介護保険の償還払いとは、サービスや工事にかかった費用をいったん利用者が全額(10割)支払い、あとから市区町村に申請して保険給付分(7〜9割)の払い戻しを受ける仕組みです。住宅改修費や福祉用具購入費、高額介護サービス費などが代表例で、申請しなければ1円も戻ってきません。この記事では、償還払いになる具体的なケース、必要書類と申請先、支給までの期間、2年で消滅する時効、そして立て替えが不要になる「受領委任払い」との違いまで、介護保険法と自治体の一次情報にもとづいて解説します。
介護保険の償還払いとは何か
介護保険のサービスは、窓口で1〜3割を払えば使えるものだと思っている方が多いはずです。ところが住宅改修や福祉用具の購入では、いきなり数十万円の請求書を渡されて驚いた、という話が珍しくありません。その背景にあるのが「償還払い」という支払い方法です。まずは言葉の意味と、普段の1〜3割負担との関係を整理します。
償還払いの意味といったん全額を立て替える仕組み
償還払いとは、利用者がサービス費用や工事費用の全額をいったん事業者へ支払い、その後に保険者である市区町村へ申請して、保険給付分の払い戻し(償還)を受ける方法をいいます。東京都八王子市は「利用者が費用を一度全額事業者に支払い、後で市に支給分を請求すること」と説明しており、神戸市は「9割分(所得により8割・7割)の払い戻しを受ける制度」と案内しています。
つまり、お金の動きは二段階です。第一段階で利用者が10割を事業者に支払い、第二段階で市区町村から7〜9割が利用者の口座に振り込まれます。最終的な自己負担は通常のサービスと同じ1〜3割ですが、払い戻しが届くまでの一定期間は、本来保険が負担すべき分まで家計から立て替えることになります。20万円の住宅改修なら、いったん20万円を用意しなければならないということです。
ここで最も重要な注意点があります。償還払いは「自動的に戻ってくる」ものではなく、申請して初めて支給されるという点です。手続きを知らないまま放置すれば、あとで説明する2年の時効にかかり、受け取れるはずだったお金が受け取れなくなります。
なお「償還払い」という言葉が指す範囲は、自治体の説明によって広かったり狭かったりします。保険料を滞納した場合の給付制限だけを「償還払い」と呼んで説明している自治体もあれば、住宅改修・福祉用具購入・市に未届けのケアプランによる利用まで幅広く含めて説明している自治体もあります。この記事では、利用者が全額を立て替えて後から払い戻しを受ける手続き全般という広い意味で扱います。お住まいの市区町村の案内を読むときは、その自治体がどの範囲を指しているのかを意識して読んでください。
通常の1〜3割負担(現物給付)との違い
デイサービスや訪問介護、施設サービスなどを利用したとき、窓口で支払うのは費用の1〜3割だけです。この方式を「現物給付」と呼びます。利用者は保険給付分を立て替えず、残りの7〜9割は市区町村から事業者へ直接支払われるため、家計への負担は実際の自己負担額に限られます。
ここで先に確かめておきたいのが、ご自身(あるいは介護しているご家族)の負担割合です。1割なのか2割なのかは、毎年市区町村から送られてくる「介護保険負担割合証」に「1割」「2割」などと記載されています。償還払いでいくら戻ってくるかはこの割合で決まりますので、手元に負担割合証を用意してから読み進めると、この先の金額の話が自分ごとになります。
償還払いとの違いは、「保険給付分のお金が誰を経由するか」に尽きます。現物給付では市区町村から事業者へ直接流れますが、償還払いでは利用者が一度立て替えてから市区町村が利用者へ払い戻します。最終的な自己負担の割合は変わりませんが、一時的に用意しなければならない金額と、必要な手続きの手間が大きく違います。
もう一つの違いは、手続きを「やらなくても困らない」か「やらないと損をする」かです。現物給付は事業者が請求事務を行うため、利用者が特別な手続きをする必要はありません。一方、償還払いは利用者側の申請が出発点になります。ケアマネジャーが付いていれば案内してもらえることが多いものの、最終的に申請書を出す責任は利用者本人や家族にあります。
法律上はむしろ償還払いが原則である
意外に思われるかもしれませんが、介護保険法の条文上は償還払いのほうが原則です。介護保険法第41条第4項は、居宅介護サービス費の額を、算定した費用の額の次の割合と定めています。
100分の90に相当する額
介護保険法第41条第4項
これは、保険者である市町村が被保険者本人に9割分を支給するという建て付け、つまり償還払いの形です。
では、なぜ実際には窓口で1〜3割を払うだけで済むのでしょうか。同じ第41条の第6項が、市町村は保険給付額の限度で次のように定めているからです。
当該居宅要介護被保険者に代わり、指定居宅サービス事業者に支払うことができる
介護保険法第41条第6項
この仕組みを「法定代理受領」といいます。本人に支払うべき9割分を、本人に代わって事業者が受け取ることで、結果として現物給付が実現しているのです。法定代理受領は法律にもとづいて全国一律に、利用者が何も申し出なくても自動的に働く仕組みだと覚えておいてください。
この構造を理解しておくと、償還払いは特別な罰則やイレギュラーではなく、「法定代理受領が働かない場面で、法律の原則に戻っただけの状態」だと分かります。住宅改修や福祉用具購入のように、そもそも法定代理受領の仕組みが用意されていないサービスもあれば、保険料の滞納によって法定代理受領の適用を外される場合もあります。どちらも結果は同じ「いったん全額立て替え」ですが、理由はまったく異なります。なお、この条文上の建て付けを知らなくても、実際の手続きそのものには影響しません。「法律ではもともと後払いが原則なのだ」とだけ頭の片隅に置いて、次の章へ進んでいただいてかまいません。
