喀痰吸引等研修とは|第1号・第2号研修の違いと時間数・修了後の手続きを解説

喀痰吸引等研修は、介護職員が痰の吸引や経管栄養等の医療的ケアを行うための公的研修制度です。第1号から第3号までの違いと受講の流れを紹介します。

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目次

喀痰吸引等研修とは、介護職員等が痰の吸引や経管栄養といった医療的ケアを法的な手続きのもとで実施できるようになるための公的な研修制度です。2012年の法改正で創設され、実施できる行為の範囲によって第1号・第2号・第3号の3種類に分かれています。本記事では、研修の種類ごとの違いや時間数、修了後に必要な手続きまで、厚生労働省・自治体の公的資料にもとづいて解説します。

喀痰吸引等研修とは何か

まずは、喀痰吸引等研修がどのような制度で、なぜ生まれたのかを確認します。

研修の定義と対象となる医行為

痰の吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)や、経管栄養(胃ろう・腸ろうを通じた栄養注入、経鼻経管栄養)は、原則として医師や看護師などの医療職でなければ行うことができない医行為にあたります。喀痰吸引等研修は、こうした行為の一部を、一定の研修を修了し、都道府県知事の認定を受けた介護職員等に限って実施できるようにするための研修です。厚生労働省は「喀痰吸引等制度について」のページで、この制度の全体像を公開しています。喀痰吸引等研修で認められる行為は、喀痰吸引3行為と経管栄養2行為の範囲に限定されており、これら以外の医行為(注射や創傷処置など)まで介護職員が行えるようになるわけではない点にも注意が必要です。

2012年の法改正で創設された経緯

この制度は、社会福祉士及び介護福祉士法の改正(平成24年法律第72号)にもとづき、2012年(平成24年)4月1日に創設されました。それまで介護職員等が痰の吸引等を行う場面があっても法律上の明確な位置づけがなかったところに、研修修了と都道府県への登録という手続きを設けることで、実施できる根拠を整理したものです。この改正により、研修の修了・都道府県への登録・事業所側の登録という3つの手続きを経ることを前提に、介護職員等が特定の医行為を実施できる法的な枠組みが整えられました。

介護福祉士は平成28年4月1日から実施可能に

介護福祉士については、平成28年4月1日から喀痰吸引等の実施が法律上可能になりました。介護福祉士が喀痰吸引等を行う場合の具体的な手続きは、後述の「介護福祉士・実務者研修との関係」で詳しく説明します。介護福祉士の資格そのものについては介護福祉士とはの記事で解説しています。在宅や施設で医療的ケアを必要とする利用者に対応できる介護職員等が増えることは、看護職員が常時いない時間帯やサービスの現場において、利用者が安心して過ごせる体制を支えることにつながります。

研修の種類(第1号・第2号・第3号研修)の違い

対象者の範囲と実施できる行為の範囲によって、喀痰吸引等研修には第1号・第2号・第3号という3つの種類があります。

第1号研修

第1号研修は、不特定多数の対象者に対して喀痰吸引等を行うための研修です。修了すると、喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう又は腸ろう・経鼻経管栄養)の全ての行為を実施できるようになります。5つの行為すべてに対応できる、行為範囲が最も広い研修です。経管栄養についても、滴下型・半固形タイプのいずれの胃ろう・腸ろうにも対応できるのが、第1号研修修了者の特徴です。

第2号研修

第2号研修も第1号研修と同じく不特定多数の対象者向けの研修ですが、実施できる行為の範囲が一部異なります。具体的には、気管カニューレ内部の喀痰吸引と経鼻経管栄養を除いた行為のみが実施可能です。気管カニューレの管理や経鼻経管栄養にはより高度な観察・対応が求められるため、第1号研修より対象行為が絞られた研修体系になっています。そのため第2号研修は、気管カニューレを使用していない利用者や、経鼻経管栄養以外の方法で栄養管理を行っている利用者が多い現場で選ばれることが多い研修です。

