社会福祉主事任用資格とは|4つの取得方法と生活相談員の要件を解説

目次

社会福祉主事任用資格は、福祉事務所のケースワーカーや、特別養護老人ホーム・養護老人ホームの生活相談員として働くために必要となることが多い資格です。社会福祉士のような国家試験はなく、社会福祉法第19条が定める要件のいずれかを満たすことで得られます。この記事では、取得方法の4つのルート、生活相談員として認められる要件、そして自治体によって解釈が分かれている実態について、公的資料にもとづいて整理します。

社会福祉主事任用資格とは何か

社会福祉法第19条に基づく任用資格

社会福祉主事は、社会福祉法第19条で「年齢20年以上の者であって、人格が高潔で、思慮が円熟し、社会福祉の増進に熱意があり」、かつ同条各号のいずれかに該当する者のうちから任用される、と定められています。社会福祉法第18条では、都道府県および市(特別区を含む)は福祉事務所に社会福祉主事を置かなければならないとされており、町村も福祉事務所を設置する場合は同様です。社会福祉主事は都道府県・市町村の事務吏員または技術吏員であることが前提とされている点も特徴です。

「資格試験」ではなく「任用されて効力を持つ」資格

社会福祉主事任用資格は、名称に「任用」とあるとおり、試験に合格して得る資格ではありません。社会福祉法第19条第1項各号のいずれかの要件を満たした人が、福祉事務所や生活相談員などの特定の職に実際に任用されて初めて、資格としての意味を持ちます。社会福祉士のような合格証や免許証は発行されません。そのため「社会福祉主事任用資格を持っている」という表現は、正確には「社会福祉主事に任用され得る要件を満たしている」ことを指し、任用されていなければ実務上の効力は生じません(社会福祉法第19条)。

社会福祉主事任用資格を取得する4つのルート

社会福祉法第19条第1項各号は、社会福祉主事に任用できる者の要件を複数列挙しています。主なルートは次の4つです。

図:社会福祉主事任用資格の主な取得ルート4種(社会福祉法第19条第1項各号・社会福祉法施行規則第1条の2にもとづく整理)

①大学等で指定科目を3科目以上履修して卒業

1つ目のルートは、学校教育法に基づく大学等で、厚生労働大臣が指定する社会福祉に関する科目のうち3科目以上を履修して卒業することです(社会福祉法第19条第1項第1号)。指定される科目は昭和25年厚生省告示第226号によって定められています。

②厚生労働大臣指定の養成機関・講習会の課程を修了

大学以外の道として、厚生労働大臣が指定する養成機関または講習会の課程を修了する方法もあります(社会福祉法第19条第1項第2号)。都道府県等が実施する社会福祉主事資格認定講習会がこれにあたります。たとえば東京都福祉局は、都道府県・区市町村等の社会福祉事業従事職員を対象とした社会福祉主事資格認定通信課程(集合研修を含む通信教育)を実施しています。講習会の日数や費用は実施主体によって異なるため、受講を検討する場合は該当の講習会を実施する自治体に直接確認する必要があります。

③社会福祉士の資格を持つ

社会福祉士の資格を持っていれば、この要件は自動的にクリアされます(社会福祉法第19条第1項第3号)。社会福祉士は国家試験に合格して得る国家資格であり、取得していれば社会福祉主事任用資格の要件も自動的に満たすことになります。社会福祉士とは何かについては別記事で詳しく解説しています。なお、この関係は一方向であり、社会福祉主事任用資格を持っているからといって社会福祉士の資格を得られるわけではありません。

④その他のルート(事業従事者試験・精神保健福祉士等)

このほか、厚生労働大臣が指定する社会福祉事業従事者試験の合格者も要件に含まれます(社会福祉法第19条第1項第4号)。ただし、今回確認した公的資料の範囲ではこの試験の近年の実施状況を裏付ける記述は見つかっておらず、現在も実施されているかどうかは所管窓口に確認が必要です。また社会福祉法施行規則第1条の2により、精神保健福祉士の資格を持つ者、および社会福祉に関する指定科目を修めて大学院への入学を認められた者も、社会福祉主事に任用され得る者として定められています。