あわせて押さえておきたいのは、介護保険が3年ごとに見直される制度だという点です。介護保険事業(支援)計画は3年を1期としており、現在の第9期は令和6〜8年度(2024〜2026年度)、次期の第10期は令和9年度(2027年度)から始まります。この記事で示した金額や取り扱いも、今後の改定で変わる可能性があります。
償還払いになる主なケース
償還払いになる場面は一つではありません。制度としてはじめから償還払いと決まっているもの、手続きの行き違いで結果的にそうなるもの、保険料の滞納によってペナルティとして切り替えられるものなど、性質の異なるケースが混在しています。ここでは根拠となる条文とあわせて整理します。
制度上はじめから償還払いと決まっているもの
次の給付は、法定代理受領の仕組みが用意されていないため、原則として償還払いになります。
| 給付の種類 | 根拠・要点 |
|---|---|
| 居宅介護住宅改修費/介護予防住宅改修費 | 介護保険法第45条。費用の100分の90を支給。支給限度基準額(保険が面倒をみてくれる上限額)は厚生労働大臣が定める額で、市町村は条例で上乗せができる |
| 特定福祉用具販売(居宅介護福祉用具購入費) | 介護保険法第44条。費用の100分の90を支給 |
| 高額介護サービス費 | 介護保険法第51条。自己負担が著しく高額なときに支給。要件や額は政令で定める |
| 高額医療合算介護サービス費 | 毎年8月1日から翌年7月31日までの医療と介護の自己負担を合算し、限度額を超えたときに支給 |
これらは「うっかりミス」ではなく制度の設計として償還払いになっているものです。つまり、正しく手続きをしても一度は全額を支払う必要があります。金額の上限や具体的な戻り額は住宅改修費・福祉用具購入費の償還払いと高額介護サービス費・合算療養費の償還払いで詳しく説明します。なお住宅改修費と福祉用具購入費については、立て替えが不要になる受領委任払いを用意している市町村もあります。
手続きの行き違いで償還払いになるもの
本来であれば1〜3割負担で済んだはずなのに、手続きの都合で10割をいったん支払うことになるケースもあります。代表的なものは次の4つです。
- 被保険者証・負担割合証を提示しなかった…提示がないと事業者が保険給付分を市区町村に請求できないため、その場では10割を支払うことになります。詳しくは提示忘れによる償還払いで後述します。
- 要介護認定の申請中に緊急でサービスを使った…介護保険法第42条第1号の「特例居宅介護サービス費」にあたります。認定の効力は申請日にさかのぼるため、認定されれば払い戻しを受けられます。詳しくは認定申請中の利用の注意点で後述します。
- ケアプランを市に届け出ないまま利用した…自己作成のケアプランを届け出ていない場合などがこれにあたり、大阪市が償還払いの対象として案内しています。
- 負担限度額認定証を提示できなかった…施設の食費・居住費が軽減されないまま支払うことになります。詳しくは負担限度額認定証を提示できなかったときで後述します。
もう一点、見落とされがちなのが「住所地特例」です。他の市区町村にある施設へ入所して住民票を移しても、介護保険の保険者は元の市区町村のままです。したがって償還払いの申請先も、現在住んでいる自治体ではなく元の保険者になります。施設のある自治体の窓口に行って「うちでは受け付けられない」と言われて慌てる、という行き違いが起こりやすい部分です。
保険料の滞納で償還払いに切り替えられるもの
介護保険料を長期間滞納すると、給付制限として支払方法が変更され、デイサービスや訪問介護といった通常のサービスまで償還払いになります。根拠は介護保険法第66条で、市町村は被保険者証に「支払方法変更の記載」を行い、法定代理受領の規定を適用しないこととされています。
滞納の期間に応じて不利益は3段階で重くなり、最終的には自己負担割合そのものが引き上げられます。詳しくは保険料の滞納による償還払い化(給付制限)で後述します。
基準該当サービス・離島等の相当サービス
指定を受けた事業者以外のサービスを使う場合にも、償還払い(特例サービス費)の仕組みが使われます。介護保険法第42条第2号が定める「基準該当サービス」(正式な指定は受けていないけれど、市町村が一定の水準を満たすと認めたサービス、という意味です)を利用した場合、市町村が必要と認めれば特例居宅介護サービス費として支給されます。
また同条第3号は、離島など指定サービスも基準該当サービスも確保することが困難な地域において、それらに相当するサービスを利用した場合の支給を定めています。過疎地域や離島にお住まいで通常の事業者が近くにない場合に、この仕組みが使われることがあります。いずれも市町村が個別に判断する部分が大きいため、利用を決める前の相談が前提になります。
住宅改修費・福祉用具購入費の償還払い
償還払いで最も相談が多いのが、住宅改修費と福祉用具購入費です。どちらもまとまった金額が動くうえ、事前申請や事業者の要件など独自のルールがあり、知らずに進めると支給が受けられなくなることがあります。
居宅介護住宅改修費(上限20万円)