第3号研修

第3号研修は、第1号・第2号研修とは対象者の考え方が異なり、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者等、特定の対象者に対してのみ喀痰吸引等を行うための研修です。厚生労働省の「第三号研修(特定の者対象)喀痰吸引等指導者マニュアル」によると、対象者一人ひとりの病状や体位、使用している医療機器等に応じた個別の手技を習得することに重点が置かれており、基本研修の講義時間も第1号・第2号研修より短く設定されています。第3号研修を修了した介護職員等が対応できるのは、あらかじめ研修の対象となった特定の利用者に限られる点が、不特定多数を対象とする第1号・第2号研修との大きな違いです。

行為範囲の違いを図で確認する

3つの研修で実施できる行為の範囲を整理すると、次の図のようになります。

行為 第1号研修 第2号研修 第3号研修 口腔内の喀痰吸引 ○ ○ △ 鼻腔内の喀痰吸引 ○ ○ △ 気管カニューレ内部の喀痰吸引 ○ × △ 胃ろう・腸ろうへの経管栄養 ○ ○ △ 経鼻経管栄養 ○ × △ ○=実施可能 ×=対象外 △=対象者の状態に応じて個別に習得

第1号研修はすべての行為が対象、第2号研修は気管カニューレ内部の喀痰吸引と経鼻経管栄養を除いた行為が対象です。第3号研修は対象者が特定されているため、その人に必要な行為を個別に習得します。

自分が希望する働き方や、勤務先で対応している利用者の状態に応じて、受講すべき研修の種類は変わってきます。勤務先や希望する就業先の状況を確認したうえで、どの研修を受講するか検討するとよいでしょう。

基本研修の内容と時間数

研修全体は、座学中心の「基本研修」と、実際に対象者に対して手技を行う「実地研修」の2段階で構成されています。まずは基本研修の内容と時間数を見ていきます。

講義(基本研修)の時間数

厚生労働省の事務連絡によると、第1号研修・第2号研修の基本研修のうち講義部分は50時間と定められています。喀痰吸引や経管栄養の基礎知識、高齢者及び障害児・者の「療養」の理解、経管栄養や喀痰吸引の実施手順など、複数の科目に分けてカリキュラムが組まれています。

演習の内容と時間数の考え方

基本研修には講義に加えて、シミュレーター(モデル人形)等を用いた演習も含まれます。演習の具体的な時間数について、厚生労働省の一次資料には明確な時間数の定めが確認できませんでした。青森県の案内では、演習を含めた基本研修全体の実施日数の目安として「2日間程度」という運用上の表現が使われていますが、これはあくまで一部の自治体・研修機関における運用の例であり、全国一律の基準ではない点に注意が必要です。演習の実施方法や日程は、申し込みを検討している登録研修機関に直接確認しておくと安心です。

第3号研修の講義時間と筆記試験

第3号研修の基本研修は、講義部分が8時間です。第1号・第2号研修の50時間と比べて大幅に短く設定されているのは、対象者が特定の1人(または少数)に限られており、その人に必要な範囲の知識に絞って学ぶためです。基本研修の修了時には、客観式(四肢択一)の筆記試験が20問以上・試験時間30分で実施されます。

講義時間数の違いを図で確認する

第1号・第2号研修と第3号研修とで、基本研修の講義時間数がどれだけ異なるかを図にしました。

基本研修(講義部分)の時間数の違い 第1号・第2号研修 50時間 第3号研修 8時間

第1号研修・第2号研修の基本研修(講義)は50時間であるのに対し、第3号研修は8時間です。第3号研修は対象者が特定されている分、講義時間が短く設定されています。演習の具体的な時間数は研修機関・自治体ごとに運用が異なるため、この図には含めていません。

なお、基本研修を担当する講師には医師や看護師等の医療専門職があたることが、登録研修機関の要件として定められています。研修機関自体に求められる要件については、後述の「研修の実施機関・申し込み方法」で説明します。

実地研修の内容(喀痰吸引・経管栄養それぞれの手技)