指定科目3科目とは何を指すか

昭和25年厚生省告示第226号による指定

大学等での履修ルートにおける「指定科目」は、昭和25年8月29日厚生省告示第226号によって定められています。社会福祉学や社会保障論、老人福祉論、児童福祉論など、社会福祉に関連する複数の科目が列挙されており、このうち3科目以上を履修して卒業することが要件です。具体的な科目名は厚生労働省の告示原文で確認できます。

入学時期によって対象科目リストが異なる点

指定科目の一覧は制度の改正に伴い見直されており、平成12年4月1日以降に大学等へ入学した場合と、それより前に入学した場合とで、対象となる科目の範囲が異なります。目安として、平成12年4月以降入学者は34科目、それ以前の入学者は32〜33科目の中から選択する形になっています。自分が履修した科目が指定科目に該当するかどうかは、卒業した大学の成績証明書やシラバスと、厚生労働省の告示内容を照らし合わせて確認する必要があります。判断に迷う場合は、任用を希望する福祉事務所や施設の設置者(自治体)に直接問い合わせることが確実です。

社会福祉主事任用資格でできる仕事

福祉事務所のケースワーカー・査察指導員

社会福祉主事任用資格が想定する典型的な職務は、福祉事務所の現業員(いわゆるケースワーカー)と査察指導員です。社会福祉法第18条により福祉事務所には社会福祉主事を置くことが義務づけられており、生活保護の相談・調査や、高齢者・障害者・児童等に関する福祉業務を担う職員として任用されます。

特養・養護老人ホームの生活相談員

もう一つの代表的な職務が、特別養護老人ホームや養護老人ホームの生活相談員です。特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第46号)第5条第2項、および養護老人ホームの設備及び運営に関する基準(昭和41年厚生省令第19号)第5条第2項は、生活相談員の要件として、社会福祉法第19条第1項各号のいずれかに該当する者、またはこれと同等以上の能力を有すると認められる者、と定めています。生活相談員の仕事内容については別記事で解説していますので、あわせて確認してください。

生活相談員の配置基準と「同等以上の能力」の自治体解釈の違い

運営基準の条文と厚生省通達の定義

前述のとおり、特養・養護老人ホームの運営基準は、生活相談員の要件を「社会福祉法第19条第1項各号のいずれかに該当する者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる者」としています。この「同等以上の能力」について、厚生省老人保健福祉局長通達(平成12年3月17日老発第214号)は、「社会福祉施設等に勤務し又は勤務したことのある者等であって適切な相談、援助等を行う能力を有すると認められる者」と定義しています。つまり、社会福祉主事任用資格そのものを持っていなくても、実務経験等をもとに自治体が「同等以上の能力」を認めれば、生活相談員として配置できる余地がある、という構造になっています。

介護福祉士・介護支援専門員を認めるかは自治体で分かれる

ここが実務上もっとも注意すべき点です。総務省行政評価局が実施した調査(平成25年時点)によると、介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)を「同等以上の能力を有する者」として認めるかどうかは、自治体によって取り扱いが分かれています。調査対象となった一部の自治体では、介護福祉士や介護支援専門員の資格だけでは「同等以上の能力」と認めず、該当する職員に対して社会福祉士や社会福祉主事任用資格を別途取得するよう求めていました。この結果、事業者側に通信教育等の費用負担(後述する8万〜30万円程度)が生じている実態が指摘されています。総務省はこの調査結果を踏まえ、厚生労働省に対して通達の趣旨を自治体へ周知徹底するよう求めています。厚生労働省による全国一律の統一基準が示されているわけではなく、解釈が自治体間で割れているという点自体が、公的な調査で確認されている事実です。介護福祉士の資格内容については別記事で解説しています。介護支援専門員(ケアマネジャー)についても同様に、資格自体の有無と「同等以上の能力」の認定は別問題である点に注意してください。