手すりの取付けや段差の解消など、自宅の小規模な改修にかかった費用は、支給限度基準額20万円の範囲で7〜9割が支給されます。この20万円という上限は要介護度によらず一律で、要支援1の人も要介護5の人も同じです。自己負担が1割の人なら、保険給付は最大18万円、自己負担は2万円という計算になります。
20万円は一度で使い切る必要はなく、範囲内であれば複数回に分けて使えます。たとえば最初に玄関の手すりで8万円を使い、後日トイレの段差解消で12万円を使う、といった使い方が可能です。さらに、転居した場合は転居先の住宅について再び20万円まで、要介護状態区分が3段階以上重くなった場合は1回限り再び20万円まで利用できます(取扱いの細部は自治体によって異なるため保険者に確認してください)。対象工事の種類や再支給の条件については介護保険の住宅改修費を解説した記事で詳しく説明しています。
支払いの流れとしては、工事完了後に施工業者へ全額を支払い、領収書などを添えて市区町村へ支給申請を行います。20万円の工事なら、払い戻しが届くまでの間、20万円を家計から用意しておく必要があるということです。受領委任払いを実施している自治体では自己負担分だけの支払いで済みますが、これは全国共通の仕組みではありません。
ここで、いちばん気になる「結局いくら戻るのか」を具体的に見ておきましょう。20万円の枠をちょうど使い切った場合の内訳は、負担割合ごとに次のようになります。これは20万円に負担割合を掛けただけの単純な計算です。
| 負担割合 | あとから戻る保険給付分 | 最終的な自己負担 |
|---|---|---|
| 1割 | 18万円 | 2万円 |
| 2割 | 16万円 | 4万円 |
| 3割 | 14万円 | 6万円 |
注意したいのは、支給限度基準額を超えた分は戻らないという点です。たとえば50万円の工事をした場合でも、保険の対象になるのは20万円分までです。1割負担の方なら戻ってくるのは18万円で、枠を超えた30万円と枠内の自己負担2万円を合わせた32万円は自分で負担することになります(50万円−18万円=32万円)。「工事費の9割が戻る」と考えていると見込みが大きく狂うため、見積もりの段階で20万円を超える部分がいくらあるのかを確認しておいてください。
特定福祉用具販売(年間10万円)
入浴や排泄に使う福祉用具のうち、貸与になじまないものは購入が対象となり、これを特定福祉用具販売といいます。支給限度基準額は原則として年間10万円で、4月1日から翌年3月31日までの年度単位で管理されます。東京都江東区は、介護度にかかわらず1人あたりの支給限度額は同じ年度内(4月から翌年3月まで)で10万円だと案内しています。
住宅改修費が「原則として一人あたり20万円の枠(転居した場合や要介護状態区分が3段階以上上がった場合は、再度20万円まで利用できます)」であるのに対し、福祉用具購入費は毎年度リセットされる点が大きな違いです。
年度内に10万円を超えて購入した場合、超えた分は保険の対象外となり全額が自己負担になります。10万円の枠をちょうど使い切った場合、1割負担の方なら9万円が戻り、自己負担は1万円です。年度末が近いときは、購入を今年度中にするか翌年度に回すかで枠の使い方が変わりますので、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員と相談しながら決めてください。
対象となる用具は次の6品目です。
- 腰掛便座
- 自動排泄処理装置の交換可能部品
- 排泄予測支援機器(令和4年4月から追加)
- 入浴補助用具
- 簡易浴槽
- 移動用リフトのつり具部分
さらに令和6年4月からは、スロープ、歩行器、歩行補助つえについて、貸与と購入のどちらかを選べる選択制が導入されました。選択制の対象品目は、本人の状態や使用見込み期間を踏まえてケアマネジャーや福祉用具専門相談員と相談しながら決めることになります。
重要な注意点として、都道府県等の指定を受けていない事業者から購入した場合は支給対象外になります。千葉県船橋市は、都道府県等の指定を受けていない事業者から購入した福祉用具は支給対象にならないと案内しています。インターネット通販や一般の量販店で同じ商品を安く見つけたとしても、指定事業者からの購入でなければ1円も戻ってきません。購入前に、その事業者が特定福祉用具販売の指定を受けているかを確かめておくことが、無駄な出費を防ぐ最大のポイントです。福祉用具の区分や選び方については特定福祉用具販売を解説した記事もあわせてご覧ください。
住宅改修は着工前の事前申請が必須
「工事が終わってから申請できると思っていた」というのは、住宅改修で最も多い失敗です。住宅改修費は、工事に着手する前に市区町村へ事前申請を行い、内容の確認を受けたうえで着工しなければなりません。神奈川県大和市は、着工許可なしに工事された場合は介護給付の対象外になると明記しています。
順序としては、次の流れになります。
- ケアマネジャー等に相談して「住宅改修が必要な理由書」を作ってもらう
- 市区町村へ事前申請して確認を受ける
- 着工する
- 完成後に費用を全額支払い、支給申請をする
理由書は着工前でなければ意味をなさないため、業者に見積もりを頼むのと同じタイミングでケアマネジャーにも声をかけておくのが安全です。必要な書類は申請方法の章でまとめます。
写真は工事前と工事後の両方が求められます。施工前後で同じ位置・同じ角度から撮っておくと確認がスムーズなので、着工前に「この角度で撮っておいてください」と業者に伝えておいてください。