基本研修を修了した後は、実際に対象者に対して手技を行う実地研修に進みます。実地研修では、喀痰吸引3手技と経管栄養3手技、合わせて6つの手技を学びます。

分類手技
喀痰吸引口腔内吸引
喀痰吸引鼻腔内吸引
喀痰吸引気管カニューレ内部吸引
経管栄養胃ろう又は腸ろうによる経管栄養(滴下型)
経管栄養胃ろう又は腸ろうによる経管栄養(半固形タイプ)
経管栄養経鼻経管栄養

実地研修では、この6つの手技それぞれについて、手順・観察点・感染予防の方法を一つずつ確認しながら習得していきます。実地研修も、医師や看護師等の指導のもとで安全性を確認しながら進められます。

喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)の手技

厚生労働省の指導者マニュアルでは、口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部それぞれの喀痰吸引について、実施前の準備・体位の調整・吸引カテーテルの挿入と操作・実施中の観察点・実施後の確認事項が、手順ごとに具体的に定められています。特に気管カニューレ内部の吸引は、誤って気管を損傷しないよう挿入する長さや吸引圧の管理などに注意が必要とされています。

経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養)の手技

経管栄養についても、胃ろう又は腸ろうによる経管栄養(滴下型・半固形タイプ)と、経鼻経管栄養のそれぞれについて、栄養剤の準備、注入前の状態確認、注入中の姿勢や速度の管理、注入後の観察点などが定められています。特に経鼻経管栄養は、チューブの位置がずれていないかなど確認すべき点が多く、より慎重な対応が求められる手技として位置づけられています。

感染予防と共通の観察ポイント

いずれの手技にも共通する重要な要素として、感染予防の徹底があります。厚生労働省のマニュアルでは、手技の前後の石けんと流水による手洗いなど、具体的な手順が定められています。実地研修では、こうした手順を守りながら対象者の状態を観察し、異常があれば速やかに看護職員等へ報告する判断力も身につけていきます。実地研修に必要な実施回数については、公的な一次資料で全国一律の基準を確認できなかったため、詳細は申し込み先の研修機関に確認するとよいでしょう。

受講資格・対象となる介護職員

喀痰吸引等研修を受講できるのは誰か、対象となる施設・事業所も含めて確認します。

対象となるのは「介護職員等」

研修の対象は「介護職員等」です。特別な資格要件が定められているわけではありませんが、実際に喀痰吸引等の業務を行うには、勤務先が対象となる事業所・施設であることが前提になります。介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修を修了した人が、キャリアアップの一環として喀痰吸引等研修を受講するケースも多く見られます。

医療機関に勤務する介護職員等は対象外

青森県の案内によると、医療機関(病院・診療所等)に勤務する介護職員等は、この制度の対象外とされています。医療機関では看護職員等の医療専門職が常駐していることが前提になっているためです。喀痰吸引等研修が想定しているのは、介護保険施設や在宅など、医療職が常駐しない、あるいは常時いるとは限らない現場です。

研修修了後に業務を行える施設・事業所

研修を修了し、後述する認定を受けた介護職員等は、さまざまな施設・事業所で業務を行うことができます。代表的な例としては、次のような施設・事業所が挙げられます。

  • 特別養護老人ホームなどの介護関係施設
  • 障害福祉関係施設
  • 訪問介護等の在宅サービス(利用者の外出先や移動中を含む)
  • 特別支援学校

同じ介護職員等であっても、施設に勤務する場合と訪問系サービスに従事する場合とでは、想定される利用者の医療的ケアの内容や頻度が異なるため、就業先の状況に応じて、どの号の研修を受講しておくと役立つかが変わってきます。

認定証に記載された行為の範囲だけが実施できる

認定特定行為業務従事者認定証には、修了した研修の種類に応じて、実施できる行為の種類が具体的に記載されます。認定証に記載されていない行為は実施できないため、自分がどの行為まで対応できるのかは、認定証の記載内容で確認する必要があります。例えば第2号研修のみを修了した場合、認定証には気管カニューレ内部の喀痰吸引と経鼻経管栄養が含まれない範囲が記載されることになります。