和歌山市の実務運用にみる独自の列挙例

自治体ごとの解釈の違いを示す一例として、和歌山市の実務資料では、生活相談員の「同等以上の能力を有する者」として次の6つの類型を独自に列挙して運用しています。

  • 社会福祉主事任用資格を有する者
  • 社会福祉士
  • 精神保健福祉士
  • 介護福祉士
  • 介護支援専門員(ケアマネジャー)
  • 介護業務の実務経験1年以上

このように、法令上の「同等以上の能力」という抽象的な文言を、各自治体が独自の基準に落とし込んで運用しているのが実態です。同じ資格・経験を持っていても、勤務先(または就職を希望する施設)が所在する自治体によって、生活相談員として認められるかどうかの判断が異なる可能性があるため、就職・転職の前に必ず該当自治体または施設に直接確認することが重要です。

社会福祉士・介護福祉士との違い

国家資格か任用資格かの違い

社会福祉士は国家試験に合格して得る国家資格です。一方、社会福祉主事任用資格は試験を伴わない「任用資格」であり、社会福祉法第19条の要件を満たしたうえで実際に該当する職に任用されなければ効力を持ちません。介護福祉士も国家資格ですが、社会福祉法第19条第1項各号には含まれていません。そのため介護福祉士の資格だけでは、社会福祉主事任用資格の要件を直接満たすことにはならず、前述のとおり生活相談員としての可否は自治体の「同等以上の能力」の解釈に委ねられます。

取得ルートの違い

社会福祉士は、指定の養成施設・大学等での学習を経て国家試験に合格する必要があり、受験資格自体にも複数のルートがあります。これに対して社会福祉主事任用資格は、大学での指定科目履修、養成機関・講習会の修了、社会福祉士資格の保有など、複数の入り口が用意されている点が特徴です。すでに社会福祉士資格を持っている場合は、あらためて社会福祉主事任用資格のための手続きを取る必要はありません(社会福祉法第19条第1項第3号)。

取得にかかる費用の目安

通信教育による取得の費用実例

取得にかかる期間・費用は、選ぶルートによって大きく異なるため、公的資料で確認できる限られた実例を紹介します。総務省行政評価局の報告書(平成25年時点の実態調査)には、特別養護老人ホームの職員が通信教育で社会福祉主事の任用資格を取得する予定であり、その費用が約8万円(事業者負担)であった事例が記載されています。別の事例では、社会福祉士資格を通信教育で取得する費用が約30万円(自己負担)であったことも報告されています。

期間・費用は取得ルートによって大きく異なる

これらはあくまで総務省の調査で確認できた個別の実例であり、通信教育の一般的な受講期間や費用の相場を示すものではありません。大学の通信教育部での指定科目履修や、都道府県等が実施する講習会の受講にかかる具体的な日数・費用については、公的な一次情報で確認できなかったため、この記事では断定的な数値を示しません。受講を検討する場合は、実施主体(大学や都道府県・自治体)に直接問い合わせて、最新の募集要項を確認してください。

社会福祉主事任用資格を取得する際の注意点

勤務先・希望先の自治体解釈を事前に確認する

ここまで見てきたとおり、生活相談員として働く場合、「同等以上の能力」の解釈が自治体によって異なるため、介護福祉士や介護支援専門員の資格があっても、勤務先の所在する自治体の運用次第では、別途社会福祉主事任用資格の取得を求められる可能性があります。就職・転職を検討する際は、応募先の施設または所在自治体の担当窓口に、生活相談員としての要件を事前に確認しておくことが実務上重要です。

自分の履修科目が指定科目に該当するか確認する

大学等での履修による取得を目指す場合、自分が履修した科目が指定科目(昭和25年厚生省告示第226号)に該当するかどうかを、成績証明書等をもとに確認する必要があります。入学時期によって対象科目のリストが異なるため、独力での判断が難しい場合は、卒業した大学の窓口や、任用を希望する自治体・施設に問い合わせることが確実です。

制度改定の可能性を踏まえて最新情報を確認する

社会福祉法や関連する省令・通達は、制度の見直しに伴い改正される可能性があります。この記事で紹介した指定科目の範囲、運営基準の条文、通達の内容は、記事作成時点で確認できた一次情報にもとづくものです。実際に資格取得や就職活動を進める際は、厚生労働省や該当自治体の最新の公表情報を必ず確認してください。