また、大和市は、事前申請した内容から工事内容を変更した場合は市への連絡と変更申請が必要としています。取扱いは自治体によって異なりますが、「壁の状態を見たら手すりの位置を変えることになった」というような現場でよくある変更でも、届け出ずに進めると支給されない部分が出るおそれがあります。工事中に業者から変更の相談があったら、その場で了承する前に一度ケアマネジャーへ連絡を入れる、と決めておくと安全です。
高額介護サービス費・合算療養費の償還払い
介護サービスの自己負担が重くなりすぎないよう、月ごと・年ごとに上限を設けて超過分を払い戻す仕組みがあります。これも償還払いの一種で、申請しなければ受け取れません。
高額介護サービス費の所得区分別の上限額
高額介護サービス費は、介護保険法第51条にもとづき、1か月の自己負担額が所得区分ごとに定められた上限を超えたときに、その超過分が払い戻される制度です。令和3年8月の利用分から適用されている現行の上限額は次のとおりです。
| 区分 | 1か月の負担上限額 |
|---|---|
| 課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 | 140,100円(世帯) |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 93,000円(世帯) |
| 市町村民税課税〜課税所得380万円未満 | 44,400円(世帯) |
| 世帯全員が市町村民税非課税 | 24,600円(世帯) |
| 上記のうち公的年金等収入額+その他の合計所得金額が80万円以下の方等 | 24,600円(世帯)/15,000円(個人) |
| 生活保護受給者等 | 15,000円(世帯) |
「世帯」と書かれている上限は、同じ世帯にいる介護保険の利用者全員の自己負担を合計して判定します。夫婦ともに介護サービスを利用している場合は、二人分を合算して上限を超えた分が払い戻される、と考えてください。「個人」の上限は、本人一人分の自己負担に適用されます。
対象になるのは介護サービスの自己負担分です。東京都江東区は、福祉用具購入費、住宅改修費の自己負担額や、施設での食費、居住費(滞在費)、日常生活費等その他の利用料は含まれないと案内しています。「支払った金額すべてが上限で頭打ちになる」わけではない点に注意してください。
なお、所得区分や上限額は政令改正によって見直されることがあります(現行の額は令和3年8月の利用分からのものです)。最新の上限額は、保険者である市区町村の案内で確認してください。実際の適用区分は、課税状況をもとに保険者が判定します。自分で計算して請求するものではなく、該当すれば市区町村から申請書が届く運用が一般的です。
高額医療・高額介護合算療養費制度
医療費と介護費の両方がかさむ世帯のための仕組みが、高額医療・高額介護合算療養費制度です。毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間に支払った医療保険と介護保険の自己負担を合算し、定められた限度額を超えた場合に、その超過額が支給されます。名古屋市は、超過額が501円以上の場合に支給されると案内しています。
申請先は、基準日である7月31日時点で加入している医療保険者になります。国民健康保険なら市区町村の国保担当課、後期高齢者医療制度なら後期高齢者医療広域連合(窓口は市区町村)、被用者保険なら健康保険組合や協会けんぽです。介護保険の担当課だけに問い合わせて終わりにせず、医療保険側の窓口も確認する必要があります。
「病院に長く入院していた年に、並行して親がデイサービスを使っていた」といった世帯では、医療と介護のそれぞれでは上限に届かなくても、合算すると支給対象になることがあります。年単位で判定する制度なので気づきにくく、見落とされやすい給付です。
一度申請すれば以降は自動振込になる自治体が多い
高額介護サービス費は、利用者が自分で計算して請求するのではなく、市区町村が給付実績から該当者を把握し、申請書を送付する運用が一般的です。東京都江東区の例では、サービスを利用した月のおおむね3か月後に区から申請書が届きます。
そして多くの自治体では、一度申請して振込口座を登録すれば、以降は該当するたびに同じ口座へ自動的に振り込まれます。毎月申請書を書く必要はありません。ただし、口座を解約した場合や世帯構成・所得区分が変わった場合は、あらためて届出が必要になることがあります。
逆に言えば、最初の1回の申請書を出し忘れると、そのまま何年も受け取れないままになってしまいます。市区町村から届いた封書を「よく分からない書類」として放置しないことが大切です。手続きが不安な場合は、担当のケアマネジャーや市区町村の介護保険担当課に相談してください。
負担限度額認定証・被保険者証の提示忘れによる償還払い
制度上は現物給付で済むはずのサービスでも、証明書を出し忘れただけで10割を請求されることがあります。慌てて支払った後でも払い戻しの道は残されていますが、全額が戻るとは限りません。
被保険者証・負担割合証を出さずに10割払ったとき
介護保険のサービスを利用するときは、介護保険被保険者証と介護保険負担割合証を事業者に提示します。提示がないと、事業者は保険給付分を市区町村に請求できません。その結果、その場では利用者が費用の全額(10割)を支払うことになります。事業者が意地悪をしているわけではなく、請求のしようがないというだけの話です。