研修の実施機関・申し込み方法

この研修は、誰でもどこでも自由に開講できるわけではなく、一定の要件を満たした機関が実施します。

実施主体は都道府県または登録研修機関

喀痰吸引等研修の実施主体は、都道府県、または都道府県知事の登録を受けた「登録研修機関」です。東京都では、都からの委託を受けて公益財団法人東京都福祉保健財団が研修の実施や登録受付を担っています。研修の実施状況や申し込み方法は都道府県ごとに異なるため、居住地または勤務先がある都道府県の案内を確認する必要があります。北海道など複数の道府県も、対象施設や実施体制について独自の案内ページを公開しており、細かな運用は自治体ごとに異なります。

登録研修機関の要件

登録研修機関として認められるには、医師や看護師等を講師とすること、研修業務を適正かつ確実に実施できる基準に適合していることなど、都道府県が定める要件を満たす必要があります。研修機関ごとにカリキュラムの提供形態(通学、実地研修の受け入れ先の有無等)が異なるため、申し込み前に研修内容をよく確認することが大切です。

申し込みの流れ

一般的には、都道府県または登録研修機関のウェブサイトで研修日程や募集要項を確認し、申込書等の必要書類を提出する流れになります。勤務先の事業所を通じて申し込む場合と、個人で申し込む場合があるため、まずは勤務先に相談してみるとよいでしょう。埼玉県のように、研修の申し込み手続きに加えて、研修機関が遵守すべき実施基準を「実施要綱」として公表している自治体もあります。定員が設けられている研修も多く、希望する時期にすぐ受講できるとは限らないため、早めに募集時期や申し込み締め切りを必ず確認しましょう。

喀痰吸引等研修への申し込みの流れ 研修日程・募集要項の確認、必要書類の提出、定員・締切の確認という3つの手順を示す図。 申し込みの流れ ①研修日程・募集要項を確認 都道府県・登録研修機関のサイトで確認 ②必要書類の提出 勤務先経由または個人で申込書等を提出 ③定員・締切を早めに確認 希望時期にすぐ受講できるとは限らない
都道府県または登録研修機関のサイトで日程・募集要項を確認し、必要書類を提出します。定員のある研修も多いため、早めに締切を確認することが大切です。

受講費用の目安

受講にかかる費用は、研修そのものの受講料と、修了後の手続きにかかる手数料の2つに分けて考える必要があります。

受講料は研修機関・自治体ごとに異なる

喀痰吸引等研修の受講料そのものについて、全国一律の金額水準を示す公的な一次情報は確認できませんでした。受講料は、研修を実施する登録研修機関や自治体ごとに独自に設定されているため、金額には幅があります。受講料に教材費やテキスト代が含まれるかどうかも研修機関によって異なるため、受講を検討する際は、申し込み先の研修機関や都道府県の窓口に直接、最新の受講料と内訳を確認することが必要です。居住地の都道府県や登録研修機関のホームページでも、研修ごとの受講料が案内されていることが多いため、あわせて確認するとよいでしょう。

都道府県が定める手数料の例

受講料とは別に、修了後の認定証交付等にかかる手数料は、都道府県の条例等で金額が定められています。実際に確認できた例を整理すると、次のとおりです。

都道府県手続き内容手数料
鹿児島県認定特定行為業務従事者認定証の新規交付1,500円
鹿児島県認定証の再交付1,000円
大阪府従事者認定証の交付1,400円
大阪府登録特定行為事業者の登録2,300円
大阪府特定行為の追加申請1,200円
大阪府登録研修機関の登録(更新は2,500円)5,000円

これらの手数料は都道府県ごとに条例で定められているため、上記はあくまで一例です。申請先の都道府県の最新の案内で、正確な金額を確認してください。

認定証交付にかかる手数料の例 認定証交付の手数料の例。鹿児島県は1,500円、大阪府は1,400円。 認定証交付にかかる手数料の例 鹿児島県 1,500円 大阪府 1,400円 手数料は都道府県ごとに異なります
認定特定行為業務従事者認定証の交付手数料は、鹿児島県が1,500円、大阪府が1,400円です。手数料は都道府県の条例で定められており、金額は自治体ごとに異なります。

