分と実費部分の合計)を書面で確認し、退去時の費用や償却の有無についてもあわせて確認しておくと、後のトラブルを避けやすくなります。
制度は3年ごとに見直される
介護保険制度は3年ごとに制度改定が行われており、介護報酬の単位数や加算の内容も改定のたびに見直されます。この記事で紹介した令和6年度の単位数や加算の内容も、次回以降の改定で変わる可能性があります。実際の利用にあたっては、市区町村や事業所を通じて、その時点での最新の公的情報を確認するようにしてください。
まとめ
介護予防認知症対応型共同生活介護について、ここまでの内容を整理します。
- 対象は要支援2の認定を受けた認知症の人のみで、要支援1は対象外。介護保険法第8条の2第15項に根拠がある
- 地域密着型サービスのため、原則として事業所と同一市区町村に住民票がある人のみ利用できる
- 1つの共同生活住居(ユニット)の定員は5人以上9人以下で、日常生活上の介護と機能訓練を受けられる
- 令和6年度の介護報酬は、1ユニットの場合761単位、2ユニット以上の場合749単位(いずれも1日あたり、夜勤基準を満たさない場合は97%に減算)
- 要介護1〜5対象の通常の認知症対応型共同生活介護とは根拠条文・加算の有無が異なり、協力医療機関連携加算はこのサービスには設けられていない
まずは、お住まいの市区町村の地域包括支援センターに相談することから始めると、要支援認定の状況や利用できる事業所の候補について具体的な案内を受けられます。この記事は、公的機関が公表している一次情報にもとづいて制度の仕組みを整理したものであり、特定の事業所や施設を推奨するものではありません。介護保険制度は改定される可能性があるため、実際の利用にあたっては市区町村や地域包括支援センター、事業所への確認をあわせて行ってください。かいごの窓の情報の扱い方については、このサイトの立ち位置で説明しています。