よくあるのは、引っ越し直後や認定を受けたばかりで証書が手元にない場合、あるいは急な入院・退院でサービス事業者が変わった場合です。この場合でも、後から市区町村へ申請すれば保険給付分の払い戻しを受けられます。10割分の領収書と、事業者が発行するサービス提供証明書が必要になるため、その場で「後から申請するので証明書をください」と伝えておくとスムーズです。
負担限度額認定証を提示できなかったとき
施設に入所したりショートステイを利用したりする際、所得が一定以下の方は「介護保険負担限度額認定証」の交付を受けることで、居住費と食費の負担が軽減されます。この認定証を施設に提示することで、軽減後の額で支払えるようになります。
やむを得ない事情で認定証を提示できず、軽減前の額を支払ってしまった場合には、特定入所者介護サービス費として差額の償還を受けられる場合があります。ただし、国が定める基準費用額(次の項目で説明します)以下で支払った場合に限られるという条件があります。認定証が届く前にショートステイを利用してしまった、というような場面が典型例です。
払い戻されない部分があることに注意
ここで押さえておきたいのは、提示忘れの償還は「払った分が丸ごと戻る」ものではないという点です。横浜市は、施設が独自に設定した居住費・食費が国の基準費用額(国が「施設の食費・部屋代はこのくらい」と定めた標準額のことです)を超えていた場合、その超過分は返金されないと案内しています。
つまり、施設の設定額が国の基準費用額より高ければ、その差は利用者の負担として残ります。自分が入る施設の食費・居住費が基準費用額とどれくらい違うのかは、施設の重要事項説明書に記載された料金や、市区町村の窓口で確認できます。認定証は交付されたら速やかに施設へ提示し、提示できない事情があるときは、その時点で施設に事情を伝えておくことが、余計な負担を避ける確実な方法です。
保険料の滞納による償還払い化(給付制限)
ここまでは制度の設計や手続き上の行き違いによる償還払いでしたが、保険料の滞納を理由とする償還払いは性質が異なります。段階的に不利益が重くなり、最終的には自己負担割合そのものが引き上げられます。東京都荒川区は、この3つの段階を保険料の滞納期間に応じた給付制限として案内しています。
1年以上の滞納で支払方法が変更される
介護保険料を1年以上滞納すると、介護保険法第66条にもとづき支払方法の変更が行われます。被保険者証にその旨が記載され、法定代理受領の規定が適用されなくなるため、サービスを利用するたびに費用の全額(10割)をいったん支払うことになります。
支払った後に市区町村へ申請すれば保険給付分は払い戻されますが、毎回の窓口負担が数倍に膨らむため、利用を控えざるを得なくなる方もいます。必要な介護を受けられなくなる前に、納付が難しい事情があるなら早めに市区町村へ相談することが大切です。保険料の納付が困難なときの取扱いや減免については介護保険料の滞納と給付制限を解説した記事で詳しく説明しています。
1年6か月以上で給付が一時差し止めになる
滞納が1年6か月以上に及ぶと、保険給付の全部または一部が一時的に差し止められます。この段階になると、10割を支払って申請しても払い戻しが止められるため、自己負担が実質的に全額のまま据え置かれます。
さらに、差し止められた給付費から、滞納している保険料が差し引かれることがあります。つまり、本来は利用者の口座に振り込まれるはずだったお金が、滞納分の支払いに充てられるということです。神戸市も、保険料の滞納があると償還払いの支給が一時差し止めになる場合があると案内しています。滞納と償還払いが重なると、いつまでも手元に払い戻しが戻ってこない状態になりうる、ということです。
保険料の納付期限から2年が過ぎると自己負担割合が引き上げられる
はじめにお断りしておくと、ここでいう2年は、保険料を納める側の時効の話です。あとの章で説明する「払い戻しを受ける権利の2年の時効」とはまったく別のものですので、混同しないようにしてください。
最も重い段階が、納付期限から2年が過ぎて時効により納付できなくなった保険料の期間がある場合です。この場合、利用者負担の割合が3割に引き上げられます。もともと3割負担の人は4割になります。加えて、この期間中は高額介護サービス費等も支給されません。
保険料は納付できる期間そのものに期限があるため、「後でまとめて払えばよい」と考えていると、払いたくても払えない状態になり、負担引き上げが確定してしまいます。年金からの天引き(特別徴収)ではなく納付書で納めている方は特に、納め忘れがないか確認してください。事情があって納付が難しい場合、減免や分割納付の相談に応じる自治体もあります。取扱いは自治体ごとに異なるため、早い段階で保険者である市区町村の窓口へ相談することが重要です。
償還払いの申請方法と必要書類
償還払いは申請して初めて支給されます。どこに、何を持って行けばよいのかを、給付の種類ごとに整理します。書類が一つでも欠けると受け付けてもらえないことがあるため、事前の確認が肝心です。
申請先は保険者である市区町村
申請先は、保険者であるお住まいの市区町村です。窓口は市役所・区役所・町村役場の介護保険担当課になります。サービスを提供した事業者や施設ではないという点を押さえておいてください。
注意が必要なのは住所地特例に該当する場合です。他の市区町村にある施設へ入所して住民票を移していても、保険者は元の市区町村のままなので、申請先も元の保険者になります。郵送での受付が可能かどうかは自治体によって異なるため、遠方の場合は事前に電話で確認すると無駄足を避けられます。
一般的な償還払いに必要な書類