修了後の手続き(認定特定行為業務従事者認定証)

研修を修了しただけでは、まだ喀痰吸引等の業務を行うことはできません。都道府県への申請と認定証の交付を受ける必要があります。

申請書類と申請先

基本研修・実地研修をすべて修了すると、研修機関から修了証明書が交付されます。この修了証明書を添えて、居住地の都道府県知事に「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を申請します。鹿児島県の案内によると、必要書類は次のとおりです。

  • 交付申請書
  • 住民票(県外に居住している場合)
  • 欠格事由に該当しないことの誓約書
  • 研修修了証明書の写し
  • チェック表

交付までの目安期間

千葉県の案内では、申請書類を受領してから認定証が交付されるまでの目安は約1か月とされています。この認定証を受け取って初めて、介護職員等は喀痰吸引等の業務を法律上行えるようになります。認定証には、実施できる行為の種類(喀痰吸引・経管栄養のうちどの行為か)が記載されるため、修了した研修の種類(第1号・第2号・第3号)によって記載内容が異なります。転職や異動により居住地が変わった場合の手続きについても、居住地の都道府県の窓口に確認しておくと安心です。認定証の交付を受けるまでは、研修を修了していても喀痰吸引等の業務にあたることはできないため、就業のスケジュールを組む際は、申請から交付までにかかる期間も見込んでおく必要があります。

認定証交付までの流れと目安期間 研修修了(修了証明書交付)から都道府県への交付申請を経て、約1か月で認定証が交付され業務開始が可能になるまでの流れを示す図。 認定証交付までの目安 ①研修修了 修了証明書が交付される ②都道府県へ交付申請 修了証明書を添えて申請 交付までの目安 約1か月 ③認定証交付 受領後に業務開始が可能
研修修了後、都道府県に交付申請をしてから認定証が交付されるまでの目安は約1か月です。認定証を受け取るまでは業務を行えません。

事業所側に必要な手続き(登録特定行為事業者)

この制度は、受講した個人の手続きだけで完結するものではありません。介護職員等を雇用し、業務として喀痰吸引等を行わせる事業所側にも、都道府県への登録が義務付けられています。

登録特定行為事業者の登録要件

自らの事業として喀痰吸引等の業務を行う事業者は、事業所ごとに都道府県知事へ「登録特定行為事業者」としての登録を受ける必要があります。登録にあたっては、次のような要件を満たすことが求められます。

  • 医師や看護職員等の医療関係者との連携体制が確保されていること
  • 実施記録を適切に整備すること
  • そのほか安全かつ適正に喀痰吸引等を行うための措置が講じられていること

安全確保のための義務

大阪府の案内によると、登録事業者には次のような義務が課されています。

  • 業務方法書の提出
  • 安全委員会の設置
  • 実施状況をまとめた報告書等の提出

事業所単位での安全管理体制を整えることが、個々の介護職員が安心して喀痰吸引等の業務にあたるための前提になっています。登録特定行為事業者としての登録を受けていない事業所では、介護職員等が研修を修了していても、業務として喀痰吸引等を行うことはできません。こうした事業者側の登録手続きや義務は都道府県ごとに細部が異なるため、事業所の管理者や責任者は、所在地の都道府県の窓口に相談しながら準備を進めることになります。なお、これから就業先を探す個人の視点で見ると、転職や就職を検討する際に、勤務先(予定先)が事業者登録を受けているかどうかも確認しておくとよいポイントです。