まとめ

  • 社会福祉主事任用資格は社会福祉法第19条に基づく任用資格であり、試験ではなく特定の職に任用されて初めて効力を持つ
  • 取得ルートは、大学等での指定科目3科目以上の履修、養成機関・講習会の修了、社会福祉士資格の保有など複数ある
  • 福祉事務所のケースワーカー・査察指導員や、特養・養護老人ホームの生活相談員として求められることが多い
  • 生活相談員の「同等以上の能力」の解釈は自治体によって異なり、介護福祉士・介護支援専門員を認めるかどうかも自治体差があるため、就職・転職前に必ず確認する
  • 取得にかかる期間・費用はルートによって大きく異なり、公的な一次情報で確認できた費用実例は8万円〜30万円程度と幅がある

この記事で扱った内容は、記事作成時点で確認できた公的な一次情報にもとづく一般的な解説です。制度は改正される可能性があるため、実際の手続きにあたっては厚生労働省や該当自治体の最新情報を必ず確認してください。かいごの窓の記事の見方についてはこのサイトの立ち位置もご覧ください。

よくある質問

社会福祉主事任用資格は国家資格ですか

国家資格ではありません。社会福祉法第19条が定める要件のいずれかを満たし、実際に福祉事務所や生活相談員等の職に任用されて初めて効力を持つ「任用資格」です。試験合格による資格取得ではないため、合格証等は発行されません。

介護福祉士の資格があれば生活相談員になれますか

介護福祉士は社会福祉法第19条第1項各号には含まれていないため、それだけでは要件を直接満たしません。運営基準は「同等以上の能力を有する者」も認めていますが、介護福祉士をこれに含めるかどうかは自治体によって解釈が分かれているため、就職・転職前に希望先の施設や所在自治体に確認する必要があります。

社会福祉士があれば社会福祉主事任用資格は自動的に得られますか

社会福祉法第19条第1項第3号により、社会福祉士の資格を持っていれば社会福祉主事任用資格の要件も満たします。改めて別の手続きを取る必要はありません。ただし逆に、社会福祉主事任用資格があっても社会福祉士の資格を得られるわけではありません。

取得にどのくらい費用がかかりますか

取得ルートによって大きく異なります。総務省行政評価局の調査では、通信教育で社会福祉主事の任用資格を取得した事例で約8万円(事業者負担)という実例が報告されています。大学等での履修や講習会受講の一般的な費用相場は公的資料で確認できていないため、実施主体に個別に確認してください。

大学で履修した科目が指定科目に該当するか自分で分かりますか

指定科目は昭和25年厚生省告示第226号で定められており、入学時期によって対象科目のリストが異なります。成績証明書と告示内容を照らし合わせて確認する必要があり、判断が難しい場合は卒業した大学や、任用を希望する自治体・施設の窓口に問い合わせることをすすめます。

生活相談員の要件は全国どこでも同じですか

同じではありません。特養・養護老人ホームの運営基準は「社会福祉法第19条第1項各号該当者又はこれと同等以上の能力を有する者」と定めていますが、「同等以上の能力」の具体的な範囲の解釈は自治体によって異なることが総務省の調査で確認されています。勤務先・希望先の自治体の運用を個別に確認することが重要です。

参考・出典

  1. 社会福祉主事の資格に関する科目指定(昭和25年8月29日厚生省告示第226号) (厚生労働省)
  2. 社会福祉主事資格認定講習会の指定基準等について(昭和45年04月01日社庶第69号) (厚生労働省)
  3. 調査結果報告書(養護老人ホーム及び特別養護老人ホームにおける生活相談員の資格要件) (総務省行政評価局)
  4. 生活相談員の資格要件について (和歌山市)
  5. 社会福祉主事の任用資格について (北九州市)
  6. 資格認定講習について (東京都福祉局)
  7. 養護老人ホームの設備及び運営に関する基準(昭和41年07月01日厚生省令第19号) (厚生労働省)