被保険者証の提示忘れや認定申請中の利用など、一般的な償還払いで求められる書類は次のとおりです。
| 書類 | ポイント |
|---|---|
| 支給申請書 | 市区町村の様式。窓口またはホームページで入手する |
| 10割分の領収書 | 原本の提出を求められる。コピー不可の自治体がある |
| サービス提供証明書 | 事業者印のあるもの。居宅介護支援提供証明書が必要な場合もある |
| 介護保険被保険者証 | 本人の資格確認のため |
| 振込先口座がわかるもの | 通帳やキャッシュカードの写しなど |
| 委任状 | 代理人が申請する場合や、本人以外の口座に振り込む場合 |
サービス提供証明書は、事業者に依頼しないと発行されません。10割を支払った時点で「償還払いの申請に使うので証明書をお願いします」と伝えておくと、後から連絡を取り直す手間が省けます。大分市は、10割分の領収書とサービス提供証明書が揃わないと申請できないと明記しています。
住宅改修・福祉用具購入で追加される書類
住宅改修では、提出する書類が着工前の事前申請と工事完了後の2段階に分かれます。
事前申請のときに出す書類
- 支給申請書
- ケアマネジャー等が作成する住宅改修が必要な理由書
- 見積書・内訳書
- 日付入りの施工前写真
- 完成予定がわかる図面
- 賃貸住宅であれば所有者の承諾書
工事の完成後に出す書類
- 領収書
- 工事費内訳書
- 日付入りの施工後写真
福祉用具購入費では、次の書類が必要になります。
- 支給申請書
- 領収書
- 購入した用具の品目や型式がわかる書類
東京都江東区は、購入した福祉用具のパンフレット(金額や様式、製造事業所名等が記載されたもの)の提出を求めています。手元にパンフレットがない場合は販売事業者に依頼して取り寄せることになりますので、購入時に受け取っておくと後が楽です。
排泄予測支援機器を購入する場合は、追加の書類が必要です。江東区は、医学的所見が分かる書類(主治医意見書、サービス担当者会議等における医師の所見、居宅サービス計画等に記載された医師の所見、個別に取得した医師の診断書など)の提出を求めています。すでにある書類で足りることも多いため、新たに診断書を取る前に、どの書類で代用できるかをケアマネジャーに相談してください。また、指定を受けた事業者からの購入であることが支給の前提になるため、領収書の名義や事業所名も確認されます。
必要書類の細かな組み合わせや様式は自治体ごとに異なります。ここは実際に不支給や出し直しにつながる部分ですので、「隣の市ではこれで通った」という情報をそのまま当てはめず、必ずお住まいの市区町村の案内で必要書類を確認してください。
家族が代理で申請する場合
本人が入院中であったり、認知症で手続きが難しかったりする場合、家族が代理で申請することになります。この場合は委任状が必要になるのが一般的で、あわせて代理人の本人確認書類の提示を求められます。
振込先を本人以外の口座にする場合は、特に確認が厳しくなります。本人以外が手続きをする場合に必要な書類は自治体によって異なりますので、窓口へ出向く前に電話で聞いておくと、書類の不足で二度手間になるのを防げます。
実務上は、担当のケアマネジャーが書類の準備を手伝ってくれることが多くあります。ただし申請の主体はあくまで被保険者本人(または代理人)です。「ケアマネジャーが出してくれていると思っていた」という思い込みで期限を過ぎてしまうことがないよう、誰がいつ申請するのかを家族間で共有しておいてください。
支給までの期間と2年の消滅時効
申請してからお金が振り込まれるまでには時間がかかります。そして申請そのものにも期限があります。この二つを知らないまま進めると、資金繰りの計画が狂ったり、受け取る権利そのものを失ったりします。
支給までの期間は自治体によって幅がある
払い戻しまでの期間は自治体によって差があります。茨城県ひたちなか市は申請月の翌月末に支給すると案内しており、大阪市は申請月から約2〜3か月後としています。高額介護サービス費については、東京都江東区がサービス利用月の約3か月後に申請書を送付すると案内しており、そこからさらに審査と振込の期間がかかります。
この記事で挙げた自治体の案内をみると1〜3か月程度に収まっていますが、これは全国共通の基準ではありません。書類に不備があればさらに延びます。20万円の住宅改修を行った場合、18万円が戻るのは数か月先になる前提で家計の計画を立てておく必要があります。「工事代金を払ったらすぐ戻ってくる」と考えて生活費を切り詰めると、その数か月が苦しくなります。
保険給付を受ける権利は2年で時効消滅する
償還払いで最も怖いのが時効です。介護保険法第200条第1項は、保険給付を受ける権利について次のように定めています。
これらを行使することができる時から2年を経過したときは、時効によって消滅する
介護保険法第200条第1項
2年を過ぎれば、本来受け取れたはずの給付は受け取れなくなります。
「親の遺品を整理していたら、数年前の住宅改修の領収書が出てきた」というケースでは、すでに時効にかかっていて申請できないことがあります。制度上の救済は限られているため、領収書を受け取ったらできるだけ早く申請することが唯一の確実な対策です。
時効の起算日の考え方
では、2年はいつから数えるのでしょうか。自治体の説明を見ると、大阪市は「代金を完済した日(領収書記載の日付)の翌日から起算して2年」としており、大分市も「領収書に記載された領収日の翌日から2年以内」と案内しています。住宅改修や福祉用具購入では、支払いを終えた日が起点になると理解しておけばよいでしょう。