介護福祉士・実務者研修との関係

この研修制度は、介護福祉士や実務者研修とも密接に関わっています。

介護福祉士の登録証への行為記載

介護福祉士が喀痰吸引等を実施できるようになる経路には、次の2つがあります。

  • 実地研修を修了したうえで公益財団法人社会福祉振興・試験センターに届け出て、介護福祉士登録証に実施可能な行為(口腔内吸引・鼻腔内吸引・気管カニューレ内吸引・胃ろう又は腸ろうによる経管栄養・経鼻経管栄養の5行為のうち実施可能なもの)を記載してもらうケース
  • 平成28年度以降の介護福祉士国家試験合格者、または基本研修ないし医療的ケアの課程を修了している介護福祉士が、就業先の事業所が特定行為に関する事業者としての都道府県登録を受けている場合に、実地研修修了後に喀痰吸引等の行為を実施できるケース(鹿児島県の案内による)

いずれの経路でも、前述の認定特定行為業務従事者認定証の交付は不要とされています。自分がどちらのケースに当てはまるかは、就業先の登録状況や、国家試験合格の時期・修了した課程によって変わるため、勤務先や社会福祉振興・試験センターに確認しておくと安心です。

実務者研修・初任者研修との関係

介護福祉士実務者研修のカリキュラムには「医療的ケア」という科目が含まれており、喀痰吸引等の基礎的な知識を学ぶ機会があります。ただし、実務者研修の医療的ケア科目を修了しただけでは、喀痰吸引等の業務を行うことはできません。実際に業務を行うには、別途、喀痰吸引等研修(第1号・第2号・第3号のいずれか)の基本研修・実地研修を修了し、認定特定行為業務従事者認定証の交付を受けるか、介護福祉士として前述の届出を行う必要があります。介護職員初任者研修や実務者研修を修了した人が、そのままキャリアアップの一環として喀痰吸引等研修に進むケースも多く見られます。

喀痰吸引等研修を受けるメリット・注意点

喀痰吸引等研修を受講することで、介護職員としてどのような変化があるのか、また注意しておきたい点を整理します。

メリット:担える業務の幅が広がる

喀痰吸引等研修を修了し、認定を受けることで、これまで看護職員に任せていた喀痰吸引や経管栄養といったケアの一部を、介護職員自身が行えるようになります。医療的ケアが必要な利用者の受け入れ体制を持つ事業所も多いことから、こうした認定を受けた介護職員は、施設や在宅の現場で担える役割の幅が広がります。医療的ケアが必要な利用者を受け入れられる事業所が増えることは、利用者本人やその家族にとっても、住み慣れた地域での生活を続けやすくなるという意味を持ちます。また、修了した研修の種類や実施可能な行為は、履歴書や職務経歴書に具体的に記載できるため、転職や異動の際に自身のスキルを説明しやすくなる面もあります。

注意点:制度は見直されることがある

喀痰吸引等研修に関する制度や運用は、介護保険制度自体が3年ごとに見直されるのに合わせて、研修カリキュラムや手続きの内容が変更される可能性があります。実際に、厚生労働省は令和7年7月14日付の事務連絡で、通信・遠隔研修の取り扱いについて新たな案内を出すなど、研修の実施方法に関するルールも随時更新されています。受講を検討する際は、必ず最新の情報を都道府県や研修機関の公式案内で確認してください。また、都道府県の報告等をもとに、研修の実施状況が公表されることもあります。制度の運用実態を知りたい場合は、こうした公表資料を確認するとよいでしょう。

まとめ

  • 喀痰吸引等研修は、2012年の法改正で創設された、介護職員等が喀痰吸引・経管栄養等の医療的ケアを行うための公的な研修制度である
  • 研修は不特定多数対象の第1号・第2号研修と、ALS患者等特定の対象者向けの第3号研修に分かれ、実施できる行為の範囲が異なる
  • 基本研修の講義は第1号・第2号研修が50時間、第3号研修が8時間と定められており、修了後は実地研修に進む
  • 研修修了後は都道府県への申請で「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を受け、事業所側も「登録特定行為事業者」としての登録が必要になる
  • 受講料や演習の具体的な時間数など研修機関・自治体ごとに異なる部分も多いため、申し込み前に必ず最新情報を確認することが大切である

このサイトでは、特定の研修機関や事業所を評価・推奨することはせず、公的資料にもとづく中立的な情報提供に努めています。運営方針の詳細はこのサイトについてをご覧ください。制度の内容は介護保険制度の3年ごとの見直しや自治体の運用変更により変わることがあるため、最新の情報は都道府県や研修機関の公式案内でご確認ください。

まずは勤務先に相談し、勤務先が登録特定行為事業者としての登録を受けているかを確認しましょう。そのうえで、居住地の都道府県や登録研修機関の案内ページで、研修日程や受講料を確認しましょう。

よくある質問

喀痰吸引等研修とはどのような研修ですか?