ただし、給付の種類によって起算日の考え方が変わることがあります。分割払いにした場合や、工事が年度をまたいだ場合など、判断が難しいケースもあります。
時効は一度完成すると取り返しがつきません。自分のケースで起算日がいつになるのかは自己判断せず、必ず保険者である市区町村の介護保険担当課に確認してください。期限が迫っている場合は、書類が完全に揃っていなくても、まずは窓口に相談してください。
受領委任払いとの違い
「いったん全額を立て替えるのは難しい」という声に応えて、一部の市町村が用意しているのが受領委任払いです。償還払いとの違いと、利用にあたっての条件を整理します。
受領委任払いの仕組み
受領委任払いは、利用者が自己負担分(1〜3割)だけを事業者に支払い、残りの7〜9割は利用者の委任にもとづいて市町村が事業者へ直接支払う方法です。利用者が保険給付分を立て替える必要がなくなるため、まとまった現金を用意できない場合でも住宅改修や福祉用具の購入がしやすくなります。
| 比較項目 | 償還払い | 受領委任払い |
|---|---|---|
| 最初に支払う額 | 費用の全額(10割) | 自己負担分のみ(1〜3割) |
| 保険給付分の流れ | 市町村から利用者へ払い戻し | 市町村から事業者へ直接支払い |
| 最終的な自己負担 | 1〜3割 | 1〜3割(同じ) |
| 実施の有無 | 全国共通の仕組み | 市町村の任意事業。実施していない自治体もある |
| 事業者の要件 | 指定事業者であること等 | 加えて市町村への登録・届出が必要 |
最終的な自己負担額はどちらでも変わりません。違うのは「一時的にいくら用意する必要があるか」です。20万円の住宅改修で1割負担の方なら、償還払いでは20万円、受領委任払いでは2万円を用意すればよい計算になります。
いったん全額を用意するのが難しい場合は、一人で抱え込まずに、受領委任払いが使えるかどうかを含めて市区町村の介護保険担当課や地域包括支援センターに早めに相談してください。工事や購入を決めてしまう前に相談したほうが、選べる方法は多く残ります。
全国一律の制度ではなく市町村の任意事業
ここが最も誤解されやすい点です。受領委任払いは全国一律の制度ではなく、市町村が任意で実施している事業です。実施していない自治体もありますし、実施していても対象を住宅改修だけに限っている場合、福祉用具購入も含めている場合など、範囲はさまざまです。
さらに、利用できるのは市町村に登録(届出)した事業者が施工・販売した場合に限られます。事業者側の登録要件も自治体ごとに異なり、さいたま市は市主催の説明会を受講したうえで届出書と誓約書を提出すること、福祉用具については指定販売事業者であることを求めています。東京都新宿区は、過去1年以内に介護保険の対象工事の実績があり、対象工事の内容に十分な知識があることを要件としています。静岡県富士宮市も市への事業者登録を前提としています。
したがって「受領委任払いを使いたい」と思っても、依頼したい業者が登録していなければ利用できません。見積もりを取る段階で、その業者が市町村の受領委任払いの登録事業者かどうかを業者本人に尋ねておくと、あとから「使えなかった」と分かる事態を避けられます。
受領委任払いを利用できないケース
利用者側にも条件があります。東京都板橋区は次の場合を受領委任払いの対象外としています。
- 介護保険法第66条第1項による支払方法変更の記載を受けている人(保険料を滞納して償還払いに切り替えられている人)
- 入院・入所中の人
- 要介護認定の申請中や区分変更申請中の人
- 転居前の住宅
1つ目は、給付制限の趣旨からすれば当然の扱いです。それ以外はいずれも、支給の可否や支給額が確定していない段階であることが理由です。
これらの条件は自治体ごとに異なります。「同じ都内だから同じはず」といった推測は禁物で、必ず保険者である市区町村の案内を確認してください。
「法定代理受領」との混同に注意
受領委任払いと似た言葉に「法定代理受領」があります。名前は似ていますが、次のように中身は別ものです。
| 比較項目 | 法定代理受領 | 受領委任払い |
|---|---|---|
| 根拠 | 法律(介護保険法第41条第6項)にもとづく全国一律の仕組み | 市町村の任意事業。実施していない自治体もある |
| 使える事業者 | 指定事業者であれば当然に働く | 市町村に登録した事業者に限られる |
| 利用者の手続き | 不要。自動的に働く | 利用者からの申し出が必要 |
「うちの市は受領委任払いをやっていない」と言われても、デイサービスなどの窓口負担が1〜3割で済むことに変わりはありません。両者を混同すると不安になりやすいので、別のものだと切り分けておいてください。
償還払いでよくある失敗と注意点
最後に、自治体が実際に注意喚起している内容をもとに、つまずきやすいポイントをまとめます。いずれも「知っていれば防げた」類のものばかりです。
事前申請を忘れて工事を始めてしまう
住宅改修で最も多い失敗が、事前申請をせずに着工してしまうことです。大和市は、着工許可なしに工事された場合は介護給付の対象外になると明記しており、工事内容を変更した場合も市への連絡と変更申請が必要としています。
あわせて大和市は、対象となる工事の範囲について次の点を案内しています。
- 対象になるのは申請者(被保険者本人)名義の工事に限られる
- 住民票上の住所地の家屋のみが対象で、近親者宅や別所有の物件は対象外
- 親族が自ら施工した場合は材料費のみの支給となり、その場合も材料購入前に事前申請が必要
- 老朽化や破損が原因の修繕、資産形成を目的とした新築・増改築、趣味や仕事のための改修は対象外
「ついでにここも直してもらおう」という発想が、支給対象外の工事を紛れ込ませる原因になります。
領収書は原本が必要で再発行されないことがある
大分市は、償還払いの申請にあたって領収書の原本提出を求めており、10割分の領収書とサービス提供証明書が揃わないと申請できないとしています。領収書は一般に再発行されないことがあるため、紛失は致命的です。
支払いを終えたら、領収書は他の書類とまとめて一か所に保管してください。確定申告の医療費控除などで領収書を使う予定がある場合は、原本を提出する前に窓口へ相談し、写しの扱いをどうするか確認しておくと安心です。この点も自治体によって運用が異なります。
認定申請中に使って非該当になると全額自己負担
要介護認定の申請中でも、暫定のケアプランを作ってサービスを利用することができます。認定の効力は申請日にさかのぼるため、認定されれば償還払いで保険給付分を受け取れます。
ただし、東京都中央区が注意喚起しているとおり、判定の結果が非該当(自立)になった場合は全額自己負担になります。暫定ケアプランでサービスを使い始めるときは、非該当となる可能性もあることを家族で共有し、その場合にいくらの支払いが生じるのかをあらかじめ確認しておいてください。
最終的な判断は保険者である市区町村に確認する
この記事で繰り返し触れてきたとおり、受領委任払いを実施しているかどうか、支給までにどのくらいかかるか、必要書類は何か、時効の起算日をどう扱うかといった点は、いずれも市区町村(保険者)ごとに異なります。インターネット上の情報や他の自治体の案内をそのまま自分のケースに当てはめると、思わぬ食い違いが生じます。
加えて、介護保険は3年ごとに見直される制度です。現在の第9期は令和6〜8年度(2024〜2026年度)で、次期(第10期)は令和9年度(2027年度)から始まります。この記事で示した金額や取り扱いも、今後の改定で変わる可能性があります。
手続きを進める前に、必ずお住まいの市区町村の介護保険担当課に確認してください。担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談すれば、窓口とのやり取りを含めて支援を受けられます。
償還払いと言われたら、まずやること
「全額を払ってください」と言われて戸惑ったときに、その日から動ける順番にまとめます。
- 領収書を原本のまま保管する…申請では原本の提出を求められることが多くあります。捨てたり折り込みチラシと一緒にしたりせず、専用の封筒にまとめてください。念のため、手元にコピーを取っておくと安心です。
- 担当のケアマネジャーに「償還払いの申請をしたい」と伝える…書類の準備を手伝ってもらえることが多くあります。住宅改修は着工前に理由書を作ってもらう必要があるため、工事の前に相談してください。
- 市区町村の介護保険担当課に電話する…聞くことは3点だけです。「必要な書類」「受領委任払いが使えるか」「申請の期限(時効の起算日)」。これらは自治体によって扱いが違うため、電話で先に確かめておくと窓口での無駄足を防げます。
- 申請書を入手して提出する…申請書は窓口か市区町村のホームページで入手できます。領収書、被保険者証、振込先口座がわかるものを添えて提出します。代理で出す場合は委任状も必要です。
急ぐ理由は一つです。保険給付を受ける権利は2年で時効消滅します。領収書を受け取った日が起点になることが多いため、「落ち着いてから」と後回しにせず、支払いを終えたその月のうちに動き出してください。
まとめ
- 償還払いは、費用の全額(10割)をいったん立て替え、後から市区町村へ申請して7〜9割の払い戻しを受ける仕組みです。介護保険法第41条第4項の条文上はこちらが原則で、普段の1〜3割負担は法定代理受領(同条第6項)によって実現している例外的な形です。
- 償還払いになるのは、住宅改修費(上限20万円)・福祉用具購入費(年間10万円)・高額介護サービス費・合算療養費のように制度上そう決まっているもの、被保険者証や負担限度額認定証の提示忘れなど手続きの行き違いによるもの、保険料の滞納による給付制限(介護保険法第66条)の三つに大きく分かれます。
- 申請先は保険者である市区町村で、支給申請書・10割分の領収書(原本)・サービス提供証明書・被保険者証・振込先口座がわかるものなどが必要です。住宅改修は着工前の事前申請が必須で、工事を先に始めてしまうと支給されません。
- 保険給付を受ける権利は、介護保険法第200条第1項により2年で時効消滅します。起算日は領収日の翌日とする自治体が多い一方、給付の種類によって扱いが異なります。支給までの期間も、この記事で挙げた自治体の案内では1〜3か月程度ですが全国共通の基準ではないため、領収書を受け取ったらできるだけ早く申請してください。
- 立て替えが不要になる受領委任払いは全国一律の制度ではなく市町村の任意事業で、市町村に登録した事業者を利用した場合に限られます。全額を用意するのが難しいときは、工事や購入を決める前に相談してください。
- 介護保険は3年ごとに見直され、次期(第10期)は令和9年度(2027年度)から始まります。この記事で示した金額や取り扱いも改定で変わる可能性があるため、最終的な取扱いはお住まいの市区町村の介護保険担当課で確認してください。