介護職員等が痰の吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)や経管栄養(胃ろう・腸ろう、経鼻経管栄養)を法律上実施できるようにするための公的な研修制度です。2012年の法改正で創設され、修了後に都道府県への申請で認定を受けることで業務を行えるようになります。

介護職員初任者研修や実務者研修を修了していれば、喀痰吸引等研修も受けられますか?

介護職員初任者研修や実務者研修の修了は、喀痰吸引等研修を受講するための必須条件ではありません。ただし実務者研修のカリキュラムには「医療的ケア」という科目があり、喀痰吸引等の基礎知識を学ぶ機会があります。初任者研修・実務者研修を修了した人が、キャリアアップの一環として喀痰吸引等研修を受講するケースも多く見られます。

誰でも受講できますか?

対象は「介護職員等」で、特別な資格要件はありません。ただし医療機関に勤務する介護職員等はこの制度の対象外とされています。実際に業務を行うには、勤務先が対象となる施設・事業所であることも必要です。

受講費用はいくらくらいかかりますか?

受講料そのものの全国一律の金額水準を示す公的な情報は確認できておらず、研修機関や自治体ごとに設定が異なります。別途、認定証交付等にかかる手数料が都道府県の条例で定められており、例えば鹿児島県では新規交付1,500円です。

喀痰吸引等研修は全部でどのくらいの期間・日数がかかりますか?

基本研修の講義は第1号・第2号研修で50時間、第3号研修で8時間と定められていますが、これに加えて演習や実地研修の時間が必要です。演習・実地研修に必要な日数は研修機関や対象者の状況によって異なるため、全体の期間は一律には決まっていません。具体的な日数やスケジュールは、申し込みを検討している都道府県や登録研修機関の案内で確認してください。

介護福祉士であれば別の資格は不要ですか?

介護福祉士は、実地研修修了後に社会福祉振興・試験センターへ届け出ることで登録証に実施可能な行為を記載でき、条件を満たせば認定特定行為業務従事者認定証の交付を受けなくても業務を行える場合があります。また、就業先の事業所の登録状況によっては、これとは別の経路で実施できる場合もあります。詳しくは本文の「介護福祉士の登録証への行為記載」をご覧ください。

参考・出典

  1. 喀痰吸引等研修における通信・遠隔研修の取扱いについて(事務連絡 令和7年7月14日) (厚生労働省社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室)
  2. 第三号研修(特定の者対象)喀痰吸引等指導者マニュアル (厚生労働省)
  3. 喀痰吸引等(たんの吸引等)の制度について (東京都福祉局)
  4. 喀痰吸引等研修(第一号、第二号研修)について (青森県)
  5. [資格登録]「実地研修を修了した喀痰吸引等行為」の届出について (公益財団法人社会福祉振興・試験センター)
  6. 介護職員等による喀痰吸引等の実施のための制度について (北海道保健福祉部福祉局高齢者保健福祉課)
  7. たんの吸引等に関する業務従事者認定証の交付手続きについて (鹿児島県)
  8. 障がい福祉室 喀痰吸引等の制度、申請、研修機関、事業所について (大阪府)
  9. 介護職員等の喀痰吸引等の実施に伴う認定特定行為業務従事者認定証の発行について (千葉県)
  10. 介護職員等によるたんの吸引等の実施について (東京都福祉局)
  11. 介護職員等によるたんの吸引等のための研修・登録受付等事業 (公益財団法人東京都福祉保健財団)
  12. 喀痰吸引等制度について (厚生労働省)
  13. 喀痰吸引等研修実施要綱について (埼玉県)